国立マンション紛争訴訟事件判決

東京地方裁判所民事第2部  平成13年12月4日判決言渡し 裁判官 市村陽典(裁判長),森英明,馬渡香津子

平成13年(行ウ)第120号 建築物除却命令等請求事件

原告 学校法人桐朋学園ほか51名

被告 東京都多摩西部建築指導事務所長ほか1名

 

第1 主文

 

 1 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らの訴えに基づき,被告東京都多摩西部建築指導事務所長との間で,同被告が,別紙土地目録記載の土地上に建築中の別紙建築物目録記載の建築物について,建築基準法68条の2,国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例7条に違反する部分を是正するために,建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることを確認する。

 

 2 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らのその余の請求に係る訴え並びに別紙当事者目録第2,第3,第4の2及び第5記載の原告らの訴えをいずれも却下する。

 

 3 訴訟費用のうち,別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らと被告東京都多摩西部建築指導事務所長との間に生じた費用のうち2分の1を被告東京都多摩西部建築指導事務所長の負担とし,その余を同原告らの負担とし,別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らと被告東京都建築主事との間に生じた費用は同原告らの負担とし,別紙当事者目録第2,第3,第4の2及び第5記載の原告らと被告らとの間に生じた費用は,同原告らの負担とする。

 

 ※注 別紙当事者目録第1の原告とは,原告学校法人桐朋学園

    同目録第4の1記載の原告らとは,原告太田和夫,同山田悦夫,同杉山志津

 

第2 原告の求めた裁判(請求の趣旨)

 

 1 被告東京都多摩西部建築指尊事務所長が,明和地所株式会社,三井建設株式会社及び村本建設株式会社に対して別紙土地目録記載の土地(以下「本件土地」という。)上に建築中の別紙建築物目録記載の建築物(以下「本件建物」という。)について,次の命令を発しないことが違法であることを確認する。

 

 (1)本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分の建築を禁止する。

 

 (2)本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分を除却せよ。

 

 2 被告東京都多摩西部建築指導事務所長は,明和地所株式会社,三井建設株式会社及び村本建設株式会社に対して本件土地上に建築中の本件建物について,次の命令をせよ。

 

 (1)本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分の建築を禁止する。

 

 (2)本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分を除却せよ。

 

 3 被告東京都建築主事は本件建物についての検査済証を交付してはならない(以下という。)。

 

 ※以下においては,請求の趣旨1の請求を「本件不作為違法確認請求」,同2の請求を「本件義務付け請求」,同3の請求を「本件予防的不作為請求」という。

 

第3 事案の概要及び争点

 

  本件は,主に国立市の大学通りの周辺住民らで構成された原告らが,明和地所株式会社が国立市内の本件土地上に建設中の本件建物(高さ43.65メートル)が,建築物の高さを地盤面から20メートルに制限した建築基準法68条の2に基づく「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」(以下「本件建築条例」という。)に違反した違法建築物であるとして,これにより日照,景観等について被害を受けると主張し,被告東京都多摩西部建築指導事務所長に対し,本件建物の違法部分について,・被告東京都多摩西部建築指導事務所長との間で,同被告が建築基準法9条1項に基づく建築禁止命令及び除却命令を発しないという不作為が違法であることの確認(本件不作為違法確認請求),・同被告に対し,これらの各命令の発令(本件義務付け請求),・被告東京都建築主事に対し,本件建物について検査済証を交付してはならないという不作為(本件予防的不作為請求)を求めた,いわゆる無名抗告訴訟である。

 

  本件の争点は,これらの訴えが無名抗告訴訟として許容される場合に当たるか否かであるが,被告らは,原告らが適法であるとする本件建物は,前記条例の高さ制限に関する改正規定が施行された際,本件建物の根切り工事(構造物の基礎あるいは地下部分を構築するために行う地盤の掘削の工事)が行われていたから,建築基準法3条2項の規定により,本件建物には上記改正規定の適用はなく,違法な建築物ではないと主張している。

 

第4 裁判所の主要な判断事項

 

1 無名抗告訴訟の許容性

 

 ・行政庁が当該行政権を行使すべきこと又はすべきでないことが一義的に明色であること(一義的明白性),・事前救済の緊急の必要性があること(緊急性),・他の適切な救済手段がないこと(補充性)の各要件が満たされる場合には,いわゆる無名抗告訴訟であっても,適法である。

 

2 本件建物の違法性の有無

 

 建築基準法3条2項が適用を受ける前提である「条例の規定の施行の際,現に建築の工事中」であるといい得るためには,敷地において,計画された建築物の基礎又はこれを支える杭等の人工の構造物を設置する工事が開始され,外部から認識できる程度に継続して実施されていることを要すると解すべきであり,根切り工事に着手し,これが継続しているというだけでは,これに当たらない。

 

 本件建物については,平成12年1月5日,本件土地に対する根切り工事が開始され,同月26日,山留H鋼の打設(周囲の土圧により,根切り工事による掘削杭が内側に膨張することを防止するために,山留め壁を補強する支柱を設置する工程)が開始されたこと,同年2月1日の時点(前記本件建築条例改正の施行時)では,根切工事の約16%が終了した段階であり,山留工事については約10%が終了した段階であったこと,同日時点では,基礎工事,杭工事はなされていなかったことがそれぞれ認められる。

 

 したがって,本件建物は,建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中の建築物」に該当しないといわざるを得ず,本件建物に対しては,前記改正後の本件建築条例が適用されるというべきであるから,本件建物のうち地盤面からの高さ20メートルを超える部分は,本件建築条例,建築基準法68条の2に違反する違法建築物であるというほかない。

 

3 法律上保護された利益

 

(1)建築基準法は,建築物の高さ規制によって,建築物周辺住民の個別的利益として日照を保護している。

 

(2)また,本件建築条例は,単に,一般抽象的な意味における景観の維持・保全を図ろうとしたものではなく,歴史的に既に存在している大学通という特定の景観(高さ20メートルの美しい並木通りの景観)を維持・保全するという具体的な目的を実現するために,強制力のない景観条例によっては実効的に景観を維持するという行政目的を達成できないことから,是正命令という行政目的を実現する規定のある建築基準法に基づく規制として,建築物の高さを具体的に制限したものである。したがって,本件高さ規制によって,国立市民が享受することができるようになった景観の利益は,抽象的,主観的,一般的なものではなく,並木通りの高さである20メートルを超えない高さの建築物で構成される景観という,客観的な基準によって,その美しさの維持が法的に図られた大学通りという特定の景観を享受する具体的,客観的利益であるということができる。

 本件地区のうち高さ制限地区の地権者は,法令等の定め記載のとおり,本件建築条例及び本件地区計画により,それぞれの区分地区ごとに10メートル又は20メートル以上の建築物を建てることができなくなるという規制を受けているところ,これら本件高さ制限地区の地権者は,大学通りの景観を構成する空間の利用者であり,このような景観に関して,上記の高さ規制を守り,自らの財産権制限を受忍することによって,前記のような大学通りの具体的な景観に対する利益を享受するという互換的利害関係を有していること,一人でも規制に反する者がいると,景観は客易に破壊されてしまうために,規制を受ける者が景観を維持する意欲を失い,景観破壊が促進される結果を生じ易く,規制を受ける者の景観に射する利益を十分に保護しなければ,景観の維持という公益目的の達成自体が困難になるというべきであることなどを考慮すると,本件建築条例及び建築基準法68条の2は,大学通りという特定の景観の維持を図るという公益目的を実現するとともに,本件建築条例によって直接規制を受ける対象者である高さ制限地区地権者の,前記のような内容の大学通りという特定の景観を享受する利益については,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。

 

 そして,本件高さ制限地謦n権者の景観の利益は,街並みの高さを20メートルにするという客観的数値によって,保護の対象となる利益の範囲及び内容の外延が明確である。

 

 そうすると,本件高さ制限地区の地権者の大学通りの景観に対する利益は,本件建築条例及び建築基準法によって保護された法律上の利益に該当すると解するのが相当である。

 

 他方,本件高さ制限地区の地権者以外の者についての景観に対する利点は,本件建築条例及び建築基準法68条の2が目的とする大学通りの景覿を維持,保全するという公益目的の反射的利益にすぎず,建築基準法によって保護された法律上の利益には該当しないと解すべきである。

 

(3)原告らが主張する環境,プライバシーの保護等のその他の利益は,法律上保護された利益であるとは認められない。

 

4 明和地所に生じる不利益

 

 本件建物の敷地である本件土地は,美しい景観を有し,国立市民により大切に維持されてきたことが一般にも周知されている大学通りに面していること,明和地所は,本件建物の建築計画の段階である平成11年10月8日,国立市長から,景観条例に基づいて,本件建物の建築計画を高さ20メートルの並木に調和するように指導を受けていること,本件建物の敷地を含む本件地区において建築物の高さを20メートルに制限する旨の本件地区計画が,本件建物の建築確認申請を提出する前の段階である平成11年11月24日には公告,縦覧に供され,明和地所においても,当然その内容を認識し得る状況にあったこと,本件建物の建築確認申請提出後,建築確認通知を受ける前の段階である平成11年12月24日,改正前の本件建築条例が公布され,本件地区計画が決定,告示された平成12年1月24日以後には,本件建物が本件地区計画に反しており,本件地区計画にかかる高さ制限が,条例改正によって建築基準法に基づく規制となもことが客観的に予想される状況にあったことなどに照らすと,明和地所は,相当早い段階から,本件土地については,高さ20メートルを超える建物が建築できなくなることを認識していたと認められ,少なくとも本件建物の建築確認を受ける直前の段階においては,極めて近い将来に,建築基準法上,本件建物の敷地に建築できる建築物の高さが20メートル以下に制限されるであろうことを十分認識した上で,本件建物の建築工事に着工したという事情が認められる。

 

 また,本件の原告らの一部を含む周辺住民等から,明和地所に対し,本件建物の建築工事禁止を求める仮処分が申し立てられ,その審理の中で,建築基準法3条2項の解釈について,被告らと異なる解釈のあり得ることも主張されたことにより,明和地所は,その審理の結果,裁判所から本件建物に本件建築条例が適用されるという解釈を示される可能性を認識していたと認められるにもかかわらず,その審理結果を待つことなく本件建物の建築続行し,未だ建物の躯体工事が完成する以前の段階である平成12年12月22日,東京高裁決定により,本件建物に対しては本件建築条例が適用されるという解釈が示され,本件建物が違法建築物として除却され得る可能性を一層強く認識し得た状況下において,さらにその建築を続行して現在に至っているという事情が認められる。

 

 そうすると,明和地所は,将来,本件建物が違法建築物と判断され,是正命令によって違法部分の除却をしなければならない事態に至ることがあり得ることをも認識し,その場合に自らが受ける危険や不利益についても十分に承知しながら,あえて,本件建物の建築を停止することなく,本件建物の違法部分の建築を続行していたと認めることができる。このような場合において,是正命令権限行使の判断の際に,建築主の不利益を過度に考慮するとすれば,客観的には違法であるにもかかわらず,建築主側が作出した既成事実や駆け込み着工を安易に追認する結果となり,法の公正かつ公平な適用を害することになるというべきである。

 

 以上のような事情の下においては,本件違法部分の除却によって生じる不利益を明和地所に受忍させることが相当でないと認められるような特段の事情は存しないというべきである。

 

5 是正命令を発すべきことの一義的明白性の有無

 

 ・本件建物は,地盤面からの高さ20メートルを超える部分について,本件建築条例,建築基準準68条の2に明確に違反する違法建築物であり,その違反の程度は著しいこと,・本件建物の違反部分により本件建築条例,建築基準法68条の2の規制にょって達成しようとした景観と都市環境の維持という行政目的は大きく阻害されていること,・近隣住民の受ける被害にあっては,日頂については,それほど重大な被害が生じているとは認められないものの,本件高さ制限地区内の地権者の景観に対する利益については重大な被害を生じさせていること,・建築主である明和地所に発生することが予想ウれる不利益は,本件建物が違法建築物であることによって生じる不利益であって,これを考慮す.べき特段の事情は存しないこと,・明和地所による自発的な違反解消の見込みは全くないこと,・是正命令以外の手段による違反解消の見込みもないことなどの事情が認められ,このような具体的事情の下では,被告建築指導事務所長が建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を全く行使しないことは,裁量権の逸脱に当たり違法というべきであり,同被告において前記の違反状態を解消するために上記是正命令権限を行使すべきことは一義的に明白な義務というべきである。

 

 そして,被告東京都建築事務所長に対し,本件各是正命令を発令することを求める本件義務付け請求に係る訴えは,無名抗告訴訟の一義的明白他の要件を欠くといわざるを得ないが,同被告に対し,本件各是正命令を発令しないことが違法であることの確認を求める本件不作為請求に係る訴えには,同被告が建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることの確認を求める請求も含まれていると解されることから,本件不作為請求に係る訴えのうち,上記請求部分に限っては,無名抗告訴訟としての一義的明白性の要件を満たしているというべきである。

 

 しかし,是正命令を発するためには,原則として,是正命令の相手方に対する告知,聴聞の機会を付与するなどの手続を経て行うことが法律上要求されていること(建築基準法9条),建築主側に対して必要最小限以上の不利益を生じさせないよう配慮する必要があること,本件違反を是正するためには,建築禁止命令や除却命令など違反解消に最も効果的な権限を行使すべきであるということはできるものの,そのために,どの範囲の者に対し,どのような種類の命令を発するべきかという点についてまでは一義的に明白とまではいえないことなどに鑑みると,是正命令権限の行使の方法及び杓容として,いつ,どの範囲の者に対し,どのような手続を経て,いかなる是正命令を発すべきかの点については,なお,被告建築指導事務所長の裁量の範囲内にあるものというべきである

 

 以上によれば,別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らについては,本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求に係る訴えのうち,被告建築指導事務所長が,本件建物について,建築基準法68条の2,本件建築条例7条に違反する部分を是正するために,是正命令権限を行使しないことが違法であることの確認を求める部分に限り,明白性,緊急性,補充性の各要件を満たし,原告適格も肯定できるから,適法な訴えであり,その請求には理由があると認められるが,同原告らのその余の訴え及び同原告らを除くその他の原告らの訴えについては,いずれも不適法であるというべきである。

 

6 緊急性の要件,補充性の要件

 

 緊急性の要件,補充性の要件の充足は,いずれもこれを肯定できる。

 

7 検査済証の交付についての本件予防的不作為請求

 

 検査済証が交付されて本件建物が使用されるようになると,原告らが主張する損害のうち,プライバシー侵害や交通事故の危険性増大などの可能性が生じる関係にはあるが,これらの損害は,前述のとおり,建築基準法によって保護された利益に係る損害とはいえない。そうすると,これらの損害を理由に,原告らに本件検査済証の不交付を求める法律上の利益はないというほかない。

 

 また,日照や景観などの建築基準法によって保護された利為に係る損害は,本件建物が使用されることによって生じる損害ではなく,本件建物が存在することそのものによる損害であるから,これらの損害は,検査済証交付処分によって生じる損害ということもできない。

 

 したがって,原告らには,検査済証を交付してはならないとの不作為を求める法律上の利益はないというべきであり,本件予防的不作為請求に係る訴えは不適法である。                                      

 

 

東京高等裁判所  平成一二年(ラ)第三三八号建築禁止仮処分申立却下決定に対する抗告事件

(原審・東京地方裁判所八王子支部平成一二年(ヨ)第二八号、一〇七号)

 

           決        定

 

 当事者の表示     別紙当事者目録のとおり

 

           主        文

 

     一 本件各抗告をいずれも棄却する。

 

     二 抗告審における変更後の抗告入らの各予備的申立てを却下する。

 

     三 抗告費用は、抗告人らの負担とする。

 

           理        由

 

第− 抗告の趣旨(略記等は、原則として、原決定に従う。)

 

 一 原決定を取り消す。

 

 二 (主位的)

   相手方らは、本件土地上に本件マンションを建築してはならない。

 

   (予備的)(当審において変更)

   相手方らは、本件土地上に建築中の本件マンションについて、高さ二〇メートルを超える部分を仮に撤去せよ。

 

第二 事案の概要

 

 一 本件は、東京都国立市所在の本件土地に隣接する土地を所有して学校を経営している抗告人桐朋学園、同校に通学する抗告人榎本吉兼ら七名(抗告人榎本ら)及び本件土地に隣接し又はその近隣に土地を所有して居住する抗告人山田悦夫ら六名(抗告人山田ら)が、相手方らに対し、日照阻害、通風妨害、教室や校庭からの眺望阻害、プライバシー侵害、近隣の景観阻害等を理由に本件土地上への本件マンションの建築禁止(主位的)又は建築中の本件マンションのうち、高さ二〇メートルを超える部分の撤去(予備的。原審においては、高さ二〇メートルを超える部分の建築禁止を申し立てていたが、当審において、右のとおり変更した。)を求めて申し立てた仮処分事件である。本件土地及び桐朋学園等の位置関係は、別紙図面のとおりである。

 二 原審は、抗告人らの各申立てを却下した。

 

 三 当裁判所も、主位的申立てについて原審の下した結論を維持し、当審における変更後の予備的申立てを却下すべきものと判断した。その理由の概要は、本件マンションは、本件建築物制限条例の施行(本件土地を含む中層住宅地区に建築する建築物の高さを二〇メートルに制限する旨の改正条例の施行のことである。以下同じ。)の時点において、現に建築の工事中といえる段階に至っておらず、その高さは同条例に違反するものの、これにより抗告人らの受ける日照阻害は、未だ、受忍限度を超えておらず、抗告人らが主張するその余の被害も、法律上、建築差止仮処分の被保全権利の根拠となるものではないか、受忍限度を超えるものではないというものである。

 

 四 当裁判所の認定した事実関係等は、原決定の理由の「第三 当裁判所の判断」の一(原決定三頁九行目から六五頁六行目まで)と同じであるから、これを引用する(ただし、一の「2 日常被害の状況等」(同六頁四行目から三一頁二行目まで)のうち、原審の評価に係る部分を除外することとし、抗告人ら及び相手方らの指摘する誤りについては、結論に影響を与えるものではないので、本決定においては、個別に補正することはしない。また、原決定後、本件マンションのE棟において、高さ二〇メートルを超えて建築工事が行われていることは、当事者間に争いがない。)。

 

 五 当審における争点は、左記のとおりである。

 

  1 抗告人らが主張する環境、景観の阻害等が、法律上、建築工事差止めの仮処分における被保全権利の根拠となるか。

2                 国立市の制定した本件建築物制限条例の効力

3                 本件達築物制限条例の施行日である平成一二年二月一日当時、本件土地上に、「現に建築の工事中の建物」(建築基準法三条二項参照)が存在したか。

  4 本件マンションによる日照被害等が、抗告人らの受忍限度を超えるか。

 

第三 当裁判所の判断

 

 一 争点1(抗告人らの主張する披害が、被保全権利の根拠となるか)について

 

   当裁判所は、日照阻害及びプライバシーの侵害については、これが受忍限度を超える場合には、建築差止めの仮処分を求める被保全権利の根拠となり得るけれども、当該地域の環境、景観の阻害等については、差止めの根拠とはなるものではないと判断する。その理由は、以下のとおりである。

 

  1 環境、景観に関しては、いわゆる環境権を権利として認知すべき旨が提唱されて約三〇年になるが、爾来、それを私法上の権利として認知し、司法裁判所により保護されることを可能にする立法は、制定されていない。

 

  2 抗告人らの所有(居住、通学する学校の所在を含む。)土地及び本件土地を含む当該地域は、原決定の認定するとおり、大正後期から昭和初期の建設当初から、教育施設を中心とした閑静な住宅地を目指して整備され、美観を損なうと考えられる建物の建築や、工場、風紀を乱す営業がされない状態が長年にわたって維持され、JR東日本線国立駅以南について、東京都文教地区条例に基づく文教地区の指定、国立市景観形成条例の施行、行政指導要綱による指導がされ、これらが右状態の維持に寄与してきた。

 

  3 環境にしても、景観にしても、その中に居住して生活する住民の多数が長い間にわたって維持し、価値が高いものとして共通の認識の確立したものは、先に居住を開始した住民の単なる主観的な思い入れにとどまるものではなく、新たに住民となる者や関係地域において経済活動をする者においても十分に尊重すべきものである。しかして、これら環境や景観は、個々の住民の利益というよりは、時代及び世代を超える、地域社会全体の利益として、国や地方自治体において、その内容を明確にし、これを維持する根拠となる法令を定め、その行政を通じて維持されるべきものであつて、私人間に偶発的に発生する紛争の解決を通じては、有効かつ適切に維持されるとは解されない。もとより、これを司法の過程を通じて維持することを可能にするかどうか及びその範囲を決定するのは立法政策の問題ではあるが、我が国においては、景観に関する利益、環境のいずれについても、裁判規範となる立法はされていない(国立市景観形成条例も、右にいう意味での裁判規範とは解されない。)。このことは、我が国においては、これを司法裁判所によつて維持すべきものとする国民の需要が立法を促す程には強くないことを示すものである。

 

  4 以上のとおり、当該地域の環境及び景観に対する住民の利益は、それのみでは、法律上、相手方らの本件マンションの建築を差し止める根拠(被保全権利の発生原因事実)とはなりえないと解すべきである。

 

  5 また、右に主張したところにかんがみれば、眺望の阻害、圧迫感、天空狭窄等についても、環境及び景観の阻害に準ずるものとして、それ自体独立しては披保全権利の根拠となり得るものではないというべきである(もとより、   これらが、日照被害が受忍限度を超えるか否かの判断にあたつての考慮要素となり得ることは別論である。)。 

 

 二 争点2(本件建築物制限条例の効力)について

 

   当裁判所は、左記のとおり、相手方らの主張する理由によつては、本件建築物制限条例は何ら効力を否定されるものではないと判断する。

 

  1 本件建築物制限条例の制定及び相手方らが本件マンションの建築確認を取得するに至るまでの経緯については、原決定の認定するとおりである。すなわち、平成五年、元の所有者であつた東京海上は、本件土地上にあつた計算センターを移転した後、六階建ての事務所ビルを建築しようと試み、用途地域の見直しを求めたものの、国立市の容れるところとならず、これを断念し、平成一一年七月、相手方明和地所が本件土地を購入し、本件マンションの建築計画を実施に移し、東京都や国立市の条例に規定する手続を経て、平成一二年一月五日建築確認を得たのであり、その直後、国立市は、本件土地について、高さ二〇メートルを超える建物の建築を禁止する旨本件建築物制限条例を改正し、同年二月一日から施行した。右のような事実の経緯にづいては、相手方明和地所においては、本件土地の取得後、当時の法令の許容する範囲内で本件マンションの建築を計画したものの、高層建物の建築について、これにより日照被害を受ける者を含め、長年にわたつて維持されてきた当該地域の景観の破壊を危惧した住民から強く抵抗を受け、国立市においても、建物の高さについて制限する旨条例を改正するに至つたのであり、相手方ら及び住民においては自らの利益を確保する行動をし、国立市においては、住民と当該地域のあるべき姿を維持するための行動として条例を改正したとみることができる。

 

  2 相手方らは、国立市が相手方明和地所の本件マンションの建築計画を知った上で、これを阻止するために、いわば狙い撃ち的に本件建築物制限条例を制定したことを理由に、また、制定の手続等の故に、同条例が無効であると主張する。しかしながら、国立市議会における条例の制定手続の当否は、優れて政治的な問題として、裁判所が判断を控えるべき性質の事柄であり、制定手続の故に条例が無効とされることはない。また、右条例は、相手方明和地所の本件マンション建築計画に対して狙い撃ち的に制定されたとしても、その故に無効となることはない。国の法律、地方自治体の条例いずれであれ、生じ得る事態を想定して制定されるものではあるが、経済活動や犯罪が従前予想しなかつた態様により行われるとともに、これらを規制するための立法が後追い的にされることは、常にあることで、異とすべきことではない。もとより、犯罪については、事後法により処罰されることはなく、民事立法については、既得権等従前の法体系を基礎にして開始された経済活動等をどの範囲で新法令の規制等の対象とするかが、当該法令において、あるいは裁判所の判断を通じて、調整されることはあり得る。民主主義国家における国及び地方自治体の法令制定権とはそのようなものであり、制定された法令は、その内容が、法律であれば憲法に、条例であれば憲法又は法律に、各違反するものでない限り、具体的な経済活動の規制の目的で制定され、又はその制定により従来可能であつた経済活動が規制されることを理由に無効となることはない。

 

  3 以上のとおり、本件建築物制限条例が無効であるとする相手方らの主張は、他に同条例の無効事由の主張もない以上、採用することができない。

 

 三 争点3(本件建築物制限条例施行日である平成一二年二月一日当時、本件土地上に、「既に建築の工事中の建築物」が存在したか)について当裁判所は、左記のとおり、本件建築物制限条例が施行された標記の日時当時、本件土地上には、「現に建築の工事中の建築物」(建築基準法三条二項参照)が存在していたと解することができず、したがつて、本件マンションは、本件建築物制限条例に適合しない範囲すなわち高さ二〇メートルを超える範囲において、建築基準法に適合しない建物に当たると判断する。

 

  1 相手方らは、平成一二年一月五日の建築確認取得後、同日から土を掘る根切り工事を開始し、同月二六日からは右工事によつて掘削された部分の崩れを防止する山留め工事を並行して行っており(原決定)、その他の疎明資料   によつても、同年二月一日においても同様の工事をし、これらの工事のための機械等は本件土地に搬入されて稼働していたと認められるものの、工程表上も、基礎、地下躯体工事は同月中旬に着工する予定であり、本件マンションを建築するための基礎杭を設置するための機械が搬入されていることを認めるに足りる疎明はなく、本件土地以外の場所において、建築資材の加工等が開始されたり、これに費用を費やしたりしたことを窺わせるに足りる事情の主張及びこれを裏付ける疎明はない。また、相手方らにおいても、標記日時当時、複数の建物からなる本件マンションの工事が基礎杭を設置することを予定しない部分(相手方らは、基礎杭の設置を要しない部分と主張するが、結論を左右しない。)の土の掘削工事を実施していたことは認めている。

 

  2 建集基準法三条二項は、「条例の施行の際現に建築の工事中の建築物がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該逮築物又は建築物の部分に対しては、当該規定は、適用しない。」と規定する。同条項の趣旨は、建築確認を受けて建築した建物であつても、後に法令の改正等により同法七条三項の検査済証の交付が受けられない事態がありうることを当然の前提としながら、建物の建築が一般に高額の費用と相応の準備及び期間を要して完成に至るものであることにかんがみ、三条二項に該当する場合には、結果的に同法の規制に適合しないこととなつても、建築を許容することとするにあると解せられる。これにより、新たな規制によつて法が実現しようとした目的は一部達成されないこととなるが、一方、建築主にとつては、法に適合するとの判断を受けて建築工事を開始したにもかかわらず、完成時には法に適合しないとされることによる予期しない損失を避けることができる。このような建築主の既得権の保護と新たな規制の目的の達成との調整を図る同条項の趣旨及び文言にかんがみると、「既に建築の工事中」であるといい得るためには、建築請負契約の締結や建築の材料、機械の敷地への搬入をし、敷地の掘削等敷地に改変を加えるだけでは足りず、建築物の躯体中の基礎を除いた部分の工事に至っていることまでは要しないものの、敷地において、地中であれ、地上であれ、計画された建築物の基礎又はこれを支える杭等の人工の構造物を設置する工事が開始され、外部から認識できる程度に維続して実施されていることを要すると解するのが相当である。

 

  3 本件においては、前記のとおり、標記の日時当時、杭打ち、基礎又は地下躯体工事に着手しておらず、建築物の基礎又は地下室部分を築造するために、地盤面以下の土を掘削して所要の空間を設ける根切り工事が実施されていたのである。同工事は、整地工事とは異なり、建築物の建築を前提とすることは明らかであるが、その施工対象は地盤の土壌であり、この段階では、地盤上又は地下において、右人工の構造物を設置する工事に着手していたと認めることはできない。

 

  4 右によれば、相手方らの実施していた前記認定の作業の段階は、建築基準法三条二項にいう「現に建築の工事中」であつたと認めることはできず、本件マンションは、その高さの点において本件建築制限条例に違反しており、   建築基準法に適合しない建物に当たる。

 

 四 争点4(本件マンションによる日照被害等が、抗告人らの受忍限度を超えるか)について

 

   当裁判所は、本件マンションが高さ二〇メートルを超える範囲で違法建築物に当たり、また、後記のように、相手方ら側の不利益も必ずしも明確でない等の事情があるものの、抗告人らの被保全権利の存否については、本件マンションによる日照被害等が、抗告入らの受忍限度を超える程度に至っているとの疎明はなく、抗告入らによる仮処分命令の申立ては却下すべきものと判断する。

 

  1 本件マンションによる日照阻害

 

    当裁判所は、抗告人らの標記被害については、左記(一)及び(二)のとおり変更するほかは、原決定の判示するとおりであると認定、判断する。

 

   (一) 抗告人山田の日照被害

 

      抗告人山田についての日照被害は、抗告人山田宅の南側に存する山田ミヨ宅によつても生じていることは原決定の認定するとおりであるが、抗告人山田宅が山田ミヨ宅の取壊しを予定して建築確認を得た建物であることは、抗告人山田宅における日照阻害による被害の程度を判断する上において、大きな影響を及ぼすものではない。もっとも、一般に、建築基準法違反の状態で土地を利用することによる利益が、相応に低く評価されることは避けられず、建築基準法違反の事実は、利益考量要素の一つとなると解すべきである。

 

   (二) 抗告人桐朋学園及び同榎本らの日照被害

 

      原決定の認定する抗告人桐朋学園の敷地の利用状態を前提として、冬至の時点の校庭(西から、野球場、サッカーグラウンド、小学校校庭の三つに区分されている。)における日照被害の状態を見るに、午前八時には、     野球場の北東側二分の一以上、サッカーグラウンドの南西側の大半、小学校校庭の南西側の一部に日影が生じ、午前九時には、野球場は日影となる部分はなく、サッカーグラウンドの南道路側及び小学校校庭の各五分の一程度に日影を生じ、午前一〇時から午後三時までは、サッカーグラウンドと小学校校庭の南道路に近いごくわずかの部分に日影を生じ、午後四時には、小学校校庭の南東側部分約三分の一に日影を生じる(乙五七)。

 

  2 抗告人ら側の事情

 

   (一) 既述のとおり、抗告人らの日照被害は、本件マンションの建築差止めの被保全権利の根拠となり得る。また、発育期にある児童生徒にとつて、校庭が教室同様に大きな役割を果たしていることは、抗告人ら代理人の主張    するとおりである。しかし、その披害の内容及び軽度は、先に引用した原決定認定のとおり(前記1による修正を含む。)であり、総じていえば、日影時間も比較的少ない(抗告人桐朋学園については、午前九時には日影部分がかなり減少し、午前一〇時以降にはほとんどなくなる。生徒による早朝の部活動や、冬期の早朝の霜を考慮しても、右の軽度の日影が、生徒の発育や、教育効果に悪影響を及ぼすとはいい難い。)など、主張の被害の程度は、大きなものとはいえない。

 

   (二) 本件マンション(最大高さ四三メートル)は、二〇メートルを超える部分は建築基準法に適合しないものであるが、それ以下の高さの建物による日照阻害を明確にする資料はないものの、大略半分の高さと想定して生じ     る日影を検討すると、日影に顕著な差を生じるのは、抗告人桐朋学園の三グラウンドで、本件マンションの高さが二〇メートル以下であれば、同抗告人のグラウンドには、終日殆ど日影を生じなくなるものと疎明される。

 

  3 相手方ら側の事情

 

   (一) 相手方明和地所は、平成一 一年七月、本件土地を東京海上から購入して本件マンションの建築を計画し、所要の条例上の手続を経てきたもので、右計画の具体化とともに、国立市において本件建築物制限条例を改正する動きを生じ、最終的には改正に至り、本件マンションの高さ二〇メートルを超える部分は鐘築基準法に適合しないこととなつたものの、それ以下の部分を建築するについては、同法上の違法はない。

 

   (二) 相手方明和地所は、本件土地を購入するに当たり、当鋲地域が景観上も評価の高い地域であり、同所に高層マンションを建築するとすれば、住民の強い抵抗を受けることは十分知っていたか、又はこれを予想しながら、     敢えてこれを取得し、本件マンションの建築を進めた。同相手方は、本件土地を取得して初めて、当該地域の景観の特色を知ったかのように主張するが、当該地域が景観において優れたとされる地域であること、及び、方法や行動自体に異論があり得るとしても、当該地域においては、これまで、景観等の地域の住環境の保全のために住民が熱意をもって活動してきた実績があることは公知の事実に属し、東京海上が本件土地の再利用を断念した経緯があることも同相手方は知っていたと推認される。

 

   (三) 相手方明和地所は、右経緯の下で本件土地を取得し、本件の申立てがされた以上、原審における審理の当初から、本件土地の取得価格、差止めを認容されることにより起る恐れのある損害等について事実を把握し、保全処分が認容される場合の危険について検討していた筈であり、それにもかかわらず、原審においては、具体的な主張及び疎明をせず、抗告審の審問を終える間際になり、仮処分申立てが認容された場合の不利益について明らかにした。前記のとおり、当該地域と本件の経緯にかんがみ、抗告人らの仮処分申立ては容易に予想された事態であるにもかかわらず、既にした出費等の事実を明らかにしない応訴態度は、誠実なものとはいえない(土地取得等に高額の費用を要したことは容易に想像し得るにしても、判断の前提となる事実については、申立てを認容された場合の被害についての具体的な主張及び疎明を要するのであつて、それなくしては、比較考量すべき相手方らの損害の疎明がないことに帰し、本件申立てを却下する資料に欠けるという外ない。)。もっとも、本件においては、前記のとおり、本     件マンションは、高さの点において、建築基準法に適合しないと判断される以上、二〇メートルを超える部分の住戸が販売できないことに伴う売上げの減少は本件申立てが認容されることに伴う不利益に当たらず、右の点についての具体的な数額を論ずる必要はなくなつた。

 

  4 判断

 

    以上のとおり、相手方らの建築を予定する本件マンションのうち高さ二〇メートル以下の建築を禁止することを正当ならしめるだけの被害は認めることができず、一方、本件マンションは、高さ二〇メートルを超える部分につ   いて建築基準法に適合しないが、抗告人桐朋学園及びこれに通学する抗告人榎本らは、前記認定の内容、程度の校庭における日照阻害の被害を受けるにとどまり、抗告人山田らの日照被害も前記のとおりであつて、本件マンショ   ンのうち高さ二〇メートルを超える部分が違法建築であることを考慮しても、なお、抗告人らについて、私法上の権利として、本件マンションの高さ二〇メートルを超える部分の建築差止めを求め得るだけの、受忍限度を超える日照被害があると認めることはできない。

 

  5 プライバシーの侵害について

 

    抗告人らは、本件マンションから抗告人桐朋学園のとりわけ小学校の教室の内部が真正面から見えることが、生徒である抗告人榎本らのプライバシーを侵害すると主張する。そして、建築物によるプライバシーの侵害が受忍限   度を超える場合、当該建築物の差止めを求める根拠となり得ることは、前記判示のとおりである。しかし、教室の内部は、学校教育の場であつて、私生活の場ではないから、仮に本件マンションから桐朋学園の教室の内部が見えたとしても、法的な意味でのプライバシIを侵害するものではないことは明らかである。のみならず、本件マンションの開口部と小学校校舎とは、最も近いところでも約一二一メートル離れていることが疎明され(乙二〇)、肉眼で見た場合に、右開口部から教室の内部の様子を具体的に認識することは困難というべきである。したがつて、いずれにせよ、本件マンションが、桐朋学園の生徒たる抗告人榎本らのプライバシーを、受忍限度を超えて侵害するということはできない。 

 

 五 結論

 

   以上のとおり、主位的申立てに関する原審の判断については、理由において異なるものの、抗告人らの申立てを却下すべきものとした結論は是認すべきである。また、当審における予備的申立てについても、却下すべきである。よつて、主文のとおり決定する。

 

 平成一二年一二月二二日

 

  東京高等裁判所第一民事部

      裁判長裁判官    江    見    弘     武

         裁判官    小    島          浩

         裁判官    原       啓   一   郎

 

 

 

 

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