AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
                             第8号 2000.12.15.

日本建築センターの評定委員2人書類送検(毎日新聞2000.12.8朝刊より)
        テーマパーク遊具落下事故「設計、審査にも過失」福岡県警担当者ら書類送検
 北九州市のテーマパークで1998.8に、垂直落下型遊具のワイヤが切れ、乗客12人が重軽傷を負った事故で、運営会社の当時の保守管理責任者2人、米国遊具メーカーの設計責任者、安全性を審査した日本建築センター評定委員2人の計5人を業務上過失傷害の疑いで書類送検し、「設計」「審査」「保守管理」の複合過失による事故と認定した。保守管理責任者と評定委員との計4人は容疑を認め、設計責任者は「安全確保のため理論的解析や実験をした」と過失を否定している。
 検察の判断はこれからの段階で予断は禁物ですが、設計責任者は過失を否定し評定委員は容疑を認めた状況はどういうことでしょうか。人身事故という重大な結果を受け止めてでしょうが、評定委員が認めたという容疑の内容を、詳細に客観的に知りたいものです。評定委員個人の刑事責任が問われる過失とはどんな場合にあるのか、容易には思い付くことができません。
 これまでの基準法38条関連の「審査」に評定委員の過失責任(の可能性の存在)が想定されていたでしょうか。それに見合うだけの対価報酬(その中から賠償責任保険の掛け金を支払える)が支払われていたでしょうか。6月からの改定建築基準法では、評定委員の責任も明確に規定されて評定委員個人の責任が問われる場合もあり得る、と聞いたことがあります。ただし、それに見合う対価報酬が支払われるようになった、とは残念ながら聞いておりません。専門職能の責任分担にも深く関わるこの問題を、皆様はいかがお考えになりますか。

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(編集後記):
 技術に限らずすべての質の向上には、個人の責任がもっと前面に出る必要があると考えますが、よい場面では報われることもなく悪い場面でのみ矢面に立つという構図の個人責任では、はなから願い下げです。それとも、エンジニアの宿命として甘んじて受け入れるべきことでしょうか。
 本号が今年最後のNEWSになります。年明け1月には建設省・運輸省・国土庁・北海道開発庁の国土交通省への大統合があり、公共事業のおよそ9割を持つ化け物のような巨大官庁の誕生です。その期待が大きいだけに、失敗するとしっぺ返しも手痛いものがあろうと言われています。先頃、担当大臣・副大臣の予定者も決まりましたが、我が国の政治指導層が果たしてその全体像を確実に掴んでいるのかどうか、心もとないところに先行き不安を感じる向きも少なくないようです。
 来るべき21世紀の初年が、いまに充満する閉塞感を打ち破って明るい未来の展望を切り開くための初年になるよう祈念しつつ、皆様から、若々しい感覚の情報・ご意見・ご寄稿をいただけるよう心よりお待ち申し上げております。    皆様どうぞよいお年をお迎え下さい。

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