AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
 第12号 2001.6.6.

構造設計小委・第8回会合6/1開催(2001年度第2回会合)
(3)本紙NEWSの第11号を配布し、多田英之先生裁判情報の続報部分を報告しました。関連して、
 神田順・小堀鐸二・西川孝夫:建築基準法「性能規定化」の現状に関する問題点と提言−有識者によるアンケート結果を踏まえて− 鉄構技術(STRUTEC) 2001・3 pp.56-62
のコピーが真柄栄毅幹事より小委資料として配布されました。その章立ては次の通りです。
 1 性能規定化の動き 2 有識者へのアンケート実施の経緯と設問および賛否 3 アンケート結果の要約 4 アンケート結果に基づく提言 5 浮き彫りになった問題点の幅広い討議を期待
 うち2章〜4章は建設省に「要望」としてすでに提出した、とあります。
 この論説を多田先生ならどうおっしゃるか、伺ってみたいという話になりました。技術者の限界は越えられない論説でも裁判には有用な資料になる、と判断されているようだ、と答えました。
 以下はいつもの通りの無責任コメントです。先ずは、いつの時点・どのような方式でアンケートが行われたのか。回答者数やその内訳が示されなかったことも、肩透かしのようで残念でした。
 1章の記述では、性能規定型設計は設計者をはじめ一般からの期待も大きかった、とあります。要求性能・目標性能を明確化できる、設計法・計算法・構造方法は自由に選択できる、という展望があった、と図・表まで引用しています。そんな展望は、どこにも誰にも一切なく、あったものは専門家の持つ願望ないし幻想だったのではないでしょうか。専門家が皆で騙され黙っていれば何も怖くない、では社会が救われません。いま厳格な批判的検討が求められる専門裁量です。
 アンケート内容では、「実験による確認の削除」の批判が含まれていない、のも特に残念です。多田先生の裁判の争点になることを別にしても、実験検証があって計算法が確立する、という筋道を外してはならないのです。建築基準法第20条に「政令に定める」云々が加わったことは、その政令に「専門職能に関する責任ある学協会の定める基準・指針類の規定に準拠する」とでも書けば、後は民間の学協会が大いに競争してよりよいものを目指せたものを、といまも思います。
 3章のアンケート結果の要約にある業界に対する性悪説は、行政府に対しては誰も感じないものでしょうか。ISOがらみでは民間至上原理主義に戸惑いつつ従いながら、建築規制では民間性悪説に完全に平伏す。こうした矛盾した態度を取り続けて行けばストレスが溜まり、何かとんでもないことが起こりそうです。それとも、日本人の諦観・先延ばしの知恵で何とかなるでしょうか。
 川口衞先生から、耐震工学研究会http://www.eenix.gr.jp/の多田先生講演会の紹介があり、都合をつけ参加したい、とのことでした。インターネットで調べ、6/20(水)14:00-17:00中野の構造計画研究所・多田英之先生「設計の諸問題について」でした。参加申込が必要ですので上記ホームページでご確認ください。なお、7/17(火)・斎藤公男先生講演会の予定もありました。

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