AIJシェル空間構造設計技術レビュー連絡会NEWS
 第27号 2002.10.10.

構造設計小委・第16回会合10/3
国土交通省住宅局の「見直し」文書について意見交換しました。住宅局建築指導課と詰めていた事柄が急にストップしたのは「見直し」のせい、と発言がありました。日本建築構造技術者協会(JSCA)の指導者層へのE-Mail作戦と、渡海紀三朗議員から伺った見解を紹介しました。住宅局の「見直し」は本気である、しかし、日本の国情から見て、設計裁量を認めさせるのはまだまだハードルが高い。
渡海議員には文部科学でなく国土交通副大臣になっていただきたかった、との発言もありました。渡海文部科学副大臣には、省庁間の枠を越えて大局観に立ったご活躍を祈念します。
アランバーデン先生から発言がありました。日本に来て、法令・告示に細かい技術規定があるのには驚いた。国際的には、学・協会に委せられるべきことと思う。JSCAはもっと積極的になってほしい。

E-Mail作戦「JSCAの皆様に訴えます」の実施9/20
日本建築構造技術者協会(JSCA)の指導的な正会員180名超(正会員数の約5%)に対しE-Mail作戦を実施しました。発信人には、真柄栄毅氏・山田利行氏と法律家の竹川忠芳氏に加わっていただきました。既報の国会質疑会議録・陳情書試案・国土交通省反論文書の他に下記の国土交通省見直し文書を加え4文書の客観的情報をお届けしました。これでJSCAに何の動きもないでは、前身・構造家懇談会が掲げた精神を後継JSCAは受け継がず、組織が大きいだけの張子の虎に化したと考えるしかありますまい。ごく最近にJSCA会史(1995.1.)を再読しその思いが一層強くなりました。

建築基準法の性能規定の見直しについて(案) 国土交通省住宅局
国土交通省作成の文書が9月12日に斉藤鉄夫議員に届けられ、直ぐに、FAX.(9/12 19:02)してくださいました。本NEWS・25掲載の国土交通省の「反論」文書と比較してお読みください。

=== 建築基準法の性能規定の見直しについて(案) 平成14年9月 ・ 国土交通省住宅局
1. 現在指摘されている事項
(1)「38条認定が廃止され、自由な技術開発が認められなくなった。」
(2)「告示等で基準が詳細化され、あらかじめ定められた方法しか認められなくなった。」
(3)「材料と構造の評価が分けられ、実験も認められなくなった。」
(4)「材料レベルの認定ルートと、建築物レベルの認定ルートはあるが、その中間の部材・工法レベルの認定ルートがなくなった。」
(5)「基準見直しにはもっと時間をかけ、研究者・実務者の意見を聞くべきである。」
2. 見直しの方針
(1) 技術的基準の見直しの方針
民間の提案を踏まえ、旧38条認定で可能であった新技術の実現はもちろん、技術開発を一層促進するため、現行の技術的基準の総点検を実施。
検討成果が得られたものから、順次、政令、告示等の基準見直しを行う。
(見直しの視点)
⇒ 現行の告示等に定められた方法以外の新技術の評価
⇒ 材料と構造の一体的な評価、実験の一層の活用
⇒ 部材・工法レベルの認定ルートの整備
(2) 技術的基準の見直しのための体制の構築
民間(学会、技術者団体、事業者団体等)の提案を基準見直しに反映させるための推進体制の構築。
⇒ 民間の提案に対する一元的なコンタクト・ポイントの設置
⇒ 民間の提案を基準見直しに反映させるための検討組織を国土交通省に設置
⇒ 各民間団体と国土交通省との継続的な意見交換の場を設置
=== 建築基準法の技術的基準の見直しの方針について (この文書は書式変更して部分載録)
【性能規定化前(防火規定の例)】(法律)仕様規定 - (政令告示)規定細目 / 旧法第38条 (省略)
【性能規定化後(防火規定の例)】(法律)性能規定 - (政令告示)技術的基準 (省略)
【構造規定の現状と見直しの方針】
(高度な方法) 時刻歴応答解析 → 材料・構造を一体的に評価 実験を一層活用
(一般化した方法) 限界耐力計算 → エネルギー法等、他の方法も基準化
(部材・工法レベルの性能基準) なし → 部材・工法レベルの認定ルートを整備
(部材・工法レベルの仕様基準) 木造の基準 鉄骨造の基準 等 → さらに充実

行政当局が「見直し」を明言したことは一歩前進と評価すべきでしょう。しかし、本NEWS・25掲載の「反論」文書を一部でも撤回したか否か、も判然としません。こんな心配は「羹に懲りて膾を吹く」の類、と笑い話になるとよいのですが。お送りくださった斉藤鉄夫議員には厚く感謝申し上げます。超党派の渡海紀三朗議員とともに、建築のあるべき姿に向けて一層のお力添えをいただけますよう心よりお願い申し上げます。


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