欠陥住宅、救済の幅拡大 最高裁が「安全性」で新判断

2007年07月06日22時21分

 建物に欠陥が見つかった場合、どの程度なら設計者や施工者を相手に損害賠償を請求できるかが焦点になった訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は6日、「建物としての基本的な安全性を損なう欠陥で生じた損害」があれば請求できるとする初めての判断を示した。「建物の基礎や構造に欠陥があるような違法性が強い場合の損害」と限定していた控訴審判決より基準を広げ、違法性が強くなくても民法上の不法行為責任を問えることを明言した。

 欠陥住宅をめぐっては、施工者や販売者と契約関係があれば、民法に規定された「瑕疵(かし)担保責任」を問える。第二小法廷は、こうした契約関係がなくても、施主から買った人や居住者に限らず、隣に住む人、近くを通った人たちでも欠陥住宅によって身体や財産が侵害された場合は、設計者や施工者に不法行為責任に基づく損害賠償を求められることも明示。被害に対する救済の幅を広げる内容だ。

 訴訟は、大分市内に建築中のマンションと店舗兼自宅を施主から買い受けた親子が、96年にマンションの設計会社と建築会社を相手に起こした。

 原告側はひび割れや排水管の亀裂、バルコニーの手すりのぐらつきなどを列挙して不法行為が成立すると主張。しかし、二審・福岡高裁判決は「成立するのは、建物の基礎や構造にかかわる欠陥があり社会公共的にみて許容できないほど危険な『強度の違法性』がある場合などに限られる」として請求を退けた。

 これに対し、第二小法廷は、設計者や施工者、工事監理者について「建築に当たって基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務を負う」と指摘。バルコニーの手すりの欠陥でも転落する危険があり得るという例を挙げ、「基礎や構造にかかわる欠陥に限って責任が認められると解すべき理由はない」と二審の判断を改めた。

 そのうえで、原告の請求をすべて棄却した二審判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。

 最高裁判決は、中古住宅の流通にも影響を及ぼしそうだ。中古の販売業者が瑕疵担保責任を負う期間は2年で、転売の数年後に欠陥が見つかっても販売業者が補償に応じない例が少なくない。国土交通省住宅生産課の担当者は「判決が定着すれば、中古を買う消費者の権利が保護され流通の拡大につながる」と話す。

 

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