AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
 第15号 2001.9.24.

「建築基準法の改正を斬る!」シンポジウム(耐震工学研究会)9/7開催

耐震工学研究会の特別シンポジウム「建築基準法の改正を斬る!」が、9月7日(金)午後、建築会館・大ホールで開催されました。申込定員300名に対してどのくらい集まるだろうかと心配しましたが、ほぼ満員に近く盛況でした。次の展開に期待できる、とフロアもパネリストも勇気付けられました。
資料の冊子にはパネリスト各先生がご執筆の46ページの論説の他に、耐震工学研究会の入会案内・建築基準法令改正の採点アンケートが含まれています。別に「建築基準法施行令一部改正」についての要望(aij 2000/3/14)・建築基準法関連省令・告示の制定・改正に関する意見(免震構造物)(aij 2000/6/23)の30ページ仮綴じ資料も配布されました。本紙NEWS第3号のぼやきも真実に見えてしまいます。専門職能団体としての自覚と責任感とが欠落した「権力への擦り寄り」も見えています。法改定から2年間「ひたすら待つ」ことしかできなくなっていた、ことを思えば当たり前でしょうか。
多田英之先生は建築法制の歴史を整理して、武藤清・坪井善勝・仲威雄の諸先生が法による技術規制の危険性をどれほど深く認識されていたか、とエピソードも話されました。今回の建築基準法改定の不当性を訴える裁判の計画も簡単ながら具体的に触れられました。秋山宏先生はエネルギーの釣合という総合認識の観点から限界耐力設計法を批判され、法に品格がない(イコール下品?カナ)、設計家には判断力・決断力・人格が必要である、と話されました。神田順先生は荷重規定のあり方を論じて、改正内容には社会的合意が足りない・一貫性がないと指摘されましたが、その主原因が法による技術規制そのものにある、という認識とは違うようでした。川口衞先生は法に最低限の社会規制・最小限の技術阻害のあることを許容した上で新しい構造システムの獲得が可能かという観点から、代々木競技場・Expo'70お祭り広場屋根・富士グループ館の3例を取り上げ話されました。自由な発想・ホリスティックな認識(用強美)・自然への畏敬と責任感・手法の限界認識と柔軟活用・自律的思想と権威権力からの不依存、を設計家に必須の資質であると結論されました。渡辺邦夫先生は集団規定部分に法規制の必要を認めた上で単体規定部分は科学技術の合理性に則った設計家の専門裁量に任せればよいと主張され、30年以上前に出会われた施主の二人を語られました。構造技術家に専門家として求められることは、法とはまったく無関係に耐震メニューの整備である、と学んだと話されました。
小休憩後のPDでは、渡辺先生から神田先生への質問「荷重は法規制が必要だと本当に思うのか」をきっかけにパネリスト同士の活発なディスカッションが始まりました。パネリストからフロアから次々に真剣な発言が続き、どの発言も構造設計の現状を深く憂慮するものでした。話題は設計保険やプルーフエンジニアの制度にも及び、それらにもさまざまな問題点のあることが指摘されました。
懇親会は何ら儀式めいたものなく自由に気軽に語り合う場でした。毎月の研究会を重ね19回、今回を含めて2回の特別シンポジウム、を毎回真面目に開催してきたコツの一つかも知れません。年会費2000円は意欲ある構造設計家の関心をそそるに十分でした。 URL http://www.eenix.gr.jp/
建築基準法に対する採点アンケートは、Q1.今回の建築基準法令の一連の改正や告示の制定などについて、100点満点での採点は?・Q2.その根拠・判断基準、あるいは問題点は?・Q3.今後の建築基準法を改正する際の要望は?というもの、FAXによる回答を求めています。 FAX 092-864-3655

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