AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
(AIJ構造設計小委・応援隊NEWS改称) 第3号 2000.6.20.

建築基準法施行令一部改正案についての建設省意見募集の結果
 建設省のホームページ(http://www.moc.go.jp/build/s2002/index-kaitou.htm)に、最初の意見募集の結果の報告(4/25付け)として、寄せられた意見の要旨と建設省の考え方の一覧がありました。意見提出者の件数は163件とあり提出者名は伏せられたままです。せっかく意見を提出したのに受取証はもらえなかった、という変な気分に陥っています。
 すべて別の方の意見だったかも知れませんが、faxした箇条書きの20項目以上の中から採用された(のかも知れない)意見項目は、わずかに次の4件でした。
(1)もっと十分な検討期間をもって、かつ、具体的な告示案を提示したうえで行うべきである。
(2)「実験による確認」を存続するべきである。 (3)「力」は「応力」とすべきである。
(4)計算方法を施行令で規定する必要はない。
 建設省の考え方は、たとえば(2)に対して「実験による確認は、結果の判断やその手法の妥当性等について高度な判断を必要とされることから、一般基準からは削除することとしました。」ということです。風洞実験だけは例外的に高度な判断を必要としないらしいです。また、(4)に対して「構造計算の方法については法律において政令で定めることとされています。」ということです。しかし、法律には「こと細かく」政令に定めるとは書いていないのです。
 旧法では、政令に定めるとは書いてませんでしたが、かなり細かく政令に定めていました。その代わり、第38条が、法制と技術との乖離をある程度は調整できる手段・安全弁の役割を担っていました。この条項は言わば暗黙に、法令に不備があることの可能性を認めるものでした。今回の改定のスタートになった建築審議会の答申から具体的な法制化に到るまでのすべての当事者が、旧法第38条の謙虚さを見習うべきでした。
 寄せられた意見の要旨のすべてに建設省の考え方が併記されています。初めはこれを当然と思いましたが、実はこれは見過ごしてはならないきわめてアンフェアなことと気付きました。建設省が答えやすい意見項目のみの一覧、すなわち、提出意見の「つまみ食い」なのです。公募した意見に対する公正で良識ある処置とは決して申せません。さらに文句を付けるなら、この建設省の考え方の発言の責任は一体どなたが持つのでしょう、オールマイティの建設大臣でしょうか。
 「意見の要旨と建設省の考え方」の一覧の中には次のような少し気になる項目もありました。
(意見)制振構造、膜構造、シェル(無柱空間)構造等の構造計算を位置付けるべきである。
(回答)当分の間、制振構造については時刻歴応答解析により建設大臣の認定で対応することとし
ています。膜構造、シェル構造については適用範囲を明確にした上で構造計算規定を位置
付ける方向で検討中です。
 これは建設省による「やらせ」の類ではないでしょうか。その疑いを晴らすには寄せられた意見のすべてを、公正・透明に処置するしかないのです。答えられない項目は無理に答えなくてよいのです。無理を通せば道理引っ込むでしょう。
 むしろ、建設省が答えにくい意見項目にこそ、今後の行政の最重要の課題が埋め込まれている、と悟るべきです。それを真摯に掘り起こして公開することこそが望ましい行政のあり方です。その役目にある者が無意識にあるいは意図的にサボっているのであればそれは職務怠慢に当たります。
 行政が職務怠慢・無知・無能・無反省であればそれを厳しく指摘し指導すべきです。先ず第一にその役割を果たすべきは、社会から専門的裁量権限を託されているその専門職能集団です。本来の責任を果たせない専門職能集団は、その専門的裁量権限を返上するしかありません。それで社会が幸せになれるのなら、敢えてこのような異論をここに述べ立てる必要もありませんが。皆様の周りの提出意見は、いかが「適宜集約」されてしまいましたか。
 ついでに「うわさ話+うさばらし」です。建築基準法施行令・告示の官報が売り切れ、情報入手が不能に。あわてて建設省ホームページからのダウンロード作戦。どっこい、きれいさっぱり消えていた。クラッカー(ハッカーとは言うべきでないそうです)の仕業か。それとも内部の反乱か。まさか蜃気楼では…。森喜朗内閣総理大臣がIT支援を言い出した途端にこの有り様。サミットの目玉のIT支援、足元がこんなで本当に大丈夫なのか。
 このIT(Information Technology)、I(いつでも)T(都合よく消せる)の短縮形ではないはずです。建設省のホームページに施行令・告示の正式な制定版が掲載されたことは確認していませんが、常時どこかに掲載されているのが当然と思います。確かに今はどこにも見付かりません。


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