AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
 第25号 2002.8.11.

「建築基準法の性能規定化に対する批判的見解の要点」(とその反論)
=国土交通省作成文書をそのまま紹介します(2002.7.26.入手)=
5月8日の衆議院・国土交通委員会では建築基準法第38条廃止に関する国会質疑が行われました。その批判的見解の要点と反論とを国土交通省が文書にまとめました。
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(国土交通省作成文書) 建築基準法の性能規定化に対する批判的見解の要点
1. 性能規定化により旧法第38条(特殊な材料・構法の認定)が廃止されたため、 (1)材料、構造を総合的に評価し、 (2)解析だけでなく実験も評価し、 (3)専門家の総合的判断により、 新技術 を認めることができない。
⇒ 国民から見て透明性を高める必要があるため、基準の明確化は必要(総合的判断は不明確)。 実験の評価は可能。
2. 新材料を認定するルートと、建築物全体をコンピューターを使って高度な構造解析を行う認定ルートは存在するが、その中間の部材・工法レベルの認定ルートが存在しない。
⇒ 基準を材料と建築物の構造計算とに分ける考え方は合理的。ただし、部材・工法レベルの認定に ついても、今後、申請者の希望に応じて建築確認の際に審査を省略するための認定制度の整備を 予定。
3. 性能規定化により基準が厳格化したため、これに適合しない新技術が排除されている。
⇒ 高度な構造解析の認定は、どのような新技術でも適用可能。一般化した技術は、今後とも、告示等により整備・充実を図る。
4. 計算方法については、設計者の裁量に委ねるべきである。さらに、設計者が責任を持つ場合には、基準の適用を除外すべきである。
⇒ 設計者の裁量に委ねるのでは、国民から見て透明性が確保されない。
5. 新技術を次々と一般基準化(政令・告示)することは、技術開発への意欲を減退させる。
⇒ 知的所有権の保護は特許制度等によって別途対応すべき問題。
6. 性能規定化のスケジュールは性急であり、もっと時間をかけ、研究者・実務者の意見を聞くべきである。
⇒ 規制緩和に対する内外の強い要請等を踏まえ、できる限り早期に基準の見直しを進めたもの。 各界の意見を聞きながら性能規定の検討を進める委員会を設置したところであり、今後は、この 委員会の活用等により基準の整備・充実に取り組む。
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上記の建築基準性能規定検討委員会(委員長 岡田恒男)の事務局は建築指導課ですから、情報開示の対象になるでしょうか。メンバー構成・活動状況など何か情報をご存じの方はぜひご提供下さい。
建築センターに置かれた鉄骨造小委員会・膜構造部会は、昨年10月から日替わり作業を繰り返し、旧38条認定の期限切れ後の7月23日、ようやく一部の告示に漕ぎ着けたとのことです。
秋山宏先生のエネルギー釣合法による耐震設計の告示化に向けて、aij構造委員会に関連の資料が披露されたとのことです。その資料の中に、何故か建築基準性能規定検討委の名前はありません。

陳情書(2002.7.1.案)に対するアンケート結果
本紙NEWS前号の帯封裏のアンケートはちょっと吃驚されたかも知れません。驚かせついでに、「ご返事のない方は賛同者に登録」と書けばよかったかも知れません。結果を簡単にご報告します。
NK(署名:中立 コアメンバー:ほぼNO) 被害者意識を捨て大局的立場からの提案でありたい。免震だけが技術ではないので「一例を上げれば・・・」以降は不要。設計の目指すところが法律の改正で変わるわけではない。むしろ今までの実験中心の設計手法に大きな危険性を感じている。実験さえすれば何でもOKで世に送り出された技術がどれほど危険であるか。現在の法律はあまりにも「研究=法律」の感が強い。国会で審議すれば期待する成果が得られる訳ではなく、行政で決められるべきことでもない。工学技術を中心に物事を考えるのは危険であり、社会科学的な発想が必要でないか。
MH(署名:YES コアメンバー:YES) 建築基準法のコンテンツは、「建築の設計責任のあり方」--社会的・自立的設計者が存在し得ること--を目指す。産・官・学の責任のあり方などの立体的な切り口を研究したい。将来の日本の建築を創るあり方に生かしていきたい。
TT(署名:YES コアメンバー:YES) 建築基準法の再改定に当たっては、建築士法との関わりなど建築に関わる諸法律などの総合的な法体系を研究し、新・建築基本法制定を目指した勉強会や研究会にも法律家として参画したい。
TY(署名:YES コアメンバー:条件付きYES) 新基準を学生に教えることはとても無理と感じる。設計のレベルは設計者が選択すればよいと思う。地方在住だが何か役に立てることがあれば。
KJ(署名:YES コアメンバー:YES) 資格・確認申請の制度の変革なしに根本は変わらない。参議院国土環境委で参考人陳述。施行令パブリックコメントを建築学会より提出。学会PDでは荷重規定の問題点を指摘。
SM(署名:YES コアメンバー:条件付きYES) 陳情の内容は、建築出身の国会議員でないと理解できないのではないか。建築出身の議員への根固めが前提になる。時間の許す範囲で参加したい。


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