AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
第21号 2002.5.18


多田英之先生 建築基準法の行政訴訟を断念か? 次の一手はある?
建築基準法改定の不当性を粘り強く訴え続けて来られた多田英之先生は、司法の場でも問題提起するべく、ほぼ1年前からは行政訴訟に通じた3人目の弁護士を依頼して本格的に裁判の準備を進めておられました。本NEWS紙上でも第10号(2001.4.26.)を皮切りに随時お伝えして来た通りです。
訴状作成では、多田先生と弁護士との裁判への考え方のギャップを埋める努力が何度も繰り返され訴訟方針の変更も行われたと伺っています。昨年2001年12月末の情報では、本年2002年1月15日に東京地裁に訴状提出を予定、裁判開始は3月から4月頃を予想とのことでした。訴状が受理されれば直ちに本NEWSの一大記事として取り上げたいと思っていました。その後、3月19日の情報では、担当の弁護士が同僚弁護士・九大教授らと協同して、4月には訴状提出を予定とのことでした。
期待と不安とを織り交ぜて続報を待たれていた皆様は、本NEWS前号・第20号(2002.5.1.)掲載の「建築基準法の改正を斬る!」シンポジウム(4月11日開催)の報告記事の中に、裁判に関する情報がないことに少なからず不安といらだちとを覚えられたかも知れません。シンポジウム参加者の中にも裁判の行方に注目する方がおられ、代表して周辺取材も試みました。しかし、弁護士の協同者との意見調整が入念なら結果的には訴状作成が若干遅れることもあろう、と全く楽観していました。
シンポジウムからほぼ1ヶ月経ち、5月8日の情報では、4月22日に多田先生に訴状最終版が届き、24日に弁護士と会談、その途中で弁護士が激怒して退席、仲介者を通じて、直ちに弁護士を解任することになった、とのことです。今回の訴訟を担える弁護士にはなかなか巡り会えない。法律家は法律の枠内でしか考えることができない。多田先生の悲しみは孤独で深いものがあります。
建築基準法の行政訴訟の準備を結局は断念するという今回の重い決断に、誰も異議を唱えられないでしょう。できるとすればこの行政訴訟を新たに引き継ぐ方だけです。裁判引継ぎに強い意思を持つ専門職能団体・組織・個人が数多く名乗り出て連帯するなら、きっと多田先生から力強い激励と協力とが得られると思います。そこまでの強い意思を結集できない建築専門職能であれば、この裁判から潔く身を引くしかないのでしょう。名誉も誇りも失って専門職能はいつ自立できるでしょうか。
行政と司法とに裏切られても、多田先生は決して諦めていません。立法府(国土交通部会)にかすかな望みをつないでいます。「旧第38条の復活」・「実験による性能の検証の復活」などを含む陳情書を提出することから始めます。これが政治家本来の魂と良心とを揺さぶるよう祈ります。建築基準法を廃止して建築「基本」法の制定へと転換させるためにも立法府への積極的な働きかけが重要でした。

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