159国会建築基準法改正審議録 参議院先議

159国会参議院国土交通委員会議事録

第159回国会 国土交通委員会 第14号  平成十六年五月十一日(火曜日) 午後一時開会

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  委員の異動

 四月二十八日                                       五月十一日

    辞任         補欠選任            辞任          補欠選任

         加治屋義人君     上野 公成君           佐藤 雄平君      榛葉賀津也君

         松山 政司君      木村  仁君

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  出席者は左のとおり。

    委員長         輿石  東君

    理 事           岩城 光英君    鈴木 政二君    池口 修次君   大江 康弘君   森本 晃司君

    委 員           沓掛 哲男君    佐藤 泰三君    斉藤 滋宣君   鶴保 庸介君   藤野 公孝君

                  榛葉賀津也君   藤井 俊男君    大沢 辰美君   富樫 練三君

   国務大臣

       国土交通大臣       石原 伸晃君

   副大臣

       国土交通副大臣      林  幹雄君   佐藤 泰三君

   大臣政務官

       国土交通大臣政務官  斉藤 滋宣君  鶴保 庸介君

   事務局側

       常任委員会専門員    伊原江太郎君

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  本日の会議に付した案件

○建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

      不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案

(内閣提出)

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○委員長(輿石東君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。

 委員の異動について御報告いたします。

 本日、佐藤雄平君が委員を辞任され、その補欠として榛葉賀津也君が選任されました。

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○委員長(輿石東君) 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 政府から順次趣旨説明を聴取いたします。石原国土交通大臣。

      国務大臣(石原伸晃君) ただいま議題となりました建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 

 まず、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。

 我が国の国民の生活や経済を支えている建築物は、新規建設中心の時代からストック再生の時代を迎えております。

 しかしながら、建築物の安全性と市街地の防災機能に着目いたしますと、平成七年の阪神・淡路大震災において多数の尊い命が奪われたほか、昨年の宮城県北部地震においても大きな被害が発生するなど、地震や火災に対する安全性が十分確保されているとは言えない状況にあります。

 今後の大規模地震に備えた安全で安心できるまちづくりの実現には、既存建築物に対する制度面の充実強化等が緊急に必要となっております。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、劣化の進行を放置すれば地震により崩壊する危険性が高いなど、危険又は有害となるおそれのある既存不適格建築物に対して、建築行政を所管する特定行政庁が、勧告・是正命令を行うことができることとするほか、建築物の適正な維持保全を図るため、報告・検査制度を充実強化することとしております。

 第二に、既存不適格建築物について順次改修を進めていくことなどを可能とするための、建築規制の合理化を行うこととしております。

 第三に、災害が起きた場合等に多数の生命にかかわる建築基準に違反している建築物について、是正命令に従わない場合の法人重課を最高一億円とするなど、罰金の大幅な引上げを行うこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 

 次に、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。

 今日、不動産市場の構造変化に伴い、不動産の取引や投資に当たっては、リスクを考慮し、利便性・収益性といった利用価値に見合った価格を見極める必要性が高まっています。

 この法律案は、このような状況を踏まえ、不動産取引の円滑化及び適正な地価の形成に資する観点から、地価公示の対象区域を見直すとともに、不動産鑑定士等が、不動産の鑑定評価の専門家に期待される役割を将来にわたって的確に果たしていくことができるよう、不動産鑑定評価制度を充実しようとするものであります。

 

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、地価公示について、現行の都市計画区域内に加えて、都市計画区域外の土地取引が相当程度見込まれる区域をその対象とすることができることとしております。

 第二に、不動産鑑定士等の業務に関して、不動産の鑑定評価のみならず、不動産鑑定士等が、その名称を用いて、不動産の取引や投資に関する相談に応じる業務等についても、その適正な遂行を確保するため、守秘義務、監督等が及ぶよう措置することとしております。

 第三に、不動産鑑定士の資格取得制度について、その資質の向上を図ると同時に資格を目指す者のすそ野を広げる観点から、全体としては簡素合理化を図りつつ、実務能力の修得課程を充実させることとしております。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案を提案する理由です。

 これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

 

○委員長(輿石東君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。

 両案に対する質疑は後日に譲ることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。 午後一時五分散会

 

 

第159回国会 国土交通委員会 第15号 平成十六年五月十三日(木曜日)  午前十時開会

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   委員の異動

 五月十二日                                   五月十三日

        辞任         補欠選任                    辞任         補欠選任

     榛葉賀津也君     佐藤 雄平君                佐藤 雄平君     岩本  司君

                                                     森本 晃司君     山口那津男君

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  出席者は左のとおり。

    委員長        輿石  東君

    理 事        岩城 光英君   鈴木 政二君   池口 修次君    大江 康弘君

    委 員        上野 公成君   沓掛 哲男君   佐藤 泰三君    斉藤 滋宣君    田村 公平君

                鶴保 庸介君   藤野 公孝君   松谷蒼一郎君    岩本  司君    北澤 俊美君

                藤井 俊男君   山下八洲夫君   弘友 和夫君   山口那津男君    大沢 辰美君

                富樫 練三君

   国務大臣

       国土交通大臣   石原 伸晃君

   副大臣

       国土交通副大臣  林  幹雄君   佐藤 泰三君

   大臣政務官

       国土交通大臣政務官       斉藤 滋宣君   鶴保 庸介君

   事務局側

       常任委員会専門員        伊原江太郎君

   政府参考人

       内閣府政策統括官           尾見 博武君

       国土交通省土地・水資源局長    伊藤 鎭樹君

       国土交通省都市・地域整備局長  竹歳  誠君

       国土交通省住宅局長         松野  仁君

       環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長    南川 秀樹君

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  本日の会議に付した案件

○政府参考人の出席要求に関する件

○建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

○不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案

(内閣提出)

○高速道路株式会社法案(内閣提出、衆議院送付)

○独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出、衆議院送付)

○日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出、衆議院送付)

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○委員長(輿石東君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。

 委員の異動について御報告いたします。

 昨日、榛葉賀津也君が委員を辞任され、その補欠として佐藤雄平君が選任されました。

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○委員長(輿石東君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。

 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣府政策統括官尾見博武君、国土交通省土地・水資源局長伊藤鎭樹君、国土交通省都市・地域整備局長竹歳誠君、国土交通省住宅局長松野仁君及び環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長南川秀樹君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(輿石東君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

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      委員長(輿石東君) 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 

 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。

 

○藤井俊男君 おはようございます。民主党・新緑風会の藤井俊男でございます。

 昨日の大手新聞報道のトップ記事に石原大臣の顔写真入りで大きく報道されましたので、私はびっくりしまして、驚いたわけでありますけれども、それはそれといたしまして、同僚議員が質問を予定をするということでございますから、私は法案についてのみ御質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、改正案の目的と期待される効果について伺いたいと存じます。

 これは、昨日ではないんですけれども、一昨日の大臣の提案理由説明によりますと、今回の建築基準法等の改正案は建築物の安全性と市街地の防災機能の確保などを図るものとのことでありますけれども、この改正案は具体的にどのようなことを目的としているのか、そして法改正によりどのような効果が見込まれているのか、まず最初にお聞かせを賜りたい。これは大臣からお願いしたいと思います。

○国務大臣(石原伸晃君) 建物の安全性を調べてみますと、住宅でおよそ大体四千四百万戸のうち、昭和五十六年の耐震基準をクリアしていないものが三割に当たる千四百万戸、さらにオフィスビルの三百四十万戸のうち四割程度の百二十万棟が震災等々に耐え得る耐震基準を満たしておりません。また、防火・避難基準を満たさない三階建て以上の建物も十万戸ある。このような状態をこのまま放置いたしますと、平成七年の阪神・淡路の大震災規模の地震が発生いたしますとまた大きな被害が発生が予想されるわけでございます。

 今の建築基準法では、既存不適格建築物を増改築をする際に建物全体を一遍に基準に適合させなければならないとなっておりますが、このことがかえって、部分的に、増改築の部分は耐震構造のものに変えていこうという耐震性、防火性の向上を遅らせる結果になっている面も私は否定できないんだと思います。

 このため、今回の改正案では、五年程度の期間内に建築物の一部から順次基準に適合させる工事のやり方を認める、まあある意味では私、これが合理的だと思うんですけれども、こういうことで既存建築物の耐震性、防火性を確保していくと考えております。

 また一方、危険のおそれのございます既存不適格建築物に対しましても、行政庁が改修の勧告や命令を行える制度というものも新しく併せて行いまして、既存建築物全体の安全性の向上を今回の改正案によりまして図ってまいりたいと考えております。

 

      藤井俊男君 ただいま大臣から目的、効果等を御説明賜りましたけれども、既存不適格建築物は、住宅で一千四百万戸あると、非住宅建築物で百二十万棟存在すると。さらには、防火・避難基準についても、既存不適格の可能性がある建築物は十万棟もあるということが今お話ありましたけれども、そこで、こうした状況を見た場合、既存建築物の安全・衛生面の性能の確保を早急にやはり促進する必要があると思うんです。簡易、安易な診断、改修手法の開発普及、補助、そしてまた融資、税制等の新制度の拡充が求められておりますので、この辺の現状と課題について、今後の対応等を含めてお聞かせを賜ればと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) お答えいたします。

 既存建築物の現状でございますが、特に耐震基準につきましての既存不適格、大臣からも御答弁申し上げましたが、全住宅四千四百万戸のうち約三割、千四百万戸が既存不適格、それから非住宅建築物三百四十万棟のうち四割が、百二十万棟が不適格であるというふうな推計がございます。

 現行のこの既存不適格建築物制度は、規制強化されたときは既に存在するわけですから、改めてすぐに改修しろということではなくて、新基準への適合をすぐに、即座に求めるというわけではないわけですが、ただし、増改築等を行う場合は即座にすべての最新の法令基準に適合させてもらうという大変今厳しい原則で参りました。しかしながら、これからストックの有効活用を図っていくという必要がございます。即座にすべての最新基準への適合を求めるという現行ルールのためにかえって増改築が先送りされるというようなケースも出る、そういう弊害も生じております。結果として、問題のある既存建築物が残ってしまうということがございました。

 したがいまして、今回の改正案によりましては、放置すれば著しく危険又は有害となるおそれがある既存不適格建築物に対して予防的に特定行政庁が勧告し、これに従わなかった場合には是正命令を行うことができる制度を創設する、あるいは、既存不適格建築物の増改築等を行いますときに、全体計画に基づいて段階的な改修をすることができる制度、あるいは部分的な遡及適用の導入といった一定ルールの合理化を図っていくということを内容とする改正を行いたいということでございます。またあわせて、融資、税制等のバックアップでこうした増改築等を促進していくということも考えてまいりたいと思います。

 

○藤井俊男君 住宅局長からストックの関係で既存建築物の関係が説明されましたけれども、ここで私は、耐震診断や耐震改修が重要であると思っておりますので、その一方で、悪質な業者がおりまして、詐欺まがいの商法で高額の料金を取って不適切な対応をするケースもあるとお聞きをいたしております。

 こういった中で、高齢者を始めとした住宅所有者等はどこに相談したらよいのか、あるいは耐震診断、耐震改修経費としてどの程度の費用が妥当なものなのかよく分からない状況もあると言ってもよろしいと思います。さらに、現行の相談窓口もワンストップですべて対応できるとは言えない実情ではないかと思います。

 そこで、既存建築物の安全・衛生面の性能確保のために、地域に住宅所有者等が安心して手軽に利用できる総合的な相談体制、整備していく必要があると思いますが、この辺については住宅局長、どうお考えになっているか、お聞かせ賜りたい。

 

○政府参考人(松野仁君) ただいま御指摘いただきましたとおり、耐震診断あるいは耐震改修についての住宅所有者からの相談に対応するということは大変大事なことだと思います。

 国土交通省におきましては、阪神・淡路大震災を受けまして、公共団体等に対しまして、耐震診断あるいは改修に関する相談窓口を設置する、あるいは技術者の育成、工務店等の関係団体と連携いたしました促進体制の整備ということを平成七年に既に通知しております。これを受けまして、現在すべての都道府県におきまして相談窓口が開設されております。その相談窓口がどういうところかということにつきまして、国土交通省のホームページでも公表させていただいております。また、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づきまして設けられました住宅紛争処理支援センターにおきましても、住宅に関する相談業務をやっております。ここにおきましても耐震補強に関する相談を受け付けているところでございます。今後とも、こうした相談に対する対応の強化を進めてまいりたいと考えております。

 

○藤井俊男君 相談の関係は是非もっと充実をしていただきたいと思っております。

 そこで、住宅ストックの耐震化を促進するために、住宅リフォームということで、耐震化についてお聞かせを賜れたらと思うんですが、まだ私は国の関係ではPRが不十分だろうと思っております。

 例えば、テレビなんかでは非常に住宅リフォームの番組は人気が高いようでございまして、それを私どももたまに見ておるんですが、非常に部屋を明るくする採光の関係だとか、あと壁面を、窓ガラスの関係もこういうふうにやったらいいだとか、そう見ますと、今度は柱を取ってしまうような状況もテレビなんかで見ておるんですけれども、そうしますと耐震性、これ大丈夫なのかな、こんな気もするわけでございますが、テレビ等ではやられておるときは、建築士等の中からそういうふうなリフォームの関係もやられているんだとは思うんですけれども、この辺の関係ですね。

 是非、リフォームについても耐震の関係も必要じゃないかと私は思っておりますので、リフォーム時には耐震改修を組み合わせて行うことが重要という点で、もっともっと住宅リフォームについても国土交通省として取り組む必要、またPRする必要があるのかな、こんな気がしますので、これは大臣はいつも環境立国の関係で大分PRしているようではございますけれども、特にこの住宅リフォームについてはPRする考えを、あればお聞かせを賜れればと思います。

○国務大臣(石原伸晃君) ただいま藤井委員が御指摘されましたように、窓を広げたり太陽の光を多く、屋根のところを直したりしてというようなリフォームの番組等々を私も見たことがございますが、その一方で、耐震改修のリフォームというものは目に見えて生活の利便性が向上するわけでもございませんので、なかなか実態としては手が付けられていない。また、住み替えを予定している方々は、新しい家に行けば、今度、耐震構造五十六年度規制をクリアした新しいところに行けばいいやと、こういうことがあると思います。しかし、委員が御指摘されましたように、耐震性のリフォームということの重要性というものをもっともっとPRしていかなければならないということを、今、委員の意見の御開陳を聞かせていただきまして強く感じたわけでございます。

 そしてまた、リフォームの番組がテレビで放映されるように、リフォームの需要というものはここに来て格段高まっている。建築業者の他分野への進出、建設業者のですね、中では、リフォームというようなものを挙げる会社がかなりあったことにも見られますように、そんな中で、耐震改修を進めていく上で効果的な施策でリフォームというものがあるということをもっともっと多く宣伝していかなければならないと痛感しているところでもございます。

 インターネットやパンフレットを使って国土交通省としても努めておりますが、これからもいろいろな機会をとらえまして、快適性とは直接関係いたしませんけれども、安心、安全、藤井委員が意見の御開陳の前の御質問の中で御指摘されたような観点をしっかりとPRさせていただきたいと考えております。

 

○藤井俊男君 是非、PRの方もよろしくお願いしたいと思います。

 次に、中間検査、完了検査の徹底と違反建築物対策について伺いたいと存じます。

 私の地元、埼玉県では、埼玉県建築物安全安心実施計画を策定しております。工事の監理、中間検査、完了検査の徹底や違反建築物の是正に取り組んでおります。これを見ますと、完了検査率の年次目標、これが平成十年度で約三〇%だったんですが、全県で、平成十三年度では約四八%になっております。そして、平成十六年度の実施率の最終目標値をおおむね八〇%にしておりますね。中間検査率の年次目標でございますけれども、これにつきましては平成十三年度の中間検査率は全県で約六四%、平成十六年度の実施率の最終目標値は一〇〇%に設定をいたしまして中間検査の推進を図っておりますけれども、こうした取組はやはり各地でも行われていると思います。

 完了検査、中間検査の実施率は全国で現在どのぐらいになっているのかということでお聞かせを賜りたいと思います。今後ともその向上に向けて一層の取組が私は望まれますので、その取組方についてもお聞かせを賜れればと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) お答えいたします。

 中間検査、完了検査の徹底を含みます違反建築物対策というのは、これは大変重要でございます。

 こうした認識の下に、平成十一年に当時の建設省が建築物の安全安心推進計画というものを、全国的に音頭を取りまして、各都道府県でその計画を立てていただきまして、この中間検査あるいは完了検査の徹底を図るということをやってまいりました。十三年度までの三か年計画ということで徹底を図ってまいりました。さらに、十四年度以降はその第二次安全安心実施計画というものを各都道府県に作成をしていただくということをやってまいりました。完了検査実施率の年次別の数値目標を立てていただいて取り組んでいただいているということでございます。

 これの結果としてかなりの効果が出てきております。例えば、中間検査につきましては現在八九%、全国平均でございますが、約九割になってきております。これはその以前の十一年度と比べますと、十一年度が七〇%程度でございましたので、かなり上がっている。それから、完了検査も三八%程度であったのが一気に六八%まで上がってくるという、相当の効果を発揮してきております。

 今後、更にこの推進を進めていっていただきたいと考えておりますが、今回の法改正もございますので、これを契機として都道府県あるいはその他の特定行政庁にその検査の徹底を含みます違反対策を更に進めていただくように積極的に要請してまいりたいと考えております。

 

○藤井俊男君 中間検査で八九%、完了検査で六八%にも達してきたということでございまして、着実にこれら徹底方を進んでいるのかなと思っておりますので、更にやはりこの取組を是非目標値に沿って実施するよう要望しておきたいと思います。

 次に、完了検査のようなフロー対策の充実とともに、社会資本整備審議会の答申では、ストック対策として、違反建築物については強力に違反是正を進めるべきとしております。改正案では罰金の大幅引上げなどを盛り込んでいるようでありますけれども、これ以外に改正案では違反是正のためどのように取り組んでいくのか。建築基準法は天下のざる法と言う人もおりますけれども、一部でそういうふうに言われる場合もありますけれども、違反是正の実効性についてどのように担保していかれようとしているのか、お聞かせを賜りたいと思います。

 また、歌舞伎町で先般発生した雑居ビル火災等もありますね。踏まえれば、消防の関係やらあるいは警察の関係、非常に縦割り行政になっておるんではないかと。これは消防の方だよ、こっちは警察の方だよ、あるいはこっちは国土交通省だよと、こういうことがあの場合もいろんな意味で雑居ビル火災でも現れましたね。ですから、こういう一層の連携をやっぱり図っていく必要が求められておりますので、この現状と今後の対応についてお聞かせを賜れればと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) 違反是正対策、大変重要なことでございますが、今回の改正案におきましても、違反事実の調査を行いますために特定行政庁による立入検査を認めていくという監督権限の強化を行いますとともに、多数の者が利用いたします建築物が耐震性あるいは防火性と命にかかわるような違反があるという場合の是正命令に対する違反、これは法人罰として最高一億円まで引き上げるということで違反是正を徹底させることとしております。

 また、御指摘のございましたように、縦割りではないかというようなことも御指摘いただいております。警察あるいは消防機関と建築部局の連携というのは大変重要な課題でございます。

 お話がございましたように、平成十三年九月に新宿歌舞伎町におきまして雑居ビル火災がございました。大変痛ましい火災事故でございましたが、平成十四年には直ちに警察、消防と連携をいたしまして、違反是正に関して必要な事項を示しました連携の仕方を含んだ既存建築物に係る違反是正作業マニュアルを作成いたしまして公共団体に示してまいりました。また、特定行政庁におきまして、既存建築物に係る違反対策推進計画を警察、消防と連携をしていただいてこの取組をしてきていただいているところでございます。この結果として、これまで全都道府県におきまして警察、消防部局との連携体制が整備されてきております。既存建築物に係る違反対策推進計画も策定されまして、いろんな取組がなされてきております。

 国土交通省といたしましても、この法改正を契機として、更にこの連携強化を図り、違反是正対策を図ってまいりたいと思っております。

 

○藤井俊男君 十四年に会議をやられて、消防部局あるいは警察と連携を取る中でマニュアルを策定したということでありますので、大いにこれらの地方自治体、今、連携の関係はやはりもっともっと充実をしていかないと、縦割り行政だけでは私はいかぬと思いますので、是非、結果はいい結果に出ておるということでありますから更に取組をお願いしたいと思います。

 次に、危険、有害となるおそれがある既存不適格建築物に対する命令制度について伺いたいと思うんですが、今回の改正案について具体的にお聞きしておきますけれども、まず、今回の改正案では何か非常に、不特定多数の人が利用する既存不適格建築物のうち、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認められるものに対しては、保安上又は衛生上必要な措置を取ることを勧告することができるとしているということで、著しく危険又は有害であると認めるもの、あるいは著しく危険又は有害となるおそれのあると認められるもの、どうも分かりづらいことに、表現になっておるんですけれども、基準の違い等につきまして具体的な例を挙げてお聞かせを賜れればと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) 現在の建築基準法では、建築基準法第十条というのがございます。既存不適格建築物に対しまして特定行政庁が、著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合に、当該建築物の所有者等に対して除却、使用禁止等の命令ができるということになっております。したがいまして、その現在の十条だけですと、もう見た目にも今にも壊れそうだ、崩れ落ちそうだというようなそういう状態でなければ命令が出せないというようなことでございます。そこまで至るまでに何とかできないのか、予防的な措置が取れないのかというのが今回の趣旨の一つでございます。

 このために、劇場、店舗、ホテル、病院、共同住宅など多数の者が利用する建築物を対象に、現行の是正命令のほかに、に加えて、放置すれば著しく危険又は有害となるおそれがあるという既存不適格建築物に対しまして予防的に改修あるいは使用中止の勧告を行うことができるということでございます。これに従わなかった場合には是正命令を行うことができる制度も併せて創設するということでございます。

 お尋ねの、放置すれば著しく危険となるおそれというのは、じゃどういうことなのかということでございますが、これは例えばということでございますが、昭和四十年代以前に建築され、当時の基準からすると鉄筋の量が少ない、あるいは柱とか壁のバランスが悪いという、そういう鉄筋コンクリート造の建築物につきまして、見た目にも柱等にひび割れがある、そこから鉄筋が見えるけれどもさびが生じていると、このまま劣化が進みますと中規模程度の、震度五強程度の地震で倒壊するおそれがあるんではないかと、こういったケースについて勧告をしていくというようなイメージでこれから具体の基準を考えていきたいというふうに思っております。

 

      藤井俊男君 この崩壊するおそれがあるといって見た目で、損傷、腐食、もう劣化が進んでいると、今にも倒れそうな状況にあると。そしてまた、反面、危険を、また有害とするおそれ、こういうふうにもう、どういう基準というのを、なかなかちょっと私もイメージ分からないんですけれども、基準がね。そのときに、やっぱりこれは何といってもお金の関係でやはり一つはあると思うんですよね。お金が、財政上、幾ら基準の関係もあっても、これを勧告したってそれも是正できない。この辺についてはどう思うんですかね、住宅局長さん。

 

      政府参考人(松野仁君) 資金的な問題というお尋ねでございましょうか。

 

      藤井俊男君 ええ。

 

○政府参考人(松野仁君) 資金的な問題。はい。

 これにつきましては、例えば共同住宅につきまして、これは耐震改修が必要だという勧告をしなければいけないというようなことが生じた場合には、共同住宅の耐震化診断とか改修の補助制度が用意してございます。そういったものを活用していただく、あるいはそれ以外にも融資制度、公庫の融資制度とか、そういったものを活用していただくというような、そういった手だてで資金的な問題は解決していただかなきゃいけないんだろうというふうに思います。そういった様々な方策と今回の法律とで併せて進めていきたいというふうに考えております。

 

○藤井俊男君 次に、同じような損傷の程度の建築物がありまして、放置されていたと。特定行政庁であるA市では勧告もしたし命令もした、B市では勧告はしたが命令はしない、C市では勧告もしないというような事態は好ましくないと考えられますね。そのような事態にならないように法案は書いてありますけれども、漠然とした基準になっているように思うんですね、これが。

 ですから、どのような場合にどのような勧告、命令を出すのか、やはり客観的、具体的な勧告基準、命令基準を定めて、これを地方公共団体に示すべきだと思いますけれども、この辺についてはどうですかね。

 

○政府参考人(松野仁君) 確かに、御指摘のとおり、勧告あるいはそれに基づく命令制度を導入するわけですが、現場の特定行政庁で余りにもばらばらであるということでは困るということで、バランスの取れた運用がなされますように、特定行政庁の意見も聞きながら、法の施行までに勧告、命令の目安を示すガイドラインを整備していくつもりでございます。

 これにつきましては、例えば、そもそも判断するときの方法論がございまして、耐震性、防火性に対する危険性の判断方法はどうか。あるいは、ひび割れ、さび等の劣化の状況を見てどう判断すべきかというマニュアルのようなもの。それから、古い建築物ですから図面がないケースが相当あると思います。そのときに、じゃ、どういう現況の調査をすればいいかといった、こういった様々な観点のマニュアルを含んだガイドラインを示して、その中で、例えば先ほど申しましたような鉄筋の量がどうも少ないとか、あるいは柱、壁のバランスが悪い、現にひび割れが生じて、鉄筋のさびの度合いも、さっき申し上げましたようなガイドラインの中での基準に照らして問題だというものに勧告をしていただくと、こういった手はずになるように考えていくつもりでございます。

 

      藤井俊男君 地方公共団体にこの目安、ガイドラインの関係、マニュアルを作成して方法論を打ち出すということでありますけれども、これはもう用意はされたんですか。

 

      政府参考人(松野仁君) 今申し上げましたガイドラインについてでございましょうか。

 

      藤井俊男君 ええ。

 

      政府参考人(松野仁君) ガイドラインにつきましては、今後、法律の施行までに、特定行政庁の現場の人たちの意見も聞きまして策定をしてまいりたいというふうに考えております。

 

○藤井俊男君 よろしくひとつお願いしたいと思います。

 次に、不特定多数の人が利用する建築物の定期報告制度についてお伺いします。

 現在、定期報告の対象となる建築物の数は二十八万五千棟ございます。この私どもの調査室からのを見ますとなっておりますが、これらについて、建築物の用途、構造、延べ面積に応じて六か月から三年の間隔で特定行政庁が定める時期に報告しなければならないことになっておりますね。

 そういう中で、平成十四年度で五六・六%と報告率が非常に低く、特に観光立国の重要性が言われる中で旅館とかホテルの報告率ですね、これにつきましては三九・八%、非常に低い状況になっております。特にまた、地下街等においては四〇・二%ですね。合計で五六・六%ということでございますので、建築物が多数存在している状況は、地下街だとかあるいは旅館、ホテル等、非常に問題になっております。

 そこで、今回の法改正によって定期報告制度の報告率が改善されるのかどうか、こういう低い状況下でございますので、この辺について、実施内容の充実等も含めてお聞かせを賜ればと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) 定期報告制度、これも建築物の維持管理上大変重要でございます。しかしながら、定期報告制度に関する建築物の所有者の方々の認識がまだ十分でないということもございます。今御説明になりましたとおり、平均で五五%程度という定期報告率でございます。

 これを今後引き上げていきたいというふうに考えておりますが、そもそも、今までの制度では定期報告が一向に出てこない建築物、これは一体どうなっているんだと。例えば、新宿歌舞伎町のあのビルでありますと、定期報告が出てこない、外から見てもどうも非常用進入口がふさがれているのではないかというようなことがあったのではないかと思いますが、その立入検査ができなかったということですね。つまり、今にも崩れ落ちそうな状態になっているようなものでないと立入検査ができなかった。今回、そういった定期報告が一向に出てこないで一体どうなっているんだろうという場合も立入検査ができる制度を導入いたします。そういったことで中を見ることができる。

 それから、そもそも定期報告台帳を閲覧の対象に、定期報告があるのかどうかということを閲覧の対象にして、言わば、例えばテナントとしてこのビルに入ろうと思っている方がこのビルの維持管理状況はどうなのかということを見るときに、それを閲覧することができるという制度も創設したいと、今回の法改正で創設したいと考えております。そうすれば、建築物のオーナーの方々も意識が変わってくると、インセンティブが与えられるということになろうかと思います。

 そういった様々の制度を併せてこの定期報告率を向上させて、建物の維持管理の向上ということで安全性を確保してまいりたいというふうに考えております。

 

○藤井俊男君 是非、定期報告制度については充実方、特に要望しておきたいと思います。

 また、社会資本整備審議会の答申では、建築物の利用者が定期報告が適切に行われているのかについてチェックできる仕組みの整備や、建築物ストックの維持管理状況等の情報開示の在り方の検討の必要性が言われております。

 国土交通省として具体的にどのように取組をする気なのか。例えば、今後、マル適マークやハートビル法のシンボルマークのようなものを決定して普及、周知徹底を図ることも必要じゃないかと、こんな気もしますので、この辺についてはどうお考えですか。

 

○政府参考人(松野仁君) ただいまお話ございましたとおり、社会資本整備審議会の答申の中でも、建築物ストックの維持管理状況等に関する情報開示の在り方ということで答申がなされたところでございます。

 これを受けまして、今回の法改正で、先ほど御説明いたしましたが、定期報告の実施状況を第三者が閲覧できるという制度を創設するということにしております。

 もう一つ、お話のございましたマル適マークのようなマーク、これを作ったらどうかというお話でございます。

 これにつきましては、実は、全国の地方公共団体が連携をいたしまして、平成十四年十一月にマークを作成をしております。そのマークが公開されておりまして、こうしたマークを張っていただくということと併せて、第三者が閲覧できる情報開示と併せて、こうした建築物の安全性の確保を図ってまいりたいと考えております。

 

○藤井俊男君 これは、マークは作成しておるんですね。──ああそうですか。後ほど私もこれを見たいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 特例容積率適用地区について伺いたいと思います。

 これは大臣にお聞かせを賜りたいと思うんですが、改正案では、商業地域に適用されている現行の特例容積率適用区域を廃止して、そして新たに特例容積率適用地区を創設すると。区域から今度は地区になるということでありますけれども、この特例容積率適用地区では、従来の商業地域に加えて、低層住居専用地域や工業専用地域を除く他の地域で容積率の移転が幅広く可能になることになりますね。

 そこでお伺いするわけでございますけれども、特例容積率適用地区が導入されることによって建物の高層化が拡大することから、のっぽビル等のばら建ちが出たり、あるいは地下室マンションのように近隣紛争が発生する懸念はないのかどうか、この辺が心配をいたしますので、まずこれをお聞かせを賜り、また特例容積率適用地区の導入に当たって、良好な町並み景観がこののっぽビル等で阻害されるおそれがありますので、地域住民の意見を十分に反映すべきということで、しばしば私はマンションの紛争等で、トラブル、日照権の問題だとかあるいは環境阻害だとかプライバシーだとか、いろいろ紛争の解決に向けても、こちらへ来てほしいということで要請を受けることがあるんですけれども、この辺について、大臣の率直な、地域住民に対する意見の取組方等お聞かせを賜れればと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) ただいま藤井委員が御指摘されました点は私も非常に重要なことだと思っております。今回、特例容積率適用地区と改めさせていただくわけですけれども、そのことによりまして、委員が御懸念されるようなのっぽビルとか、良好な町並み景観というものが壊されることがあってはならないと思います。

 そこで、今回のこの地区は都市計画で定めるとさせていただいているところでございます。都市計画でございますので、そのためには地元の公聴会の開催や公告縦覧といったような都市計画の手続によって、委員が御指摘されましたような地域住民の意見を反映できる仕組みにさせていただいております。

 さらに、特例容積率適用地区の指定の際には、例えば用途地域を指定するといった都市計画とは違いまして、委員が御指摘されました、どのような容積の移転が行われるかについてその具体的なイメージを持って、どういうものがどう移るのかということを行います。そのため、ああこうなるんだなということを住民の皆さん方が分かりますので、具体的な意見が求めやすく、住民の皆さん方が公聴会等々で言われるわけですから、その意見が反映しやすくなるものと考えております。

 また、委員が一番冒頭におっしゃったそののっぽビルですね。こういうものは非常に重要でございますので、必要な場合には高さ制限を定めることも可能となっております。

 容積を移転する際には、地方公共団体が居住環境上の支障がない範囲で容積の率の指定を行います。地方公共団体でございますので、地元の皆さん方との距離が近くなっておりますので、それに合わせて容積が移転されても、これまでと同じような高さ制限や日影規制は通常どおり適用されると思います。

 こういうことを積み重ねまして、御懸念のようなことが起こらないような地方公共団体による制度運営が行われるよう、しっかりと監視をしてまいりたいと思っております。

 

○藤井俊男君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 そこで、改正案では、既存不適格建築物について段階的に改修を進めていくことが可能とするようになっておりますね。全体計画や予定計画の中で、実際に経済的な面もあろうかと思いますので、一期工事やって二期工事はやらないと。確信的な、これは犯罪的なあれで、やらない、一方的にもうやるケースもあるんじゃないかと思われますので、全体計画の達成が一定期間内に確実にやはり行われるよう、この辺の取組も必要ではないかと思うんですが、この辺についてはどうですか。

 

○政府参考人(松野仁君) 既存不適格建築物の改修を段階的に実施すると。従来は即座にすべて適用していただくということでございましたが、これを合理化をいたしまして、段階的な改修で対応していただくことができるようにするということでございますが、ただしこれは、全体計画を出していただいて、それを認定をして、どういう順番でどういう内容の工事をするということを特定行政庁が認定をいたします。

 これを確実に実施していただくための担保措置として、特定行政庁は全体計画に沿ってちゃんと認定どおり工事が行われているかどうか報告を求めることができるという仕組みにしてございます。もし全体計画に沿って工事が行われていないという場合には必要な措置を取るということを命令することもできます。命令にもし違反しますと認定を取り消すということもあるわけです。

 それから、その場合に、必要に応じて、これは違反建築物にその認定を取り消した段階ではなりますので、是正命令の対象になるということでございまして、そういった場合にはそうした是正命令まであり得るという制度にしてございまして、確実に行っていただく制度にしてあるということでございます。

 

○藤井俊男君 分かりました。

 次に、地下室マンションについてお伺いしたいと思います。

 地下室マンションの紛争が各地で起きておりますね。いろいろ見ますと、これは、日本は山紫水明に優れているところでございますから、そういった斜面をうまく利用してやられているんだと思うんでしょうけれども、一九九七年に、平成六年に、建築基準法の改正によりまして住宅の地下部分の容積率を緩和したことによって、表から見ると三階建てのビルだと、向こうから見ると、反対の方ですね、逆に今度、地下の方を六階も下掘って、それで全体的には九階建てになっていると。いや、これは何だと、どうなっているんだということで紛争が続発しているということでございまして、自治体も規制条例で対抗しているということが大きく報道されているわけであります。

 横浜市も鎌倉市もその他の地域も、川崎の方も出ておるということでありますけれども、今回のこの、今回はこちらか、容積率を緩和したことによって全国各地で地下室マンションに関する紛争、この辺について国土交通省としてはどう取り組まれておるのか、また、これについてはどう見解を持っているのか、お聞かせを賜りたいと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) ただいま御指摘の地下室マンションでございますが、平成六年の建築基準法改正がございました。

 そのときに、防音性あるいは断熱性を生かした地下室の活用、あるいはゆとりある都市住宅の供給ということで、例えば地下室で日曜大工ができるような部屋が作れる、あるいは倉庫が作れる、あるいはピアノの騒音を気にしないで練習ができるとか、様々な使い方ができるという意味で地下室の整備ができるような制度を創設したということでございますが、五年ほど前から、横浜、川崎などの大都市で低層住宅地のいわゆる斜面地、斜面地に盛土をして地盤面をかさ上げし、地下の部分を増やすというような極端な形で住宅地下室のこの容積不算入措置を利用するというマンションが建設されまして、斜面の下側から見ますと、今お話がありましたように、あたかも中高層建築物のように見える、そういう外観となっているということで、住環境の悪化を招くとして紛争に至っている例も見られてきたところでございます。

 このような状況を踏まえまして、今回、この建築基準法の改正の中で、地下室部分の容積率の制限を可能とするように、地方公共団体の条例で、通常の地盤面の設定とは別にこの不算入措置の適用する際の地盤面、これを敷地の低い位置に定めることもできるということで、容積率不算入の対象となる地下室の範囲を条例で制限できるという制度も盛り込みまして、こうした問題への対応が可能なような法改正を盛り込んでいるところでございます。

 

○藤井俊男君 私の時間が五十分ということでありますが、同僚の池口議員が五十分ということで、私ども民主党百分いただいておりますので、若干時間延長してきておりますけれども、お許しを賜りたい。委員長、お願いいたします。

 そこで、平成六年から十六年ということで、十年間に地下室マンション、全国でどのぐらい建設されたのか。また、今回の法改正で今後住民紛争は鎮静化するかどうか、この辺については住宅局長どうお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) 先ほど申し上げましたとおり、平成六年の建築基準法改正で、この地下室の容積率の不算入措置というのが講じられました。

 この制度を利用して建設されましたマンションの数、実数については、これはなかなか把握は難しいわけでございますが、平成十年、十二年、十四年の三年間での斜面地マンションに係る紛争につきまして、東京都それから十三政令市を対象に実施した調査がございます。この期間内のこれらの地域全体で建築確認が約三十七万件ございました。この中で、斜面地マンションが原因で紛争等に至ったケースが二十一件ということでございまして、そのうち、横浜市のものが全体の八割、残りは、東京都二件、川崎市一件ということでございまして、首都圏の大変土地の高い大都市に集中しているというようなことでございます。

 そういったことから、今回の法改正では、公共団体が例えばこの措置を適用する際に、地下か否かを判断するための地盤面、これについて、敷地の低い位置に設定することができるという制度を導入いたしましたので、今後、その制度をうまく活用すればこういった地下室マンションの紛争については減少していくのではないかというふうに期待しております。

 

○藤井俊男君 地下室マンションの関係、二十一件ということで報告が、今御説明ありましたけれども、住民紛争鎮静化に向けて、是非もうこの関係については格段の取組を要望しておきたいと思います。

 次に、分かりやすい建築基準法への見直しの必要性について伺いたいと思うんです。

 これは、大臣、非常に建築基準法や都市計画法を、これを、難解過ぎるのではないかと、難しい表現になって、完璧に理解できる人いるのかどうか、この辺がちょっと、分かりにくい面が、読んでいてもさっぱり、先ほど私も言いましたけれども、どうも理解しにくいようなあれになっておりますので、大臣について、まずこれはどうなのか。

 それと、私は、内容を分かりやすくやっぱりすべきだと私は思いますので、この辺の努力もやはり必要じゃないかと思いますので、この辺について大臣にお答えをいただき、また最後に、今回の改正案を踏まえた今後の取組、決意も併せて承って私の質問を終わりにしたいと、このように思います。よろしくお願いします。

 

○国務大臣(石原伸晃君) ただいま藤井委員がおっしゃられた建築基準法、私も読んでいてなぜかなと思うようなことがよくあります。

 例えば、木造の三階建てというのは一回ブームになりましたけれども、これ、何で三階建てまでしかいけないのかなというのは書いてないんですよね。なぜ規制しているのか私もよく分かりません。さらには、専門家であるところの建築士さんですね、こういう方々から役所の方とか出先に寄せられる質問では、マンションの共用部分、何でこれ容積率にカウントしなくて、その範囲は一体どこまでなのか。最近、マンションの構造も非常に、共用部分といっても複雑化しておりますので、そういう規定の技術的解釈についての質問も多く寄せられると聞いております。

 委員の御指摘のとおり、やっぱり建築基準法によって規制をしているわけでございますので、国民の皆さんに分かりやすくすることや、先ほどの建築士とかの専門家の方が技術的解釈に迷わないような規定を、合理的で公にしていくということは私も重要だと思っております。

 今後とも、法令の趣旨の明確化、規定の合理化に配意をする、法令の、法令集ございますので、解説資料等々の作成や、関係機関と連携いたしまして、講習会等々で国民や専門家、業界の方々への理解というものを深めてまいりたいと考えております。

 そして、最後の、今回のこの改正案を踏まえての決意ということでございますが、残念ながら、我が国の既存不適格建築物の数というものはやっぱり膨大なんだと思います。現実論としては、そのすべてを五十六年規制に合わせて耐震性にしろといっても、個人の所有のものに対して、先ほど来委員が御指摘の経済的な面というものが必ず付いてまいりますので難しい。しかし、難しいからといってそのままにしておいて、これもまた委員の意見の中で出た安全、安心というものにも適応していくことができない、やはりめり張りを付けて、できることはやっていくということが大切なんだと思います。

 先ほども政府参考人から御答弁させていただきましたような、デパートとか病院とか共同住宅、学校といったような不特定多数の多くの方が出入りする建築物については緊急的、重点的に改善に努めていかなければなりませんし、今回の改正案によりまして、劣化による危険となるおそれあるものの改修を勧告したり、耐震性、防火性に関する法令違反に対する是正命令に従わない場合には一億円、一億円の法人罰を科すなどの措置を講ずることによりまして、着実に安全、安心を確保するように努めていかなければならないと思っております。

 また、同時に、既存不適格建築物の改修を一遍に全体として行わず、部分ごとに、先ほど御議論のありました、新たに増改築の部分でございますけれども、適合させていくということを認める制度の見直しも盛り込んでおりまして、今、先ほど言いましたように、かなりの数ございますので、こういうものの安全性というものを一日も早く高めていく努力をさせていただきたいと考えております。

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○委員長(輿石東君) 委員の異動について御報告いたします。

 本日、佐藤雄平君が委員を辞任され、その補欠として岩本司君が選任されました。

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○池口修次君 民主党・新緑風会の池口修次でございます。民主党・新緑風会の時間の枠内で質問をさせていただきたいというふうに思いますが、私の方は地価公示法と不動産鑑定評価法を中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 ただ、冒頭、法律の、法案とは直接関係ありませんけれども、昨日、毎日新聞で石原大臣の日歯連絡みのちょっと疑惑が報道をされましたので、昨日の衆議院の国土交通委員会でも何人かもう質問がしておりまして、またかという感じもあるかもしれませんけれども、参議院としては初めてでございますので、若干の点を確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、日歯連の関係、実は三月の十日の予算委員会で我が会派の高嶋議員の方が大臣に、日歯連関係でパーティー券なり個人献金の質問をさせていただきました。そのときの議事録を拝見させていただきますと、パーティー券については平成十二年の十一月から十四年の十一月にかけて四回、二百八十万、個人献金については平成、ちょっと議事録の上で言いますと、十二年に五十万、十二年に五十万とちょっとダブっての議事録ですが、この近辺で百万円は献金はあったということを認めていらっしゃいますが、これは、現時点でもこれの範囲であるということで間違いないのかというのを確認させていただきたいというふうに思います。

 

      国務大臣(石原伸晃君) 議事録、持っておりますが、若干補足させていただきますと、平成十二年六月、二度にわたりまして、五十万円、五十万円、日付が若干ずれておるんでございますが、これは東京都の歯科医師連盟杉並支部から私どもの第八選挙区支部への献金でございます。そのほかは委員の意見の御開陳のとおりでございます。

 

      池口修次君 新たに毎日新聞が提起した中身で言いますと、個人献金ではないんですが、政党の本部に、直接ではないですけれども、国民政治協会から政党の本部に渡って、それが石原大臣の担当する支部、東京都第八選挙区支部に交付をされたという金額が、二〇〇〇年の七月三十一日から最後は二〇〇二年の五月三十一日まで四回に分けて四千万が交付されたのが、これがある意味迂回献金ではないかという表現がされているわけですが、この点については、この四千万の、まず自民党本部からこの期間に四千万が交付があったのかどうかということと、この四千万というのは大臣としてはどういうお金だというふうに理解をしているのかということを確認させていただきたいというふうに思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) お尋ねの件につきましては、昨日も衆議院の国土交通委員会でたしか岩國委員だったと思いますけれども質問がございまして、委員会の整理として調査をして御報告するとお答えさせていただきまして、実際のところ、現在、今事実関係を調査中でございまして、党からどういう形でどういうものがあるのかないのかということを調べた、もう間もなく、今急いでやっておりますけれども、党の方にも確認しなきゃいけないようなこともございますので、明日の午前中までには御報告をさせていただきたいと思っております。

 それと、一般論なんですけれども、大変恐縮なんですが、政治資金制度の改革を行いまして、政治家個人の政治資金管理団体への企業、団体からの寄附というものを改めて、政党に企業・団体献金は一元化していこうという政治資金規正法の改正が、二〇〇〇年でございますか、行われた。それにのっとって我が党は寄附はできる限り政党へと、そういう観点で行い、小選挙区になりましたので、これまでは中選挙区でございますので、党から、特定の企業、団体が特定の政治家の政治資金管理団体に寄附を行えば、これは委員の御指摘のとおりなのかもしれませんが、これはあくまで、支部への政党からの交付金というものは、政党活動をその支部を通じて党勢を拡大したり党の政策を訴えたりとするように使うようにということで、かなりの金額が政党の方に経由して支部の方に入ってくる、こういう枠組みに私はなっているんだと理解しております。

 

      池口修次君 まず事情を調査して報告をするということになったようですが、是非参議院の国土交通委員会にもその中身を何らかの形で説明をしていただくように、委員長にお取り計らいをお願いしたいというふうに思います。

 

      委員長(輿石東君) はい。その点については理事会で確認をしたいと思います。

 

○池口修次君 それと、政治献金のやり方については、今、大臣が言われたように個人ではなくて政党に対してやって、それを政党がどういう形で支部にやるかというのは、それは私もそういうことに改められたというふうには思っていますが、ただ、党本部が各支部にやる、やること自体はこれは党が決めることですから我々がどうこう言う話ではないんですが、そのときに、やっぱり何らかの基準に基づいて、特に石原大臣のところだけということでなければ当然そういうことになるとは思うんですが、これが理由がある程度明確にならないと、こういった疑惑が生まれる余地が私は出るんじゃないかというふうに思っております。

 ですから、そこまでお話ししていただけるかどうかというのは、これは自民党の都合なんでということで言われるかもしれませんけれども、本当にマスコミで報じられているような疑惑を払拭するためには、やっぱりこれは石原大臣のその支部だけに渡ったのではなくて、やっぱり全体の何らかの基準で渡されているんだというところを明確にすれば、私は疑惑は完全に払拭されるのではないかなというふうに思っておりますので、是非私も、疑惑は是非払拭をしていただきまして、これから大事な道路公団関係の審議があるわけですから、是非すっきりした形でその審議をする、お互いにですけれども、することが必要ではないかというふうに思っておりますので、御期待、先ほどの確認のように是非報告をお願いをしたいというふうに思っております。

 次に、具体的な法案について何点か質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、地価公示法の改正でございますが、今回の改正の趣旨は、どちらかというと地価公示の根本的な仕組みというよりは、地価公示の対象区域を見直す、拡大をするということが今回の法改正の趣旨だというふうに理解をしておるんですが、ただ、いろいろ、一般的にいろいろの方が言われているのは、地価公示の表示の仕方なり表示の中身自体に対していろいろ疑問を呈している方がおりますので、そこを払拭しないと、単にまた地域を広げればますますその疑問が拡大するということにもなりますので、まず、地価公示制度というのがあるわけですけれども、これは何のためにこの地価公示制度を、できて今実際にやられているかという基本のところになるわけですけれども、まずこの点を確認させていただきたいというふうに思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 地価公示でございますけれども、地価公示は地価公示法に基づきまして行っているものでございます。それで、この地価公示の目的でございますが、一般の土地取引の際の価格の目安を提供すること、そしてまた、公共用地の取得価格、収用する土地に対する補償金の算定等に基準を与えることなどを通じて適正な地価の形成を図ろうとする、こういうことが目的でございます。

 そしてまた、平成元年に土地基本法が制定されたわけでございますけれども、土地基本法の第十六条におきまして、適正な地価の形成と課税の適正化に資するために地価公示を行う、そしてまた、その地価公示については、公示価格については、固定資産税評価、相続税評価等の公的土地評価について相互の均衡化と適正化が図られるよう努めるものと、こういうようなことが規定されておるわけでございまして、この規定に基づいて、公的土地評価についていいますと、例えば課税評価については公示価格の一定割合を目標として均衡化、適正化が図られるということになっております。

 そういう意味で、公示価格は公的評価において重要な、公的土地評価において重要な役割を担っている、そういうこともあるかと存じております。

 

      池口修次君 そういう形で算定というか公表した地価公示価格というのが、いろいろな形でこの価格が利用されているというか、それを準用して、例えば贈与税をどうするかとか固定資産税をどうするかとか、いろいろな形で利用されている大変重要な価格だというふうに理解をしておるんですが、この地価公示というのは具体的にどういう形で今現実に利用されているのかという例なり、場合によっては法律で書かれているところがあるのかないのか、説明をいただきたいというように思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 先ほど私申し上げましたのは法律上の目的とか趣旨という規定上のことでございますが、一つ例ということで申しますと、一般の土地取引の際の目安という点で申し上げますと、実際に土地取引をされる方々というのは、単に地価公示価格だけでやるということではなくて、やはり不動産会社の情報でございますとか、知人、友人からの話とか、そういういろいろなものを総合してされると思うのでございますけれども、公示価格の他のそういう情報との質的な違いということで申し上げますと、これは売手とか買手とか、そういうどちらかの視点に立った情報ということではございませんで、当事者が共通に共有できる情報というところに一つ大きな意味があるんだろうというふうに思っております。

 また、先ほどの土地基本法におきます公的土地評価における均衡、適正化という観点につきましては、私ども、そういうことが適切に図られるように、政府内の関係部局とも事務的にも緊密な連絡会議等を設けてお互いに情報交換をしながら進めているところでございます。

 そういう中で、公示価格の活用状況ということで、一つ私ども、平成十四年に土地取引の基礎となる情報に関する調査というものを行ったわけでございますが、その際いろんな、先ほど申し上げましたように、価格情報ということがあるわけでございますが、取引の際に相場情報のうち最も役立った情報源ということでお聞きしますと、その中では、やはり地価公示等のこういう情報というものの割合が相対的にではございますけれども一番高かったということもございます。

 それからまた、利用状況ということで申しますと、地価公示の公示価格につきましては、官報に掲載し、また市町村の事務所でも縦覧しておりますけれども、それに加えて私どものホームページで検索できるようになっております。このホームページへのアクセス件数というのは大体月百万件という実績、これが十五年の実績で百万件でございまして、年間にしますと一千百七十万件を超えております。そういう意味で、幅広い御関心というか御利用ということは、現実に数字的にも見て取れる状況でございます。

 以上でございます。

 

      池口修次君 今の説明は、特に民間の段階で、土地取引等に一つの有力な情報、必ずしもそれだけで決めているわけじゃないけれども、有力な情報ということですけれども、これ官の世界、具体的に言うと、冒頭、例示出てきました相続税だとか、何かそこには全く利用はしていないということなんですか。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 先ほどの土地基本法で適正、公的土地評価の均衡化を図るという観点で、それぞれ固定資産税や相続税の路線価について通達等が出てございまして、基本的には、相続税評価は平成四年分の評価からは大体地価公示の八割というのが一つの目安ということになってございます。それからまた、固定資産税評価につきましては、平成六年度の評価替えから七割ということを目標にして進めていくということでやっているところでございます。

 また、それと加えまして、公共用地につきましては、先ほども申し上げましたとおり、取得価格あるいは収用の際の補償金の算定等の基準、基準といいますのは、その具体的な取得する土地とその公示の標準地との間に均衡が保たれているというふうに法律になっておりますけれども、そういう形で活用しているということでございます。

以上でございます。

 

      池口修次君 何となくちょっと歯切れが必ずしも良くないんですが、今言った相続税だとか固定資産税だとか土地の収用基準は、これがメーンとなって決めているということではなくて、これは参考資料なんですか。その点をもう一回ちょっと確認したいと思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 公示価格を、いわゆる用地補償とかそういう点に関しましては公示価格を基準としてということになっておりまして、と申しますのは、地価公示というのはある決められた、全国で三万一千地点の標準地を設定してそこの価格を判定するということでございますので、具体的に用地を買収する場合にはまた違う場所での買収になりますので、この標準地とこの具体的に買収するところとにおいて合理的な均衡が保たれた価格という意味が基準という意味でございまして、そういう意味で地価公示というものを基にしてやっているというふうに申し上げて差し支えないと思っております。

 それからまた、公的土地評価につきましても、地価公示というものを一つのベースにいたしまして、また個々の評価につきましては、例えば固定資産税の評価額でございますと、この地点に更に四十万ぐらいの地点を追加的に取りまして、両方の均衡を見ながら具体的な評価額を決めているということで、その意味では地価公示の価格がまずベースになって動いているということでございます。以上でございます。

 

○池口修次君 分かりました。厳密な意味ですべてのところを公示しているわけじゃないですから、確かに局長の言われるとおりだというふうに思いますが、ただやっぱり、かなり、民間取引だけであればという場合と、官が相続税だとか税金の判定に使うという場合にはかなり意味がやっぱり変わってくると思いますので、その点を確認さしていただいたわけですが、ただ、じゃ現実問題として起きているのは、その地価公示の価格と不動産の実際の価格というのをもう反映していないんじゃないかという声が最近かなり出てきておりまして、場合によってこれが裁判の問題になったり、いろいろトラブルの原因になっているというふうに聞いております。

 一方で、多分国土交通省だと思いますが、多少そういう問題意識も持ちながら、不動産取引価格情報を開示した方がいいんじゃないかと。これ、開示すること自体、もういろいろな問題があるというのは説明は受けているんですが、ただ、アメリカではもう既に三十六州で開示しておったり、イギリスとかフランスではこの取引情報を開示して、これも含めてやっぱり正確な価格の判断をするというところが進んでいるんではないかなというふうに思いますが、ただ、聞くところによりますと、一時期この取引価格情報を開示を義務化するような法案を提出しようというふうな動きもあったようですが、今回の法案ではそこまで至っていないということでして、一つは、地価公示価格が不動産の実際の取引価格と比べてどういう認識を国土交通省としてされているのかということと、不動産取引価格について問題意識は持ちながらも今回の法案提出には至らなかったということでもしあるとしたならば、何が至らなかった原因だろうかというところをまとめてお聞きをしたいというふうに思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 二点のお尋ねでございます。

 まず第一点、実勢価格を地価公示はどのような形で反映させるように取り組んでいるかということでございますが、この公示価格の性格、まずちょっと最初に申し上げさせていただきたいと思いますが、この公示価格というのは、特殊な事情や動機が売手、買手にない、偏らない、そういう場合に通常成立する価格という形で判定するものでございます。その判定に当たりましては、市場の実勢を正確に見極めるという観点から、できるだけ多くの取引事例等を収集いたしまして、その実際のデータを基に取引事例比較法あるいは収益還元法等の不動産鑑定評価の手法を用いて行っておりまして、私どもとしては市場の実勢価格をできるだけ反映させるということでの最大限の努力と、そういうものを行っているところでございます。

 ただ、実際の取引では対象の土地の条件や売り急ぎあるいは買い急ぎと、買い進みといった土地取引の事情が、個別の事情が価格に反映されてまいりますので、実際に私どもも見てみますと、実際の取引では公示価格より高い場合もございますし低い場合もございますが、その中で収れんする目安としての価格として公示価格というものは実勢を反映したものになっていると、また、そういうふうに努力し、改善を重ねているということでございます。

 それから、そういう中で、今、池口委員御指摘のように、もう一つ、公示価格でそういう標準値というものを全国に三万一千地点ほど決めて、そこについていたしますが、その場合に、もう一つ、それでは見られない市場の動向としては、実際にその近辺でどれぐらいの取引が実際にあったのかとか、どういうその場合の傾向があるかとか、例えば面積のちっちゃい土地では割に高い形で売買があるけれども、ある程度大きいところではちょっと安くなるとか、あるところはまたその逆のケースとか、いろんなそういう微妙な動向というものがなかなか標準値では分かりづらいんではないかというようなことは、かねてから一つ御指摘いただいているところでございます。

 そういう中で個別の土地取引価格というもの、これ市場の生情報ということでございますけれども、これにつきましても提供していくと、収集し提供していくということは重要な課題だというふうに私どもは考えているところでございます。

 そういう観点から、昨年八月に取引価格情報の提供についてアンケート調査を行ったところでございます。その調査結果を見てみますと、こういう制度の導入自体については六〇%の方が賛成ということで、前向きの答えでございました。ただ、各論についてもうちょっと見ていきますと、やはり自分の取引が言ってみれば場所や名前まで知られてしまうということについては、それでも構わないという方は四〇%ぐらいでございまして、こういうことも頭に置いて今後やっていかなきゃいけないというふうに私ども考えているところでございます。

 そういう中で、本年三月十九日に規制改革推進三か年計画におきまして、この点につきましては十七年度に地価公示の枠組みの中で試行してみると、そのための仕組みを十六年度中に行うということが方向として示されております。私どもは、この閣議決定の趣旨に沿いまして、今後この問題について引き続き取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。以上でございます。

 

○池口修次君 今説明がありましたように、確かにどの値段で売った買ったというのは、個人情報の最たるものですから、なかなか難しいというのはよく分かるんですが、ただ、やっぱりこれから土地なり不動産を活発に市場の中で動かしていくためには、やっぱり正確な情報がないとなかなかそれに、まあ手を出すという言い方がちょっといいのかどうか分かりませんけれども、この市場に入っていくというのは非常に難しいというふうに思います。

 昔であれば、土地買ったら下がるなんということはあり得ないですから一番安心したものですが、今はまあそうでもないということの中で、どうやって不動産なり土地の売買の活性化をするかという面では大事な点であると思いますので、是非、更に突っ込んだ検討をお願いをしたいということと、そういう中でいろいろ地価の問題については問題、まあ問題と言っていいのかどうか、人によっては今の地価でいいかどうかという、地価表示の仕方でいいかどうかという、ある中で、今回、地域を拡大をするということになりますと、取引が、今回は市街化区域でなくて広げるわけですが、そこが、取引が活発であれば、場所であれば広げても問題はないということですが、広げるときにどこでも広げるということなのか、それからある一定の基準についてその地価を表示するということに拡大をするのか、この点を確認をさしていただきたいというふうに思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 今回、地価公示の対象区域を広げる理由でございますけれども、近年、道路網の整備や情報化の進展あるいは国民意識の多様化等を背景といたしまして、都市計画区域外で開発行為や建築行為というものが行われて、既存集落のほか、バイパス等の沿道、高速道路のインターチェンジ周辺等を中心に店舗やレストラン、住宅、オフィス等のいわゆる都市的土地利用がスポット的といいますか、局所的に行われるようになってきているわけでございます。

 こういうところでは、地価公示のねらいとしております宅地ないし宅地見込み地の取引というものもある程度行われているというのが現状でございまして、全体として見ますと、都市計画区域外の人口というのはむしろ減りぎみでございますけれども、しかしこういうところでの取引というのは、そんなに極端に急激に増えているということではございませんが、じわじわと増えていると、これが今の状況でございます。

 そのために私どもとしては、今回、都市計画区域外でも都市計画区域内と同様に、都市的な土地利用が行われて土地取引が相当程度見込まれる地域について地価公示を行えるということにしたいと思っておるわけでございます。そういうことで、土地取引の円滑化とか適正な地価の形成というものに資するようにしていきたいということでございます。

 ただ、実際に、それでは、そういうどこでも、じゃ、どんどん広げていくのかということでございますけれども、現在、都市計画区域外でのいわゆる宅地ないし宅地見込み地の取引というのは全体の土地取引のうちの一割ぐらいという形に、今、都市計画、地価公示でカバーできていないところが一割ぐらいございまして、そういうことを念頭に置いて地点を考えていきたいというふうに思っているところでございます。

 そしてまた、そういう場合にも、この法律を通していただいたら直ちに一割全部を、地点を配置するということではなくて、私どもの考え方といたしましては、従来の地価公示との連続性というのも配慮する必要があるし、それから既存地点についても極力集約再編してということで、全体として経費とかそういう面で過度な負担が生じないような効率的な配置をしながら、計画的に再編を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

 そしてまた、そういう場合に、もう一つ、今そういうところで実際取引があるところがあるということでございましたけれども、そういう目で見ますと、例えば最近そういう局所的な土地取引が行われるようなケースとして一番目立っているところというと、高速道路のインターチェンジとかそういうところになるわけでございますが、今私どもが把握しておりますところでは、都市計画区域外、いわゆる現在の地価公示で対象にできないようなところにインターチェンジというのが全体で一四%ぐらいということで、数にいたしますと百十二か所というふうに把握しております。この傾向はまた今後も出てくるということで、そういうところについて今回手を打ちたいということでのお願いでございます。以上でございます。

 

○池口修次君 私も広げなきゃいけない必要性はあるんだろうというふうに思いますが、冒頭から言われていますように、地価公示自体の、今の地価公示の中身自体もなかなか疑問を呈している人もおりますので、この辺を広げたために更に疑問の声が拡大をするということがならないようにお進めをお願いをしたいということと、残り時間余りなくなりましたんで、不動産鑑定評価法のところについて一、二点お聞きをしたいわけですが。

 この地価公示自体も不動産鑑定士の人の協力を得ながらやっているというふうに聞いております。一方で、なかなか不動産鑑定士のチャレンジする人がどんどん減ってきているんじゃないかという中で今回の制度の見直しが提案されているというふうに理解をしているんですが、元々不動産鑑定士、ある意味、公の部門で使われている地価公示、地価の評価についても携わっているわけですから、やっぱりある一定の人数は必要だと思いますし、一定の能力は当然備えていないと、人がいないと困るというふうに理解はしておるんですが、現在は鑑定士補の方を含めて九千人ぐらいということなんですが、国土交通省としては、実際に地価公示を算定するための人と、これからの不動産の取引等を考えてどのぐらいの人数の人がいれば、必要な人数をどの程度考えているのかというのをまずお聞きをしたいというふうに思います。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 不動産鑑定士と不動産鑑定士補の現在の登録人数というのは、今、委員御指摘のそういう数字だと思います。そして、この数字が不足、この人数が不足しているということが今回改正をお願いする動機とは私どもは考えておりません。

 ただ、問題は、実は司法試験とか、それから公認会計士試験なんかではむしろ受験者が増加しているという状況の中で、不動産鑑定士試験についてはこの三年間で受験者が五%ほど減っていると。こういう状況を分析していきますと、やはり資格、最終的に試験合格後、二次試験合格後、不動産鑑定士になるまでにインターン制度といいますか、徒弟制度的な期間があって、身分も不安定だとか、そういうようなことも原因として、それから時間とか経済的負担も大きいというようなことも原因としてあるんではないかというふうに把握しているところでございます。

 そういうことで、今回、簡素合理化をして、しかし技量は確実に習得させるという意味で、実務修習課程も充実させていこうということが今回の改正法のねらいでございますが、そういう形を取りまして、それではどういう、これからこの鑑定業界の現状を見てどういうことを考えているかということでございますと、まず量的には現在の実働レベルである程度確保を今後もできるんだろう、対応できるんだろうと思っておりますが、問題は、この不動産鑑定士という資格制度が昭和三十九年に始まった制度でございまして、ちょうどそのころに、昭和三十年代、昭和四十年代に資格を取られた方々が今五十代から六十代と。特に不動産鑑定士の年齢構成というのでは五十代が突出しているわけでございます。

 そうすると、この量的かつ技量のレベルを維持しながら世代交代をうまく図っていくためにはやはりこれからの、突出している五十代の方々がだんだんと引かれていくのをうまく対応できていくような、そういう意味で人材供給のすそ野を広げていく、それからまたどうしても司法試験や公認会計士試験なんかと大学生の学部とか領域というのが重なりますので、やはりそういう意味でも、そういうものの動向というものも見ながら魅力あるものにしていかなければいけないと、そういうことで今回こういう改正をお願いしたものでございまして、司法試験や公認会計士試験につきましては、聞くところによりますと人数を拡大することにねらいがあるということも聞いておるわけでございますけれども、不動産鑑定士の場合には量というよりはむしろ質、そして円滑な世代交代、そういうところにねらいを置いて今回改正をお願いいたしているところでございます。以上でございます。

 

○池口修次君 質問は以上ですが、やっぱりこの地価公示を本当に不信をある意味なくすということと、正確な地価表示をするための不動産鑑定士の人たちをどういう人になってもらうのかということは、公的部門の、ある意味税金にもかかわる部分ですから非常に大事な問題ですし、民間部門においても、やっぱりこれから、バブル期を過ぎて少し停滞をしてしまった不動産をどうやって動かしていくかというときには大事な、ある意味、不動産鑑定士というのは私は大事な人というふうに理解をしているわけですが、そういう意味で、かなり高齢だという話も、平均年齢が高齢だという話も聞いておりまして、やっぱり若い人がどんどん入ってくるようなことにしなきゃいけないというのはどの産業、どの業種においても私はそうあるべきだというふうに思っていますが、一方で、安易にしてちょっと資格としてどうかということが後々言われないような運用なりをお願いをしまして、時間になりましたので私の方は質問は終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

 

○弘友和夫君 公明党の弘友和夫でございます。

 建築基準法の一部を改正する法律案について少しお尋ねしたいと思うんですけれども、平成七年の阪神・淡路大震災、これは六千四百名の方が亡くなられたんですけれども、その大半は住宅の中で亡くなられておりまして、その当時、建築物の安全、安心の問題というのは非常な国民の重大な関心事でありました。

 それで、この建築物の安全、安心を考える場合に、欠陥住宅問題に代表されるように、まず、じゃ新築時のチェック、つまりフロー対策というのはどうであったかという論議がその当時ありまして、その検査率が約三割だと。これはひとつ何とかこれを上げていかないといけない。そしてまた、その途中で建築工事中の検査、いわゆる中間検査も導入すべきじゃないかとか、それから消費者の皆さんが安全、安心な住宅を選択するための基本的な枠組みとして住宅性能表示制度等も創設すべきだということで我が党も主張しましたし、いろいろな動きの中で、平成十年に建築基準法が大幅に改正されまして、中間検査の導入、そして建築確認検査の民間開放等の措置が講じられました。そしてまた、十二年には住宅品質確保法が制定されて住宅性能表示制度が導入されたと。

 こうした結果、完了検査の実施率は当時の三割から平成十四年度で約七割弱まで上昇しております。そしてまた、中間検査の導入につきましては約七割の特定行政庁で導入をされていると。住宅性能表示制度では、十五年度は全住宅着工の一割強となったわけでございまして、こうした面でフロー対策というのはかなり大きく進展してきたと。

 これについては非常に高く評価するものでありますし、またこれももっと進展させなければならないと、このように思っているわけですけれども、反面、フローからストックの時代というか、あの大震災のときも犠牲者の多くは現行の耐震基準を満たしていない既存住宅で亡くなっている。また、平成十三年九月の新宿歌舞伎町の雑居ビル火災、死者四十四人という大惨事が発生したわけですけれども、これも防火・避難基準を満たしていない既存ビルの問題点を浮き彫りにしたわけでございまして、また、こうした安全、安心の問題のみならず、高齢化への対応や環境問題、資源の有効活用という観点からも、ストックの有効活用、リフォームの推進というのは、国民生活を豊かにして、地球環境を守り、我が国経済を活性化する上でも極めて重要な問題であると考えるところでございますけれども、そうした建築物のストック対策の重要性に対して、石原大臣の基本認識をお伺いしたいというふうに思っております。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 弘友委員のお話にございましたように、フロー対策についてはかなりのことができてきていると私も認識をしておりますが、一方ストックに目を向けますと、個人の住宅の平均耐用年数がやはり短く、また防火対策、耐震対策についても、かなり劣化している。平均耐用年数、単純に比較できるかどうかは別として、イギリスでおよそ七十五年とか、アメリカで四十五年とか言われておりますが、日本は三十年ちょっとでございます。

 二〇〇七年でございますか、もう日本が人口の減少局面を迎えるということは、その急激な集中というものが一段落して、この減少局面へ移行し、少子高齢化、低成長、低成長というかその巡航速度が遅くなるということだと思いますけれども、環境の変化は、持っている者同士の結婚が、確率論からいうと家を持っている者同士の、多くなるわけでございまして、親御さんからその住宅の承継を期待するケースがこれからますます増えていく。しかしその一方で、さっき言いましたようにストックがお寒い状況でございますので、住宅の長寿命化を図るとともに、既存住宅の適切な保持、保全、その中にやはりさっき言ったような委員御指摘のその耐震性というもの、その耐震性をリフォームによって、実利はなかなかないわけですけれども、いざというときの備えとしてやっていくということをやらねばならないと思っております。

 この法案の中でも、既存建築物の中で多数の方が利用する、さっきからお話をさせていただいているホテル、病院、学校、共同住宅といったものについては勧告制度や罰則の強化を行うこととしておりますし、既存不適格建築物の改修を部分的でもいいですよというようなことによって、全体はすぐには良くなりませんけれども、できるところから良くしていくと、そういうことを今回やりまして、委員の御意見であるところのストックというものの質の向上というものに努めていきたいと考えております。

 

○弘友和夫君 今、大臣のお答えのように、今全体的な住宅というのはだんだん、もうほとんど満たしていると。欧米のように、耐用年数が日本の場合は三十年、欧米はもう何百年と続いているというようなことの論議の中から、中古住宅の流通を図るべきだとか、手を加えればだんだん、日本は築何年といったらもうそれは一切価値がなくなるという、それをやはり手を加えていけばむしろ価値が上がっていくというようなことにしていくべきだとかいう論議は今まで大変ありまして、だんだんその方向にはありますけれども。

 そういう中で、この耐震性、安心、安全というか、そういう部分も含めて、今例えば東海地震、東南海・南海地震が同時に発生した場合は死者二万八千人、経済損失八十一兆円という、こういう被害推定も出されているわけでございまして、今回これ上がっております法の改正によって、本当に既存の建物に対しましても安心、安全な建物にしていく必要があるというふうに考えておりますけれども、反対に、反対にというか、リフォームの問題、うちの神崎代表も代表質問で取り上げておりましたけれども、そういう安全の部分と、それから景気対策というか、例えば今耐震基準を満たさないものが千四百万戸だと先ほど言われておりましたけれども、一戸百万円ぐらいの耐震改修工事を行いましたら約十四兆円ぐらいの需要が見込まれると。それからまた、高齢者世帯の住宅をバリアフリー化するという、そういうリフォームをすれば約四兆円ぐらいになるんだということで、今新築がなかなか伸びない中で、そういう耐震だとかバリアフリーだとかそういうことに目を向けた改修工事をやっていけば非常に経済効果も波及効果も非常にあるという意味からも、是非政府としてもこれに対する助成、それから融資の金利の一層の引下げだとかいうような税の優遇措置など、リフォーム市場の整備というのをバックアップして強力に推進していただきたいと、こういうふうに思うわけでございますけれども、大臣の決意を伺いたいと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) この点につきましては、やってきている部分があります。しかし、不十分であるという御指摘があることも承知しております。

 例えば、耐震診断については二分の一補助をかなりの方々が御利用されておりますし、実際の改修の補助率は八%でございますが、まあ百万円で八万円でございますから、これじゃ足りないという御意見もありますが、実績としては十一億円、十五年度で十一億円程度の実績がございます。あるいは、住宅金融公庫を使っての低利のリフォーム資金の融資や、委員が御指摘されました税制上の優遇措置、こういうものをやってきておりますが、やはり経済性ということを考えますと、この分野は実は非常に、単純計算でも十四兆という御数字を弘友和委員お示しになりましたけれども、大きいような気がいたします。リフォームの整備、リフォーム市場の整備に向けまして、住宅の増改築にかかわる十年間の瑕疵保証制度ですか、の拡充というものも、普及というものもやっているところでございます。

 先ほども若干、御同僚の藤井委員との御議論の中でお話をさせていただいたんですが、建設業から転業でこのリフォーム市場にという方がかなりいらっしゃる。公共投資等々が抑制基調にある中で、財政事情の中でこういうことになっているわけですけれども、このリフォーム市場というものを活用することによって、雇用の面での雇用確保の拡大等々、様々な観点からのプラス面が期待されると思っております。

 リフォーム支援の普及充実を図るために、また、この市場の一層の整備に向けて頑張らせていただきたいと考えております。

 

○弘友和夫君 是非推進していただきたいなというふうに考えております。

 それで、今回の直接の改正とは結び付かないんですけれども、私は、大きな建築基準法の中における生活雑排水の問題というか対応というか、そういうことについてお伺いをしたいなというふうに思うんですけれども。

 二十一世紀は水の世紀だと、大変、去年も、去年だったか、京都で水フォーラム、世界水フォーラムというのも行われましたし、私たちの使える水というのはたくさんあるようでありますけれども、〇・〇一%しかないと。世界の人口の中の、六十三億人の中の十二億人が毎日飲む水に困っておられるという中で、幸い日本はまだそこまでないわけですけれども。昔は、水は安心、治安と水はただだみたいに思われておりまして、その水がだんだんだんだん汚れてきている。

 その水質汚濁の大きな原因が、今までは工場の廃液であってみたりしたんですけれども、これが私たちの炊事だとか洗濯、入浴などの日常生活に伴って排出される生活排水、これが大きな原因になっておるというふうに言われておりますけれども、大体どれぐらい、生活排水による汚染の原因というのはどれぐらいというのは分かりますか。これ通告しておったかな。

 

○政府参考人(南川秀樹君) 生活排水、大変汚濁発生負荷量の割合が多うございます。

 例えば、東京湾で申しますと、生活排水が全体の六七%、伊勢湾で五三%、瀬戸内海で四八%というデータを持っております。

 

○弘友和夫君 半分、五〇%ぐらいがもう今や生活排水だというふうに思うんです。そのために、それを処理するためには、公共下水道だとか農村集落排水事業又は浄化槽事業というのはずっとやられてきましたけれども、まだ七六%、残り二四%、約一千万世帯ぐらいがまだ処理をされていない水が流されていると。

 私は、建築基準法の関係で見まして、単純に思うんですけれども、家を建てるときにきちっと生活排水も処理をするという、こういうものがなければ、ほかはいろいろ細かく、壁はどうだとかいろいろこれありますよ。ところが、肝心の、今一生懸命国土交通省も環境省も日本の水をきれいにしようと、川や海をきれいにしようという施策をやっているわけですけれども、肝心のこの生活排水というのは家の中から出てくるわけですから、よそから出てくるわけじゃないんです。それに対する、建てるときに生活排水をきちっと処理をしておかないと建てられませんよぐらいな思想があってしかるべきだと、このように思うんですけれども、何か建築基準法にはないような気がするんですけれども、それについてはいかがでしょうか。

 

○政府参考人(松野仁君) 建築基準法の第一条で目的を定めておりますが、建築物の構造、設備等に関する最低の基準を定め、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的としている、こうなっております。

 現在までの考え方ですと、建築物の便所からの汚物を含む排水が例えば伝染病の原因となるというような、著しい健康上の被害を生じないように、便所については下水道への接続や、あるいは一定の汚物処理性能を有します浄化槽の設置等について基準を定めております。

 下水道が整備されていない地域におきます生活雑排水につきましては、平成十二年に浄化槽法の改正がございます。それから、基準法に基づきます浄化槽の技術基準の改正がございまして、新たに単独処理浄化槽というのは原則禁止になったという経緯がございます。

 新たに浄化槽を設置する場合には、合併処理浄化槽によって、し尿だけではなくて生活雑排水も処理すると、そういう仕組みとなっておりますけれども、くみ取便所の設置も基準法上は設置が可能でございまして、このくみ取便所の場合には生活雑排水が処理されずに放流されるという、そういう仕組みに今の基準法ではなっておりまして、御指摘のとおり、基準法ですべて生活雑排水が処理されるというふうな規制になっているというわけではございません。

 

○弘友和夫君 ですから、最初に申しましたように、基準法できちっとそれをやるのか、別の下水道法なり浄化槽法なりで、家はこう建てますよと。だから、排水の部分までは建築基準法できちっとやりますよと。そうじゃない、そこから先は、ただ下水道法なり浄化槽法なりでもって流せないと、広域のところには流せないというものがあればいいんですけれども、それがなかなか今言われたようにないというか。

 といいますのは、下水道の計画区域内、計画区域外は新たには単独は駄目になったわけですから、生活排水も処理をできる合併浄化槽という、これしかもう駄目なんですから。下水道の計画区域外は新たに建てるものはきちっと処理できるようになったわけですよ。肝心の計画区域内で、これいつに、計画区域ではあるけれども、いつに下水道が来るか分からないというのが一杯あるわけですよ、何年先になるのか。じゃ、その何年先になるのか分からないものに対して生活排水はそのまま流していいですよということであれば、むしろ計画区域であるために処理ができないということになるわけでしょう。これはどういうことなんですかね。

 

      政府参考人(松野仁君) 下水道の整備、言わば予定区域ですね、まだ整備されていないところにつきましては、浄化槽法上も必ずしも合併処理浄化槽でなくてもいいという考え方になっているかもしれませんが、一応建築基準法上は、現在では浄化槽の基準としては合併処理浄化槽ということに基準を定めておりまして、原則、浄化槽法も原則としては合併処理浄化槽にすべきだという考え方になったものですから、それに整合させるという意味で浄化槽は合併浄化槽というものを基準としてお示ししているということでございまして、その場合は、ですから生活雑排水も処理できるということでございますが、先ほど申し上げましたように、くみ取便所の設置も一応可能ということになっておりますので、その場合には生活雑排水が処理されずに放流されるということになってしまうということでございまして、ここら辺りにこれからの課題があるのかなというふうには考えております。

 

○弘友和夫君 ちょっと、要するに、計画区域外は今からは両方、生活排水も処理できる、合併処理浄化槽じゃないと駄目ですよというふうになったわけですね、浄化槽が。区域内はくみ取りでもいいですよと。じゃ、生活排水はどうするのかと。来るまではそのまま流していいですよということになっているわけです。それがまた七年以内に来ると、七年以内、以上たった、七年以内に来る可能性がないというものに対しては浄化槽を付けるときの補助金は付けていいですよと、こういうふうになっているんですけれども、七年以内の場合は補助金まで付かない。要するに、ずっとその間、下水道が何年になるか分からないけれども、それまでは全部垂れ流しておきなさいという方向性なんです、これは。

 だから、そこの考え方というのは、何年、もうそれは二、三年先に来るのがはっきりしていたら、それはまあ猶予期間であっていいかもしれないけれども、計画区域内というのは、日本全国全部計画していますから。それも見直しも余り行われずに、人口二、三千の村だとかなんとかでも下水道こうやりましょうという計画しているわけです。これ、いつ下水道が来るか分からない、だけれども計画区域内は浄化槽の補助金も付かないで、そしてずっと垂れ流しだと、こういうことになっているわけです。だから、むしろ下水道計画というのが、残り二四%を整備していく、処理をしていく、それに対して足かせになっているというか、というふうに考えるわけですよ。

 だから、これは是非この三者で見直しをすると、計画区域そのものを精力的に見直しをするということになっておりますけれども、本当にこの見直しをしていただきたいというふうに、その三者はというふうに思うんですけれども、それぞれいかがですか。下水道も含めて、環境省。

 

○政府参考人(南川秀樹君) 私ども環境省といたしましても、御指摘のとおり、下水道の整備が七年間見込まれないという地域につきましては合併浄化槽の補助の対象にしております。これにつきましては、七年というのは下水道の補助金と合併処理浄化槽の補助金の二重投資を避けるということでルールを作ったわけでございます。ただ、このルールを決めたのが平成の初めでございまして、相当状況は変わっております。よく関係者と相談をしていきたいと思います。

 また、下水道、全体の汚水処理施設の整備の計画でございます。これにつきましても、国土交通省などと相談の上でその見直しを今進めておりまして、今後ともそれを積極的に進めたいと考えております。

 

○弘友和夫君 三者で、農水省はあれですけれども、国交省はいらっしゃらないですかね。下水道部長は来ていないかな。分かりました。

 とにかく、きっちりとこの見直しをして、本当に下水道計画が生活排水をきちっと処理をするというものの足かせにならないように、足を引っ張ることにならないように是非してもらいたいと思うんですよ。いろいろまだこれについてはあるんですけれども、時間が余りありませんので。

 せっかく環境省が来られているんで。じゃ、その区域外のというか、単独浄化槽は今からできなくなったけれども、これの方が既存のやつが多い。さっきのあれじゃない、既存のやつが多いわけですね、七百万戸。合併処理浄化槽は二百万戸ぐらいです。これはどういうふうに考えられていますか。

 

○政府参考人(南川秀樹君) 御指摘のとおり、浄化槽は約八百八十万ございまして、六百八十万が依然として単独の処理浄化槽でございます。当然、委員御指摘のとおり、公共用水域への負荷ということでいいますと、単独が合併浄化槽の八倍ほどございまして、大変影響が大きゅうございます。そういう意味で、私ども是非これを、単独浄化槽を転換したいということで考えておりまして、単独浄化槽から合併浄化槽への改造、あるいは合併浄化槽の補助要件、そういったものを緩和いたしまして、何とかその転換が進むように努力をいたしているところでございます。

 今後とも、更に努力を続けたいと考えております。

 

      弘友和夫君 阪神・淡路大震災のとき、ライフラインがもう相当、ガス、水道、それから下水、大変な復旧するまで相当時間が掛かったと。浄化槽についてはほとんど被害がなかったというふうに聞いておりますけれども、それぞれそういうライフラインの被害状況、それから浄化槽について簡単にお願いします。

 

○政府参考人(尾見博武君) 阪神・淡路大震災におけるライフラインの被害の状況でございますけれども、まず水道でございますけれども、兵庫県、大阪府等の九府県六十八市町村の水道事業及び三つの水道用水供給事業の水道施設が被災しまして、約百二十三万戸が断水したということでございます。

 ガスにつきましては、大阪ガスの管内で約八十六万戸で供給が停止をいたしました。

 下水道関係の被害につきましては、大きいもので八つの処理場の処理能力に影響を生じましたほか、三百キロ余りの管渠についても被災をしておるということであります。

 これらのライフラインの復旧の状況でありますが、仮復旧も含めまして、平成七年、同じ年の五月までに復旧をしたというふうに承知しております。以上です。

 

○政府参考人(南川秀樹君) 浄化槽関係でございます。

 地元が調査しましたところによりますと、小型の合併処理浄化槽につきましては、二千五百五十五基のうち七基が破損ということで、破損率は〇・三%となっております。

 

○弘友和夫君 だから、私の考え方としては、個別に処理を、下水、生活排水だけじゃなくて、やはりそこから出たやつを処理をしていくという考え方が今から大事じゃないかなと。オンサイトというんですかね。ずっと川を経ていって最終的に処理をする、そうなってくると、その途中の、だから下水道区域内はもうほかのやつやってもろうたら予定が狂うから、だからさせないようにしているわけですよ。させないと言ったら語弊があるけれども。だから、そういうことをこれ改めてもらいたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、浄化槽、来られていますので。

 浄化槽の場合は個別処理だと、下水道は集団処理だと。個別処理と市町村型とかやっていくときに、二、三軒をつないでそこで処理をしたいという要望は一杯あるわけですよ。ところが、なかなか財務省だとか個別処理ということにこだわってできないというようなことも聞いておりますけれども、これ是非できるようにするべきじゃないかというふうに考えますが、いかがですか。

 

○政府参考人(南川秀樹君) 委員御指摘のとおり、現在私どもの補助要綱におきましては、その個別、一軒に一個の浄化槽を設置するということにいたしております。

 御指摘のとおり、その敷地、地形などの関係のそういった事情から、一軒一基が浄化槽が設置できないと、二戸以上の複数戸でまとめて浄化槽を設置したいという要望たくさん伺っております。こういったその地域の特殊事情に踏まえて何とか対応できるようにということで、関係者とよく相談をしていきたいと考えております。

 

○弘友和夫君 大臣、最後に、私は、これ建築基準法は先ほど分かりにくいという部分がありましたけれども、相当昔に作られて改正改正というふうにやってきていますんで、そういう環境という観点というのは非常に少ないんじゃないかなと。生活排水、トイレの方はあるけれども、生活排水にないとか、そういう、また生活排水はどこがそれは処理してもいいんですけれども、それ早くやるということも大事だし、安く、経済性、効率性を考えるというようなことが必要なんで、やっぱり話合いを進めていただいて、それを三省の、きっちり、早くこれは生活排水、汚れの原因の半分以上ですから、していただきたいなというふうに思いますけれども、最後に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 弘友委員と政府参考人の議論を聞かせていただきまして、その目指すべきは、できるところは下水道を整備するのにこしたことはないんですけれども、それまでの期間、生活排水が垂れ流しになり、建築基準法では必要最小限のことしか言っていないといったような問題が明らかになったと思いますけれども、やはりこれは、なかなか、出している方は自分たちがどれだけのものを出しているという意識がありませんけれども、それによって生態系がこれだけ壊れてしまうんだということを多く示すことによりまして、多くの方々が弘友委員と同じような立場に立ってやっていくことが望ましい。そのためにも、国土交通省ほか関係省庁と連携を取らせていただきまして、この問題の解決に努力をさせていただきたいと考えております。

 

○委員長(輿石東君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。

   午後零時九分休憩

     ─────・─────

   午後一時一分開会

○委員長(輿石東君) ただいまから国土交通委員会を再開いたします。

 休憩前に引き続き、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。

 

○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。

 今日は建築基準法の一部改定の関連で伺いたいと思います。

 最初、建築基準法に大変深く関連しております自動回転ドアの問題について最初に伺いたいと思います。

 もう御承知のように、三月二十六日に六本木ヒルズの回転ドア、これで六歳の子供さんが挟まれて死亡事故がありました。この問題で、私はその直後の三月三十日の委員会で、政府が責任を持って調査することと法整備をすることを要請いたしましたけれども、その後政府はどのような取組をしてきたのか、概要を御説明いただきたいと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) お答えいたします。

 六本木ヒルズにおきまして自動回転ドアで非常に痛ましい事故が発生いたしました。

 国土交通省といたしましては、このような重大事故が発生したことを重く受け止めまして、三月二十九日に、国土交通省及び経済産業省より、関係団体、主要メーカー各社に対し、設置実態の報告、当面の事故防止対策を要請いたしました。また、四月一日に、全国の都道府県に対し、大型の自動回転ドアを設置している建築物所有者への注意喚起、現地での使用状況等の点検、確認を行い、併せて国土交通省に報告するように求めたところでございます。

 さらに、国土交通省及び経済産業省の共同で自動回転ドアの事故防止対策に関する検討会を設置いたしまして、第一回を四月八日、第二回を五月七日に開催したところでございます。おおむね三か月程度で設計者あるいは管理者が守るべきガイドラインを整備することとしたところでございます。今後、六月中に検討会を二回開催いたしまして、六月末を目途に自動回転ドアの事故防止対策のガイドラインを整備する予定でございまして、併せてその普及により事故防止に努めてまいりたいと考えております。

 

○富樫練三君 専門家が集まって検討会を開いて、それで今後の対策を検討するというのはとても大事なことだというふうに私も思います。

 この点で、大臣に最初にまず伺いたいわけですけれども、この検討会の名簿を私も見させていただきました。利用者団体、利用者の代表と思われる方が全国の老人クラブとか子供関係とか障害者の問題とか、そういう関係の方々が三人いらっしゃいまして、業界代表と思われる方がほぼ九人ぐらいいるようであります。ほかに学者、それから行政関係のメンバーで構成されています。多くはメーカーや業界の代表のようです。

 もちろん、こういう方々の御意見を伺うことはとても大事だというふうには思いますけれども、ただ問題は、回転ドアが広がってきた、普及されてきたというのは、冷暖房対策などのビルの経済効率、このことが優先される結果としてこの回転ドアというのは普及されてきたわけなんですね。その結果、死亡事故も発生したわけです。したがって、この検討会では間違っても経済効率優先ということになってはいけないというふうに思うんです。

 この検討会では、まず人命第一と、そして特に高齢者と子供の安全性、これが最優先でなければならないというふうに思いますけれども、検討会に諮問というか、問題を投げ掛けて検討会の結果を受けて、これから物事を決めていこうというわけですけれども、最初に物事を提起する段階で、人命優先と高齢者や子供の安全、これ第一なんだということを明確に政府の側から検討会にはっきりさせるべきだろうと、そういうふうにしているだろうとは思いますけれども、この点について、大臣のまず基本的な考え方を伺っておきたいと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) この問題につきましては、三月でございますか、富樫委員が御質疑をされた話は覚えておりますし、改めまして、極めて痛ましい事故で、尊い六歳の溝川君が亡くなられたことに改めて冥福を、心から冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 委員の御指摘のとおり、利用者というか、利用をする中にあって危険性を感じるであろうユーザーの代表として、すなわち高齢者や子供さんの安全に対する視点が重要だということで、お三名の方を、私の方から事務局に指示をしてメンバーに加わっていただいたところでございます。

 これまで二回ほど検討会が開かれておりますが、その検討会の中で指摘された点につきまして私が感じましたことは、高齢者の皆様方にとりまして自動回転ドアというものは縄跳びに入るようなくらい怖くて、隣にほかの自動ドアを併設してほしいという御意見があったということ、さらには、子供さんの専門家の方の御意見でございますが、親の手を離れて行動するようになります実は三歳ぐらいの幼児の方に事故が多い、この手の事故が多い、こういう御指摘がなされたわけでございます。

 その観点からも、ただいま委員が御指摘になりましたような安全、安心ということを重点的に当委員会におきましても、委員長は直井先生でございますけれども、お取りまとめいただけるものと承知をしているところでございます。

 

○富樫練三君 検討会の途中までの議事録の要旨を私も読ませていただきました。それから、その中に今、大臣がおっしゃっていましたような、自動回転ドアというのは高齢者や子供にとって、あるいは足腰の弱い方々にとっては回っている縄跳びをくぐり抜けるようで苦痛であるとか、あるいは、障害者の立場から回転ドアの隣には必ず自動ドアを設置するようにお願いしたい、こういう意見も出されていました。

 それから、先ほど報告がありました全国の都道府県の調査、その結果を見ると、この間発生した主な事故二百六十四件、そのうち七三%が九歳以下と七十歳以上で占めているという状態であります。しかも、その中の重傷事故ということになると、九〇%が九歳以下と七十歳以上、こういうことでありますから、子供さんや高齢者が、この自動回転ドアというのはどんなに危険なのかということがもう一目瞭然であります。六本木ヒルズの事故の同じ月でありますけれども、三月の月初め、ドイツで空港で回転ドアによって一歳八か月の子供が挟まれてやはり死亡するという事故も発生しています。

 そういう点で、この回転ドア対策というのは極めて今緊急に大事な問題になっているというふうに思いますけれども、そこで伺いますが、床面積二千平方メートル以上の不特定多数の者の出入りする建築物にはバリアフリーを義務付けたハートビル法という法律が、新しい法律があります。今度の六本木ヒルズはこのハートビル法に言う円滑化基準に適合しているというふうに言われています。この円滑化基準には自動回転ドアに関する安全規定はありますか。

 

○政府参考人(松野仁君) ハートビル法では委員御指摘のとおり、延べ面積二千平方メートル以上で不特定多数が利用する建築物等に対しまして利用円滑化基準を満たす移動経路を確保するということを義務付けております。この利用円滑化基準で、出入口につきましては車いす使用者が容易に開閉して通過できる構造でなければならないとされております。

 御指摘の自動回転ドアを特別に取り出して扱いを特に定めているということはございませんが、この利用円滑化基準に適合するものは基準を満たす出入口として取り扱われるわけでございます。これまで自動回転ドアの危険性について十分認識されていなかったわけですけれども、今回の事故を受けまして、現在自動回転ドアの事故防止対策に対するガイドラインを策定中でございます。したがいまして、今後この結果を踏まえましてハートビル法の観点からも基準をどう考えていくべきか検討をしてまいりたいと思います。

 

○富樫練三君 ハートビル法で言う円滑化基準に適合しているんだけれども、死亡事故が発生したという問題なんですよね。しかも、適合しているこの六本木ヒルズのビルで、昨年オープンしたのが四月、それ以来毎月のように事故が発生しているというわけですから、この円滑化基準というのはどれだけの実効性があるかというところ、これは大変疑わしいと思うんです。

 今答弁ありましたように、円滑化基準には自動回転ドアとしての規定はないんですよね、出入口についての規定はあるけれども。そこで、改めて伺いますけれども、設計標準というのもありますね。この設計標準の中ではその自動回転ドア、回転ドアについてはどういう規定になっていますか。

 

○政府参考人(松野仁君) 建築設計標準というのがございますが、この中では自動回転ドアの設置について、回転ドアですね、回転ドアの設置について主たる出入口には設けないことが望ましい、もし設ける場合は回転ドアのみとすることは避けると。で、高齢者、障害者等が使いやすい引き戸、開き戸を併設することが望ましいということで、その回転ドアを禁止しているわけではございません。むしろ、全部回転ドアということではなくて、通常の引き戸、開き戸を併設することが望ましいという表現になっております。

 

○富樫練三君 もし回転ドアを付ける場合は引き戸式のドアもちゃんと付けなさいということなんだけれども、回転ドアを設けないことが望ましいということになっているわけなんですね。その中では、高齢者、障害者等が使いやすいような引き戸式のものも付けなさいと、こういうことなんですけれども、これはこのとおりやはりやるべきだろうというふうに思うんですが、ただし、この設計標準というのは法律上の強制力はありますか。

 

○政府参考人(松野仁君) この建築設計標準というものは、ハートビル法の平成十四年に改正をいたしましたが、そのときに併せて設計者向けの解説書として作られたものでございまして、法的な強制力を有するものではございません。

 

○富樫練三君 そうすると、ハートビル法に言う円滑化基準には合格していると、適合していると。しかしながら、事故が起こるような状況があって、その一方で回転ドアは付けない方がもう望ましいと、付ける場合はこういうふうにしなさいと、安全対策を作りなさいというふうに言っているものについては、これは別に守らなくても大丈夫だというところに、今の建築基準法に基づくビルの安全性の問題についての実は大きな落とし穴があるというふうに言わざるを得ないわけなんですね。

 そこで、この問題について最後に大臣に伺いたいと思います。

 建築基準法やハートビル法、ここで人命尊重第一と、安全第一ということで進めているとは思いますけれども、しかしそれは、きちんと担保されない限りこの安全性というのは守られないわけなんですね。そういう点から、一つはハートビル法に言う円滑化基準と設計標準ですね、これを抜本的に見直して、そして高齢者や子供たちが絶対に事故に遭わない、こういう基準をしっかりと作ることが大事だというふうに一つ思います。

 もう一つは、そういうふうに仮にしたとしても、ハートビル法というのは二千平方メートル以上で不特定多数の人たちが利用するビルの目的に沿ったものが対象になるわけなんですね。ですから、すべての建築物が対象になっているわけではありません。したがって、そういうハートビル法を強化すると同時に建築基準法の中にそういう規定をしっかり設けて、それを全部が守るようにする、義務規定としてきちんと位置付けると、努力義務ではなくて義務規定にするということが大事だというふうに思います。

 したがって、来月でしょうか、検討委員会の一定の結論が出てくると。先ほどの説明ではガイドラインのようなものを作ろうという話でした。私は、ガイドラインではやっぱり駄目なんだろうと思うんですね。きちんとして、全部が守るような義務規定にしなければならないと、その法律の規定が必要だというふうに思うんですけれども、大臣のこの点についての基本的な認識を伺っておきたいと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 先ほど政府参考人からも御答弁させていただきましたが、自動回転ドアの危険性について十分認識されていなかったというところが、そもそもの私は出発点のような気がしてなりません。早急に自動回転ドアの事故防止策というものを確立するために今検討会で御検討いただき、その一方で設計者や管理者の方が守るべきガイドラインの整備普及ということは、これは時間が掛からずすぐできますので重要であると考えておりますが、委員が御指摘されましたように六月末にガイドラインが、案が、検討会の案がまとめていただきますので、そこのお取りまとめをしっかりとそんたくして、法令につきましては将来的には改正も視野に入れて検討してまいりたいと考えております。

 

○富樫練三君 是非、法令を視野に入れてということでありますから、法整備を含めて早急に御検討をいただきたいと思います。

 次に、今回の建築基準法の改正による特例容積率適用地区、この問題について伺います。

 先ほども午前中の質疑でもありましたが、建築基準法というのはしょっちゅう改正されて、かつ、なかなか難しくて素人には分かりにくいという、それぞれ専門的な分野でありますので、そういう側面がありますのでなるべく分かりやすく、法律は国民ならだれでもが理解できる、こういうものにしていく必要もあると思いますので、これらも踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、今回特例容積率適用地区というのは、これまで商業地域、用途地域指定の商業地域で設けられていた特例容積率適用地域、これを商業地域以外にも広げる、こういうもののようであります。で、容積率を引き上げるということが適用されると、こういうことのようですけれども、どういう用途地域のところに、これが商業地域からどういうところに広げられるのか。それから、例えば東京でいうと、二十三区内でいうと、その広げられる可能性を持つ地域というのは、面積、二十三区の面積の大体何割程度に当たるのか、その辺はどうなっているでしょうか。

 

○政府参考人(松野仁君) 今回の法案におきましては、特例容積率適用区域制度を拡充いたしまして、容積移転が可能な用途地域として商業地域以外もその対象になるということでございます。

 ただし、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地及び工業専用地域を除くということでございまして、読み上げますと、第一種中高層住居専用地域、それから第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域と、この八つの用途地域においても適用できるということにするわけでございまして、この制度改正によりまして二十三区の中で対象となる、なり得る用途地域は約七七%でございまして、ただし、実際のこの適用につきましては公共団体の個別の都市計画で決定されるというわけでございます。

 

○富樫練三君 この特例容積率適用地区ということに指定されますと、一定の地域の中で、あるビルなり建物があって、その建物の仮に容積率がそこの地域は四〇〇%であったとしますね。もう一つ指定されたところも同じ仮に四〇〇%だとすると、これはこっちのビルは二〇〇%の建物が建っていれば、あと残りの部分というのは二〇〇%ありますよね、余分な部分が。この二〇〇%をこちらの方のビルの上にこれを持ってきて乗っけて、そうすると、ここのビルは四〇〇%であるものが六〇〇%まで、面積が同じならば、そういうことになると。こういうふうに容積率を移動させることができると。その代わり、こちらのビルは二〇〇%以上にはできないと、元々あったもの以上に高くすることはできないと。こっち側の方に譲ったわけですから、これはもう高くすることはできませんよと。こういう制度で、その地域が今までは商業地域だったものが、東京都二十三区でいうと七七%のところまでやろうと思えばできるようになると、こういう理解でよろしいですか。

 

○政府参考人(松野仁君) もちろん、ただいま申し上げましたが、対象となる用途地域というのは東京の二十三区の中の七七%ということではございますけれども、やはり都市計画として地域地区、適用地区の要件として、適正な配置、規模の公共施設を備えた土地の区域であることとか、高度利用を図るため未利用となっている容積の活用を促進する必要がある場合というようなことがございまして、直ちにすべて一〇〇%その地域が対象になるというわけではございません。ただし、そうした地域で、可能な地域でおっしゃいますような容積移転をした結果として、四〇〇%同士のところが結果として、二〇〇%上積みされて一方が六〇〇、一方が二〇〇ということがあり得ることはそのとおりでございます。

 

○富樫練三君 そうしますと、前に建築基準法が、私どもから言えば規制緩和だ、改悪だというふうに言ってきたんですけれども、例えば二年前の建築基準法の改正のときに日影規制が緩和されました。それまでは地盤面の高さ四メートルを基準にして日影図を作るというのが、今度は六・五メートルを基準にして作るということになりましたから、二階の窓までは日が入らなくてもいいですよと、ほぼですね、大体そんな感じになったわけですよね。つまり、二階以下は、人が生活する上で、生活できなくてもいいというか、業務用というか、そういうふうな用途で考えようということで、これが二十三区にもかなり広がったと、このときも伺いましたけれども。

 それで今回、この拡大する用途地域を商業地域から七七%まで広げるということなんですけれども、六・五メートルの地盤面で日影図を引けばいいというふうな、これを適用する地域、これと今回の広げたこの地域というのはほぼ符合するんですか。

 

○政府参考人(松野仁君) そもそも日影規制の対象地域というのが、商業地域は対象ではございませんし、工業地域が対象ではございません。したがいまして、完全に重複しているわけではございませんが、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、これらについてはおっしゃるような重複した地域になろうかと思います。

 

○富樫練三君 商業地域や何かで日影のことが余り問題にならない地域を除けば、ほぼ符合するということだろうと思うんですけれども。

 そこで、前回の建築基準法改正のときに斜線制限との関係で天空率という新たな概念が導入されましたよね。あのとき私、質問をしましたけれども、天空率を導入すれば、それは今までよりも高い建物が技術的には建てられる、この可能性が出てくるということを指摘しましたけれども、そこで、今日お配りした資料を、余りはっきりしない写真なんですけれども、この写真を見ていただきたいと思います。(資料提示)

 これは豊島区の上池袋の事例であります。この写真で見て、左側に小さいビルがあります。この左側の小さいビルは実はもう現に建っております。二年前に建った十二階建てのマンションです。このマンションの南側、この写真で見ると右側に二十二階建ての建物が、ある不動産の建て主で建設される計画です。これは、建て主の提供した資料によって完成予想模型を作ったものを写真にして、それを引き伸ばしましたので余りはっきりしない写真ではありますけれども、大体の状況はこれでお分かりいただけるかと思います。

 ここは、用途地域指定は全くこの二つのビルは同じであります。同じビルなのにどうしてこれほどまで高さに差が生まれるのかということで区役所に問い合わせをいたしましたところ、それは天空率の導入によってこういうことができるようになったんですと、こういう説明がございました。すなわち、建築基準法の改正によってこういうマンションが可能になったわけであります。

 十二階建ての方には二十六世帯、現在入居しています。ほとんど完全に日照を奪われてしまいます。ちょうどこれは、この写真は北側から撮ったところですから、この大きな高いビルがある方が南側と、こういうことになりますので、小さいビルはほとんど日陰になってしまうと、こういうことです。このマンションには子育て中の家族が多くて、生まれたばかりの子供さんを含む三歳以下の子供さんが九人もいるという状態であります。

 ここで大変率直に大臣に伺います。一日に一度も日が差さない家で高齢者が暮らすとか、あるいは赤ちゃんが育っていくということ、これが健康な生活だというふうに言えるのかどうか、大臣、率直にどう思いますか。

 

○政府参考人(松野仁君) お尋ねのケースでございますが、天空率の規定を適用したケースと聞いておりますが、平成十四年の建築基準法改正がございました。合理的、機動的な建築制限、都市計画制限を行う観点から、まちづくりのルールとしての集団規定にも規制の規定を導入するという考え方から導入されたものでございまして、現在の、現行の高さ制限と同等以上の市街地環境を確保できるというものとしてこの制度が導入されております。したがいまして、天空率を適用する建築物についても、現行の高さ制限が適用される建築物と同等の市街地環境の確保が可能なものと認識しております。

 御指摘のケースは、むしろ天空率の問題というよりも、元々容積率の高い商業地域で時折見られる問題でございまして、一般的にこういった高層の建築物が建つことが想定されている地域でございます。このようなことをもし防ぐとすれば、やはりあらかじめ紛争を防止するためのまちづくりのルールを定めておく必要があると思います。高さ制限を規定するとか、そういったことによって前もってルールとして定めておく必要があるのではないかというふうに考えております。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 一般論で恐縮でございますが、日が差さないより日が差した方がいいと思いますが、ヨーロッパの方は逆に、家は日が差さない方がよくて公園で日光浴と。個人によって感受性は違うんではないかと思っております。

 

○富樫練三君 大臣、全然違うんです、それは。ヨーロッパの方で日差しが非常に弱いところで、なるべく日光浴をしようと、外でね、いうところはありますよ。だけど、日が差さない方がいいなんというところはないんですよ。

 それから、今、局長から説明がありましたけれども、私は区役所に相談、問い合わせしたら、天空率というのが導入されてこういうふうになったんだとかね。そうじゃないと言いますけれども、それはまあどっちでもいいんですけれども、要するに規制緩和の結果がこういうふうになったんです。

 その上で、こういうふうに、高い建物と低い建物がこういうふうに物すごい接近してできるわけですよね。正に人間の生活というのがなかなかしにくいような状況が新たに生まれているということなんだけれども、そういう場合にはあらかじめそういう対策を打ったらどうだということを局長おっしゃいましたけれども、そういうことをやらなきゃならないような規制緩和というのは一体どういうものなんだということなんですよ。そういうことをやらなくてもちゃんと人間らしい生活ができるようなものを住宅地域には造るべきだろうというふうに、人が住んでいるところには造るべきだろうというふうに思います。

 その上でですけれども、今回、一団地認定制度というのも建築基準法の改正の中に入っています。この特例容積率適用地区とかあるいは一団地認定に係る改正というのは防災空地を確保するためだと、こういうふうな説明がございました。

 ここで伺いますけれども、容積率を移動する、こっちの方は防災空地にするんだと、こういうわけなんですね。その場合に、その防災空地になったところは空地にしておくわけですから更地にしなければならないのか。例えば、資材置場であるとか駐車場であるとか自転車置場であるとか、こういうものを造っちゃいかぬという規制は法律上ありますか。

 

○政府参考人(松野仁君) 今回は、都市計画法と建築基準法の改正でこういう制度ができたわけでございますが、防災上有効な空地を確保する、あるいは緑地を残す場合、それから古い伝統的建造物を残しながらほかの場所で高度利用するというようないろんなケースがございますので、必ずしも防災空地だけという限定は付けておりません。

 建築基準法は建築物に関する規制でございますから、空地に野積みの古タイヤがあるとかないとか、あるいは資材置場になるとか、こういったことを直接規制できる法律ではございません。もしそういったことが必要でありますと、その施設として都市緑地法によって緑化率規制の対象とするとか、あるいは市民緑地制度というものがあると聞いておりますが、そういったものを活用して確保、担保していくというべきものではないかと思います。

 

○富樫練三君 時間が参りましたので最後になりますけれども、要するに防災空地なんだけれども、そういう規定はないわけですから、例えば古タイヤ置場や何かになることもこれは当然あり得るということですよね。そこの自治体が公共空地として緑地、市民緑地とかに指定すれば別だけれども、そうじゃない限りは使い方は、民地でありますから自由だということですよね。高い建物ができないというだけであります。

 もう一つなんですけれども、どこでも大体防災空地が必要だというのは密集地帯であります。それは駅前とかそういうところに集中しているわけですね。そういう地域ともっと離れた住宅地などを一緒にして、先ほどの特例の容積率の地区に指定されれば、駅からある程度離れたところの住宅地の容積率を駅前のビルを造るところに、ここに持ってきてここを上げると、容積率を。元々、駅から一定程度離れた住宅地というのはそんな高い建物要らないわけですから。その容積率の売買、空中の売買が行われる、こういうことが可能になれば、実は本当に防災空地が必要な密集地帯が逆に高い建物がどんどんできる、こういうことを誘発することにもつながると。そうなったら、いわゆる住居系の用途地域指定をしてすみ分けをしようと、商業地域だ、工業地域だ、住居地域だというふうにすみ分けしようとやって用途地域を決めた意味が全くなくなっちゃうわけなんですね。

 ですから、そういう点からも今度の基準法の改定というのは重大な問題を含んでいる、環境を悪化させるものだということを指摘をして、時間ですので私の質問を終わります。

 

○松谷蒼一郎君 自民党の松谷でございます。

 わずかな時間でありますが、建築基準法並びに地価公示法、鑑定評価法改正法案について御質問をいたしたいと存じます。

 このたびの建築基準法の改正はなかなかいい改正だと私は思うわけでございます。若干先ほどの御質問の方と意見は違いますが、私はこういうような改正によって現実的な市街地の形成をやっていくということは非常に意味のある改正であるというように思います。

 ところで、建築基準法というのは建築物という不動産についてのいろいろな規制を行っているわけでありますが、そのためもあって、法律が改正をされていくそのたびにその新しい法律に適合をしない部分が出てくる、それが不適格となって残っていく。いわゆる既存不適格でありますが、その既存不適格の部分が例えば建ぺい率であったと、その建ぺい率についてこれを更に不適格の部分を増やすということは、これは明らかに法律上良くないと思うんですが、しかしながら、例えば建ぺい率の部分が不適格であっても、その他の部分までも規制がされて増築、改築ができないということはやっぱり不合理ではないかという思いがいたします。

 ただ、これは長い間の法律の非常に重要な部分でありますが、このことについて住宅局長、どういうようなお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) 今回の基本的な改正の考え方、特にまちづくりのルールの集団規定と単体の、個別の安全性の単体規定とございますが、単体につきましては、規定上、段階的に実施することができる、あるいは部分に適用するものを部分ごとに措置していただければいいというようなことがございますけれども、いわゆるまちづくりのルールの集団規定に関しましては、基本的に特に増改築という床面積が増えたりするということに関しては、基本的にここは相当積極的な建築アクションになりますので、これについては基本的にまちづくりのルールに合わしていただかなきゃいかぬということがございますが、大規模な修繕、模様替えに相当するような、言わばタイルの剥落しそうな、タイルが危険になってこれを改修するというようなことは、その安全性を考えると先行的にやっていただきたいということもあって、その点に関しては一般的なまちづくりのルールの方はそのまま適用除外するというようなことで、基本的にはそういう考え方を取ろうということでございます。

 

○松谷蒼一郎君 私はまちづくりのことを聞いているわけじゃないんだよ。建築基準法の第三条の既存不適格の問題について基本的な考え方を伺っているわけですよ。全然あさってのことを、それは想定問答はあるかもしれないけれども、想定問答どおりに質問するとは限らないわけですから、ちゃんと答えてもらいたいですよ。分かりますか、先ほどの質問。

 

○政府参考人(松野仁君) 基本的なところを御質問なさったわけでございます。

 委員御指摘のとおり、いわゆる既存不適格建築物というのは、従来、建ったときは適法に建った建築物でございまして、その後、新しいルールが、法改正があって、そのこと自体には適格でない、しかしながらそれは違反建築とは言わないということで法適用を直ちに求めるということはしないということでございましたが、少なくともこれまでの建築基準法の考え方は、増改築あるいは大規模な模様替え、修繕、そういった行為をするときには最新の規定に適合していただくという基本的な考え方を持ってきたわけでございます。

 

○松谷蒼一郎君 まあ、よろしいでしょう。

 とにかく建築基準法の考え方としては、違った項目についての不適格部分があっても他の項目について増改築を認めないというような規定になっていたわけですね。しかし、今回の規定によって、若干それをある部分については緩める、現実に即してやろうということですから、そういう意味では、法律の今までのきちっとした体系の中では若干踏み出すところがあるかもしれませんが、現実には私はなかなか評価すべきところがあるんじゃないかというように思うんです。

 そこで、まちづくりの話に来るわけですよ。これからまちづくりです。

 そのまちづくり、市街地が非常に空洞化して、中心市街地が空洞化している、それを何とか活性化しようと、そういうような観点からも今回の法改正というものは大きな趣旨、意図があったのかどうか、それについてお答えをいただきたいと思います。

 

○政府参考人(松野仁君) まちづくりに関してでございますが、例えば先ほども申し上げましたように、用途変更を図る、いわゆるコンバージョン、それから、先ほど申し上げましたが、大規模な修繕、模様替えといったことに関してはある程度の弾力的な取扱いをすることによって、都市における建築活動を弾力化する、やりやすくするという必要があるということで今回の改正をしたわけでございまして、例えば用途変更、コンバージョンでございますが、これは増改築を伴わない場合と伴う場合がございますけれども、増改築を伴わない場合につきましては、耐震基準そのものは単なる用途変更ですと求めておりませんが、防火・避難関係につきましては、用途によっては最新基準に適合するということが必要になります。その場合に、防火・避難につきましては一つの独立の単位というのがございますので、その当該、着手する独立部分のみを最新の基準に合わせていただければいいというようなことも措置しております。

 また、増改築を伴う場合につきましては、特定行政庁の認定を得て、例えば取りあえず耐震改修をする場合、その後、防火・避難改修をするといった段階的な改修が可能となる措置を講じておりまして、こうしたことを通じて都市の建築活動もある程度認められるものが出てくるというふうに考えております。

 

○松谷蒼一郎君 このたびの基準法の改正で、現実に即応して既存不適格の規定を若干緩和をするというその方向は評価できるんですが、やはり中心市街地の活性化あるいはまちづくりを積極的に行うためには別途のいろいろな、財政措置も含めた支援措置というのが必要じゃないかと思いますが、この点についてはいかがですか。

 

○政府参考人(松野仁君) 御指摘のとおり、今回のやはり建築基準法の改正だけではなかなか都市の活性化、特に地方都市の活性化、難しい部分があろうかと思います。

 中心市街地でも人口が減少しているというようなケースもあろうかと思いますが、今回の措置と併せて、援助措置としては、従来より市街地再開発事業あるいは優良建築物整備事業というようなものがございますが、今年度からまちづくり交付金というものが創設されました。こういった、弾力的にいろんな分野のものに使える制度を駆使していただいて、中心市街地の活性化等の都市の活性化に役立てていただければというふうに考えております。

 

○松谷蒼一郎君 若干視点を変えますが、耐震改修の点につきましても、今回の法改正で特に手当てをした規定というのがありますか。

 

      政府参考人(松野仁君) 耐震改修についての助成措置でございますか。

 

      松谷蒼一郎君 いやいや、規制の緩和。

 

○政府参考人(松野仁君) 規制の緩和。耐震改修についてでございますが、通常、これはちょっとした工事でございますと、ちょっとした修繕、あるいは少し規模が大きくなりますと大規模な修繕というようなことになろうかと思います。

 これにつきましては、ある程度段階的にほかの規定と併せて実施していただけるというケースも想定いたしましたし、ただし構造、耐震改修、構造の関係の規定でございますから、一体の構造としては一つの単位として考えていかなければいけませんので、その増改築する部分だけ構造的に対処すれば済むものでないということもございますので、一つの、一体の、一つの単位と見られるもので、独立してエキスパンションで離れているようなケースは別の扱いをしていただいても結構ですが、一体となっているものについては、その場合は増改築部分と一緒に、その残っている一体のものを改修していただくということになろうかと思います。

 

○松谷蒼一郎君 既存不適格の建築物があって、これを耐震改修をした方がいい、すべきである、ただ既存不適格であるから増改築が難しいと、こういった場合にどういうような規定を補完することによってその耐震改修が可能になるかと。その問題についていかがですか。

 

○政府参考人(松野仁君) 既存不適格だから難しいけれども、いわゆる増改築をされるというケースでございましょうか。

 増改築ですと、やはり単なる大規模な修繕、模様替えではございませんので、一つの単位として規定を満たしていただく必要がございますので、当然、その集団規定の方も満たしていただかなければいけませんが、増改築ということになると、しかるべき適合をさせていただくということになろうかと思います。

 

      松谷蒼一郎君 じゃ、大規模な修繕、模様替えについては、今回の規定というか現行法においても手当てをされている、耐震改修についてもということですかね、増改築は別にして。もちろん集団規定は別ですよ。

 

      政府参考人(松野仁君) やはり、特に増築というようなかなりのアクションを伴うものになりますと、耐震改修のような構造に関する規定に関してはそう簡単には緩和できることではございませんので、そこはある一定の基準を満たしていただくことが必要になるというふうに考えています。

 

      松谷蒼一郎君 それでは、別の項目に移りますが、定期報告制度について伺いたいと思いますが、定期報告を怠ったりあるいは虚偽の報告をするような悪質なケースの場合ですね、こういうような場合に、今回の改正によって国としてどのような措置を講じることができ得るようになったんでしょうか。

 

○政府参考人(松野仁君) 定期報告を怠ったりあるいは虚偽の報告をするというようなケースがあるかもしれませんが、今回法改正をいたしましたが、定期報告が一向に出てこないというような、あるいは虚偽の報告の疑いがあるという場合には、従来できなかった立入検査をすることができるようにしております。

 また、従来、建築主に対して報告を求めるということでございましたが、その調査、検査を行いました一級建築士の専門家にも詳細な報告を求めることができるようにしたと。それから、定期報告の内容そのものに虚偽がある場合等の罰則を引き上げるというような措置を講じて、こういった定期報告がちゃんと出てくるというような措置を講じたところでございます。

 

○松谷蒼一郎君 定期報告と関連するんですが、違反建築物の率、いわゆる違反率は、このところ、一番新しい資料としてどのようになっておりますか。

 

○政府参考人(松野仁君) 違反建築でございますが、最近のデータによりますと、違反建築が平成十四年度で八千二百七十六件という数字が把握されております。

 

○松谷蒼一郎君 毎年八千件余りが違反であると。それは増えているのか減っているのかちょっと別として、それは建築物ですからずっと積み重なっていくわけですね、暦年で毎年毎年。

 したがって、やっぱり違反の率は非常に、前からそうですが、多いというように思いますが、この違反建築物の是正について、これを、毎度言われることですが、きちっと徹底をしてもらいたいと思いますが、大臣の所信についてお伺いをいたしたい。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 松谷委員の御指摘のとおり、違反の是正の効果というのは数字を見る限りやっぱり十分だとは言えないと思います。

 今回の改正案では、ですから、立入検査権限を認めて違反の実態把握を的確にできるようにしたり、さらには耐震とか防火など、多数の方々が利用して生命に関係あるようなところについては是正命令違反に係る法人罰を作ったり、罰則を最高一億円まで引き上げて抑止力を持たせております。この結果をしっかりと見守りたいとは思うんですけれども、やはり毅然たる態度で臨むということが重要なのではないかと思っております。

 

○松谷蒼一郎君 次に、地価公示法、鑑定評価法改正法について質問いたしたいと思いますが、平成十六年の地価公示によりますと、東京都心とその周辺では下げ止まり傾向があると言われておる。しかしながら、他の都市では相変わらず厳しい状況にある。この地方の地価の下げ止まりに向けてどのような対策を考えておりますか。

 

○政府参考人(伊藤鎭樹君) 最近の地価の動向でございますけれども、今、委員御指摘のとおり、平成十六年度地価公示によりますと、東京都心とその周辺で下げ止まりの傾向が強まり、その傾向は札幌、名古屋等地方の中心都市の一部にも現れておるということで、私どもは変化の兆しも見られるという認識に立ってございます。

 こういう変化の背景でございますが、一つには、こういうところでは不動産証券化等の進展など、新しい土地取引の形態というのも活発になってきておりまして、全体として個別の取引件数も含めて土地市場の活性化ということがうかがえるわけでございます。そしてまた、同時に、そういう中でこの十三年、全国平均でいきますと下落という傾向が続いているわけでございますが、そういう中で、不動産市場自体が従来の資産性を重視する市場から収益性や利便性を重視する市場へと構造変化が起きているということもあると思っております。このような流れの中で、最近、東京都心部等を中心としたところで変化の兆しが出たということだと思っております。

 しかしながら、一方、地方圏につきましては、今年の地価公示を見ますと、商業地で昨年と同じ下落幅となったものの、平均でございますが、住宅地では下落幅がまだ拡大しているという状況でございます。

 私ども、今後の取組の基本の認識でございますけれども、地価の動きにようやく変化の兆しが見られた、こういう時期こそ一番大事であるということで、これまでの施策も検証し、改めて検証し、そしてまた再構築していく、そういう転換点に立って考えていかなければならない、取り組んでいかなければならないと思っているところでございますが、そういう中で、一つは、やはり不動産市場の構造変化ということを踏まえますと、地方も含めましてやはり土地の利用価値を高めていくような取組、これが一つ重要なことかと思っております。そして、もう一つが、不動産市場のこういう構造変化に合わせた条件整備ということだろうと思っております。

 そのような観点で、まず土地の利用価値を高めるという点では都市再生法という形で都市を中心に取り組まれてきたわけでございますけれども、今般、まちづくり交付金の創設と、地方でのまちづくりへの取組ということを支援する体制も都市再生法の改正というものを通じて強化していただいたわけでございます。

 そしてまた、土地市場の条件整備ということでございますけれども、その一環であります土地税制について申しますと、今年度の税制改正におきまして、かねてからの懸案でございました個人の土地譲渡益課税の税率を株式など他の資産とのバランスを勘案した税率、すなわち二六%から二〇%に下げて、しかも恒久化措置として行われるということになったわけでございます。これは今後の地方も含めた土地市場の、土地取引の活性化ということには効果があるんではないかというふうに私ども考えているところでございます。

 それと併せまして、現在御審議いただいてございます地価公示法、不動産鑑定評価法の改正というようなこと、そしてまたそういう土地取引の円滑化ということでのベースになるものとしての地籍整備、こういうようなところについての取組ということについてもより一層努力していきたいと思っております。

 そういうことの施策を通じまして、地方におきましても土地取引を活性化し、現在東京都心等で出てきております変化の兆しというものが地方にも及んでいくように、広がっていくような、そういうことについて引き続き取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

 

○松谷蒼一郎君 大変懇切丁寧な御答弁をいただきましたが、もう少し簡潔に、明確に答弁をしていただきたいと思います。

 ところで、今答弁の中にありましたまちづくり交付金についてでありますが、大臣に伺いたいんですが、このまちづくり交付金、約二千億ぐらいあるんですかね、今年度。これの活用について、やはり大都市だけでなくて、できるだけ地方都市の再生に向けてその交付金を活用していただきたいというように思います。

 これについて、大臣の所見を伺いたいと思います。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 今年度の予算では千三百億強、計上させていただいておりますが、これは都市、地方問わず、やる気のある、そしてすばらしいアイデアのもの、今募集中でございまして、五月ぐらいの末日を締切りにさせていただきまして、六月には具体的な箇所付けも発表させていただきたいところでございますが、もう既に三百件近くの市町村からの御要望が出てきておりまして、これを開かれた形で透明性を持って決定させていただく。その選定過程というものも透明性を高めていきたいと思っています。

 五月十四日がたしか締切りだったと思いますので、まだまだ御応募なさっていなくてもアイデアお持ちの方々は是非、あと一日しかございませんけれども、御応募のほど、お願い申し上げたいと思います。

 

○松谷蒼一郎君 以上で終わります。

    ─────────────

○委員長(輿石東君) 委員の異動について御報告いたします。

 本日、森本晃司君が委員を辞任され、その補欠として山口那津男君が選任されました。

    ─────────────

○委員長(輿石東君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。

 これより両案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

 

○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表いたしまして、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。

 本法案には、地下室マンションの規制や既存不適格建築物の増改築対策が入っています。これらは住民の切実な要望に基づく措置であり、一定の評価はするものです。しかし、以下の理由により、本法案に反対をいたします。

 反対の理由は、特例容積率適用地域の拡大などにより、居住環境の破壊が進められるからです。従来、商業地域だけに限定されていた特例容積率適用地域を第一種・二種中高層住宅専用地域や第一種・二種住居、準住居、近隣商業、準工業地域にまで拡大することになります。これによって従来の容積率の二倍近い容積の建築物が出現します。一団地認定制度も、やはり二倍近い容積を持つ建築物が建てられることになります。

 一九九八年、二〇〇二年の建築基準法の連続的改定で、日影規制や天空率による道路斜線制限の廃止など、建築物の高層化を促す規制緩和が行われました。これに加えて今回の高容積化を認める改定が行われれば、住居地域の中に住環境を破壊する高層の建築物ができてしまいます。これでは何のために住居系の用途地域を指定したのか、全く意味がありません。

 政府はこれらの制度改正の理由を防災空地を確保するためと説明していますが、容積率を移転してできた空き地を資材置場などの他の用途に使用してはならないという規制は全くありません。そして、この制度によって容積率の売り買いが行われることはあっても、防災空地ができるという保証はどこにもありません。

 以上、健康的な住環境を守ることは本当に建築基準法の基本的な目的であることを改めて強調いたしまして、私の反対討論を終わります。

 

○委員長(輿石東君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。

 これより採決に入ります。

 まず、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の採決を行います。本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(輿石東君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

 この際、池口君から発言を求められておりますので、これを許します。池口修次君。

 

○池口修次君 私は、ただいま可決されました建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。

 案文を朗読いたします。

    建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一、個人住宅の耐震化をはじめとする既存建築物の安全・衛生に係る性能の確保を早期に促進するため、簡易・安価な診断・改修手法の開発、補助・融資・税制等支援制度の普及・充実を図るとともに、住宅所有者等が信頼して利用できる総合的な相談体制の整備等に努めること。

 二、著しく危険又は有害となるおそれがある既存不適格建築物に対する勧告及び是正命令制度の創設に当たっては、適時適切に勧告及び是正命令が行われるよう、具体的な勧告基準、是正命令基準を定めるとともに、特定行政庁に対し必要な助言・援助等を行うこと。

 三、不特定又は多数の者が利用する建築物の定期報告制度については、未だ多くの建築物において定期報告がなされていない状況にあることから、定期報告率の向上と実施内容の充実に努めること。

   また、建築物の利用者が定期報告の有無等につきチェックできる仕組み、定期報告を怠っている悪質な所有者等に関する情報公表制度等を早急に検討すること。

 四、中間検査及び完了検査の実施率の一層の向上を図るとともに、消防・警察部局、NPO等と連携しつつ、違反建築物の把握とその是正のための対策が確実に行われるように努めること。

 五、特例容積率適用地区制度については、近隣紛争の発生を防止し、良好な街なみや都市景観を維持するため、地域住民の意見が十分に反映されるよう、特段の配慮をすること。

 六、二以上の工事に分けて行う既存不適格建築物の増築等に関しては、全体計画の達成が一定期間内に確実に行われるよう、特段の配慮をすること。

 七、自動回転扉等については、国民が安心して利用できるよう、その安全性の確保に十分留意し、安全基準及び管理体制の一層の整備に努めること。

   右決議する。

 以上でございます。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 

○委員長(輿石東君) ただいま池口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。

 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(輿石東君) 全会一致と認めます。よって、池口君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。

 ただいまの決議に対し、石原国土交通大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。石原国土交通大臣。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議の既存不適格建築物に対する勧告基準の制定などの趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を始め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。どうもありがとうございました。

 

○委員長(輿石東君) 次に、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(輿石東君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。この際、池口君から発言を求められておりますので、これを許します。池口修次君。

 

○池口修次君 私は、ただいま可決されました不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。

    不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一、地価公示制度については、土地取引及び固定資産税等の課税など、国民生活に深く関わることにかんがみ、その公正性及び透明性を確保し、公示価格への信頼が損なわれることのないよう一層の努力を払うこと。

 二、不動産鑑定士等の業務の遂行に当たっては、業務が適正に行われるよう努め、依頼者や第三者の信頼の保護に万全を期すこと。

   また、高度な知識・経験・判断力が体得できるよう充実した研修機会が確保され、多様化・高度化している不動産鑑定評価のニーズに通用し得る専門的な能力が養成されるよう配慮すること。

 三、不動産鑑定士試験制度が簡素合理化されることにかんがみ、その管理・運営に当たっては、優秀な資質を有する人材を将来に渡って確保するとともに、実務修習の充実を図りその能力の習得について適切に対応すること。

 四、今後の地価公示制度については、官民の不動産取引価格情報の公表への取組みの動向等を勘案しつつ、見直しを含め、その在り方についての検討を行うこと。

   右決議する。

 以上でございます。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 

○委員長(輿石東君) ただいま池口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。

 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(輿石東君) 全会一致と認めます。よって、池口君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。

 ただいまの決議に対し、石原国土交通大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。石原国土交通大臣。

 

○国務大臣(石原伸晃君) 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議の不動産鑑定士等の能力養成の配慮等の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長、理事を始め委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

○委員長(輿石東君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(輿石東君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

    ─────────────

○委員長(輿石東君) 次に、高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案、以上四案を一括して議題といたします。

 政府から順次趣旨説明を聴取いたします。石原国土交通大臣。

 

○国務大臣(石原伸晃君) ただいま議題となりました高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団の道路関係四公団につきましては、民間にできることは民間にゆだねるとの原則に基づき、およそ四十兆円に上る有利子債務を確実に返済し、真に必要な道路を、会社の自主性を尊重しつつ、早期に、できるだけ少ない国民負担の下で建設すること等を目的として、平成十七年度中に民営化を実施します。

 あわせて、高速国道の整備計画区間のうち未供用区間に係る有料道路事業費を当初のおよそ二十兆円から最大で十兆五千億円程度にほぼ半減するとともに、高速道路に係る有利子債務は、民営化時の総額を上回らないとしました。

 これらの四法案は、道路関係四公団の民営化を実現するため、提出することとしました。

 まず、高速道路株式会社法案の提案理由について御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団を民営化し、高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理等を効率的に行わせるため、東日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社を設立するものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、会社の事業の範囲として、有料道路事業のほかサービスエリア等の関連事業等を実施できることとしております。

 第二に、各会社が原則として事業範囲とすべき高速道路を定めております。

 第三に、会社は、有料道路事業を営もうとするときは、あらかじめ、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と、貸付料等を内容とする協定を締結することとしております。

 第四に、政府等は会社の総株主の議決権の三分の一以上の株式を保有することとしております。

 第五に、会社は、代表取締役の選定、事業計画等について、国土交通大臣の認可を受けるとしております。

 次に、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化の円滑な実施を図るため、高速道路に係る道路資産の保有及び会社に対する貸付け、公団から承継した債務その他の高速道路の新設等に係る債務の早期の確実な返済等の業務を行う独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構を設立するものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、機構は、高速道路に係る国民負担の軽減を図るとともに、会社による高速道路に関する事業の円滑な実施を支援することを目的とし、その業務の範囲を定めております。

 第二に、機構は、会社と、全国路線網、地域路線網又は一の路線に属する高速道路ごとに、協定を締結し、国土交通大臣の認可を受けて、貸付料、債務返済計画等を記載した業務実施計画を作成するとしております。

 第三に、機構は、会社が建設した道路資産が機構に帰属するときに、会社が建設のために負担した債務を引き受けるとしております。

 第四に、機構が会社に道路資産を貸し付ける際の貸付料の額は、債務の返済に要する費用等を貸付期間内に償うものとしております。

 第五に、機構は、民営化から四十五年後までに承継債務等の返済を完了させ、解散するとしております。

 次に、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化に伴い、道路関係法律について所要の規定の整備等を行うものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、道路整備特別措置法の改正であります。

 従来の公団に対する施行命令方式等を廃止し、会社は、機構と協定を締結し、工事の内容、料金等について国土交通大臣に事業許可を申請して事業を実施できるとしております。

 また、会社が徴収する料金の額は、道路資産の貸付料及び会社の維持管理費を料金徴収期間内に償うものとし、その徴収期間の満了日は、民営化後四十五年を超えないものとしております。

 さらに、会社が建設する高速道路の道路資産は、原則として、工事完了後は機構に帰属し、料金徴収期間満了後は道路管理者に帰属するとしております。

 第二に、道路法及び高速自動車国道法の改正であります。それぞれ、自動車専用道路及び高速自動車国道と連結することができる施設として、通行者の利便に供するための休息所、給油所その他の施設等を追加する等としております。

 次に、日本道路公団等民営化関係法施行法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化等に伴い、さきの三法の施行に関し、所要の経過措置を定めるとともに、関係法律の廃止及び改正を行うものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、会社及び機構の設立に関し、会社の設立委員の任命その他所要の手続を定めております。

 第二に、公団が行っている業務及び公団の権利義務について、会社及び機構への適正かつ円滑な引継ぎを図るため、所要の措置を定めております。

 第三に、現在公団が行っている道路事業につきまして、その引継ぎに関する事項を定めております。供用中の高速道路については、当該高速道路を事業範囲とする会社が管理及び料金徴収を行うとし、建設中又は調査中の高速道路については、国土交通大臣が会社と協議して、会社が建設を行うべき高速道路を指定できるとしております。

 第四に、日本道路公団法等の五法律を廃止するほか、関係法律について所要の改正を行っております。

 第五に、この法律は、平成十八年三月三十一日までの政令で定める日から施行し、会社及び機構は、この日に成立するとしております。

 以上がこれらの四法案を提案する理由でございます。

 これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

○委員長(輿石東君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。

 四案に対する質疑は後日に譲ることといたします。

 本日はこれにて散会いたします。

   午後二時十七分散会

 

 

第159回国会 本会議 第21号 平成十六年五月十四日(金曜日) 午前十時一分開議

    ━━━━━━━━━━━━━

○議事日程 第二十一号  平成十六年五月十四日  午前十時開議

 第一 常任委員長辞任の件

 第二 薬剤師法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案

(内閣提出)

 第四 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案

(内閣提出)

 第五 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ━━━━━━━━━━━━━

○本日の会議に付した案件

 一、日程第一

 一、常任委員長の選挙

 一、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(趣旨説明)

 一、日程第二より第五まで

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。

 日程第一 常任委員長辞任の件

 内閣委員長簗瀬進君、財政金融委員長平野貞夫君、国家基本政策委員長角田義一君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。

 いずれも許可することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) この際、欠員となりました常任委員長の選挙を行います。

 つきましては、常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。よって、議長は、内閣委員長に和田ひろ子君を指名いたします。

   〔拍手〕

 財政金融委員長に円より子君を指名いたします。

   〔拍手〕

 国家基本政策委員長に藁科滿治君を指名いたします。

   〔拍手〕

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) この際、日程に追加して、

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。金子国務大臣。

   〔国務大臣金子一義君登壇、拍手〕

○国務大臣(金子一義君) このたび政府から提出いたしました構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 構造改革特区は、地方や民間が自発的に構想を立案し、それぞれの地域の特性に応じた規制の特例を導入することにより、構造改革を更に加速させるための突破口となるものであります。

 平成十四年の第百五十五回国会において御審議いただき成立いたしました構造改革特別区域法においては、同年八月に実施いたしました提案募集に基づき、構造改革特別区域において講ずることのできる法律事項に関する規制の特例を定めました。さらに、昨年の第百五十六回国会においては、規制の特例措置を追加する構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を御審議いただき成立しております。

 政府においては、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの理念の下、構造改革を推進しているところでありますが、構造改革特別区域推進本部においても、多様な特区の実現に向け、その後も引き続き全国から提案募集を行い、新たな規制の特例措置を決定してまいりました。これら本部で決定した特例措置のうち、法律事項について構造改革特別区域法に新たに追加することを通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図るため、この法律案を提出する次第であります。

 この法律案の概要を申し上げますと、第一に、医療法等の特例として、認定構造改革特別区域において、株式会社が自由診療で高度な医療の提供を目的とする病院又は診療所を開設することができるものとしております。

 第二に、教育職員免許法の特例として、認定構造改革特別区域においては、都道府県教育委員会が行っている特別免許状の授与について、市町村の教育委員会も行うことができるようにすることとしております。

 第三に、漁港漁場整備法等の特例として、認定構造改革特別区域においては、国又は地方公共団体が行政財産である特定漁港施設を貸し付けることができることとしております。

 第四に、狂犬病予防法の特例として、認定構造改革特別区域を設定した市町村の長は、狂犬病予防員の任命、捕獲人の指定、犬の抑留等について、必要な経費等を自ら負担することを条件に行うことができるとしております。

 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。松井孝治君。

   〔松井孝治君登壇、拍手〕

○松井孝治君 私は、民主党・新緑風会を代表して、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案につきまして、関係大臣に御質問いたします。

 構造改革特区が誕生して、先月二十一日で一年を迎えました。この一年で全都道府県のすべてに計三百余りの特区が誕生いたしました。これまで各省庁や業界団体の抵抗で実現することが難しかった規制改革を官邸・内閣官房主導で突破していく特区の姿勢は、意欲ある民間企業や地方自治体に声を上げる勇気を与え、評価できる点も多々あったと存じます。しかしながら、この間、特区制度についての問題点も種々浮かび上がってまいりました。

 以下、具体的に指摘させていただきます。

 第一に、特区に対する政府の姿勢の後退です。

 特区法の制定時には十四あった法律事項が、昨年春の改正時には七、今回は四です。これまでは、政治的決断が必要な規制改革については、官僚レベルでの折衝を飛び越えて、特区担当大臣が自ら規制所管省庁の大臣と折衝をして実現されています。

 これに対し、例えば第四次認定に当たって、果たしてどの程度閣僚折衝が行われ、どのような成果を得たのでしょう。今後の姿勢を含めて金子大臣の御答弁を求めます。

 第二は、特区の全国展開です。

 規制改革は全国で進められるのが本筋です。安全規制など慎重な検討が必要なものもありますが、これまで特区で実現してきた規制の多くは、例えば幼稚園に入園できる年齢を満三歳から満三歳になる年の年度当初へと、平均数か月程度前倒しをする規制改革など、直ちに全国に展開しても何ら問題ないと思われるものが多数を占めます。ところが、政府は、全国展開には各省庁の自己評価が必要としており、関係省庁の多くは時間稼ぎをしていると言われています。

 内閣官房主導で、安全規制など特に慎重な検討を要する規制以外の規制については、直ちに全国展開できる規制として分類し、本年中に法令改正などの所要の措置を講ずるべきだと考えますが、金子大臣の御見解はいかがでしょうか。

 第三に、規制改革の恩恵を受けるのは、本来、民間事業者であるはずなのに、自治体提案が大部分で民間提案が少数であることは問題です。民間のニーズの把握、案件の掘り起こし体制、政府の普及活動が問われています。

 特区室は、各都道府県の職員を特区エキスパートとして配置するとのことですが、これまで都道府県による規制や行政指導がビジネスを阻害しているんではないかという声も多く聞かれています。民間の声が直接内閣官房に届くような体制作りに向けた金子大臣の御認識を伺います。

 第四に、手続上の問題があります。

 農家、民宿等のいわゆるどぶろく特区についても、例えばある民宿の方のお話を聞きますと、わずか年間百本程度のどぶろく製造の特区申請にもかかわらず、紙にして八十枚以上、厚さ三センチほどの書類が求められたと伺いました。申請された方々の中でも、手続の大変さから断念された方もいらっしゃるそうです。もちろん、不慣れな点もあったかと思いますが、こうしたことで民間の創意工夫を損ねることがあってはなりません。

 手続面での抜本的な簡素化に向け、谷垣財務大臣と金子大臣の御見解を求めます。

 第五に、根幹制度の規制の存在の問題があります。

 株式会社が新たに大学を運営できることになりましたが、大学設置審議会は従来どおりの教育関係者を中心とするメンバーで、教授陣や図書館の設置など、従来の基準で判断されることから、新しいニーズに極めてこたえにくい状況にあります。特区という蛇口を幾ら開いても、審議会という元栓を閉めているようなものであります。やったふり改革と陰口をたたかれてもやむを得ない状況じゃないでしょうか。

 大学設置審議会も、大学の性格に応じその委員構成を見直す、場合によっては大学設置審議会そのものの存廃を含めて全面的に見直す必要性について、河村文部科学大臣の御見解はいかがでしょうか。

 第六に、規制改革をしても、別要因で事業が進まないことへの対応であります。

 例えば、株式会社やNPOが学校を設置することは認められましたけれども、私立学校には私学助成金が出るのに、株式会社やNPOの設置する学校には支援がないため、既存の私立学校と対等の条件になりません。

 昨年、当院内閣委員会で、当時の鴻池大臣は、株式会社立学校ができた、NPO立学校ができた、これは当然助成すべきであると私は思います、これはイコールフッティングで必ずやる必要があると思います、そう鴻池大臣は答弁をされました。この点について、金子大臣、前任の大臣と同じ認識なのかどうか、金子大臣の御認識をお伺いします。

 この点について、文部科学省は、財政措置の拡大であり、規制改革でないとして要望を門前払いしていますが、河村大臣御自身は、本年一月の衆議院予算委員会において、NPO法人に私学助成をできるかできないのか、法的な議論もあるんです、今詰めさせていただいておりますと答弁されています。

 憲法八十九条の公の支配の問題を指されているとすれば、私自身が当院内閣委員会において内閣法制局に答弁を求めたところ、私立学校振興助成法など法律上の手当てがなされれば検討の余地がある旨の答弁を得ております。

 内閣法制局解釈を受けて、文部科学省として、株式会社やNPOへの私学助成に向けて、法律改正に向けての検討状況はどのようなものなのか、また、国会における閣僚の前向きの答弁をも無視して、自治体や民間の提案の意欲をそぐような文部科学省の事務的回答をどのように考えるのか、河村大臣、金子大臣の御見解を伺います。

 また、NPO立学校の認可に関して、不登校児や学習障害児に限るという大きな制約が付いています。例えば、今、全国にシュタイナー教育を実践しているNPO法人の学校が幾つかあり、高い実績を上げておられますが、この制限のために特区では認められません。何ゆえにこうした制約が付けられたのでしょうか。そもそも、学問の自由、学習権、結社の自由は憲法上保障された権利であります。二十一世紀にふさわしい人材を我が国が輩出するためには、多様な主体に基づく多様な教育が可能となるように、思い切って学校の設立条件を緩和すべきではないですか。二点併せて河村大臣の御見解をお伺いいたします。

 以上の問題に加えて、今回の政府案の具体的内容について伺います。それは、株式会社の医療参入についての大幅な内容変更であります。

 そもそも、昨年二月に、政府の本部は、株式会社の医療への参入については自由診療の分野という前提と決定しています。本法案では、医療の株式会社参入が自由診療で高度な医療に限定されていますが、昨年の内閣委員会では、鴻池前大臣は、正しきは、医療の分野には株式参入、自由診療、この二つだけなんです、高度のコの字もありません、それを言うなら捏造としか言えない、そう明言されました。

 さらに、私の質問に対して、万が一そのように進まなくて決定どおりにいかなかった場合にはどうするんですか、その質問に対して、その場合は、厚生労働大臣の責任である、総理か厚生労働大臣かどちらかが辞めなきゃいかぬと思いますよ、ついでに私も小さな竹光で腹切ります、そう明確に答弁をされました。しかし、六月に出された成案では高度な医療という言葉が盛り込まれ、本法案に至っています。

 前大臣が本院でここまで言明された問題について、どのような経緯で高度な医療という内容が付け加えられたのか、政府には説明責任があります。金子大臣に明確な御答弁をいただきたいと存じます。

 第二に、この法案では、株式会社病院が提供できる医療から特定療養費に係る療養が除外されています。これまで、厚生労働大臣は、混合診療の導入の是非については特定療養費制度の拡大で対応する旨答弁されており、現に高度先進医療における特定療養費制度の対象は年々拡充されています。

 そのこと自体は結構なことですが、その流れの中で、株式会社病院が提供できる医療から特定療養費に係る療養が除外されると、仮に現状の前提では、株式会社が行えたはずの治療が特定療養費の対象となった途端に提供できなくなり、特区制度で株式会社病院の参入を認めても、実際に提供できる医療の範囲は極めて限定的、なおかつ不安定なものとならざるを得ないと考えています。

 ここにも、先ほどの大学のケースと同じく、蛇口を開けて元栓を閉めるという発想があるんじゃないですか。この条件で民間に果たしてニーズがあると思われていますか。金子、坂口両大臣の御認識を伺います。

 また、金子大臣には、この条件に満足しておられるのか、あるいは更に厚生労働省と議論を行う余地があるとお考えなのか、御答弁願います。

 第三に、株式会社病院は、高度な医療で通常の病院で提供されない医療を保険外自由診療で行うにもかかわらず、株式会社病院をいわゆる地域医療サービスの総量規制である地域医療計画の対象とすることに合理的根拠はあるんでしょうか。坂口大臣の御答弁を求めます。

 最後に、法案では、株式会社病院は高度医療以外は、やむを得ない事情がある場合以外は医療行為を行えないことになっていますが、具体的にどのような医療行為まで許されるんでしょうか。もし、地域住民、例えば乳幼児の夜間の発熱の診療も株式会社病院が行えないとなると、当該病院に勤務する医師等は、医療法第一条の四に規定する、医師等は医療を受ける者に対し良質かつ適切な医療を行うように努めなければならないという医師の責務違反を問われることにならないのでしょうか。坂口大臣の御見解を伺います。

 私は、以上のような条件で株式会社に病院参入を認めるのは典型的なやったふり改革であり、このような条件であれば、地域の患者の皆さんにとっても、医療関係者にとっても、また民間企業にとっても、むしろ医療分野については株式会社の参入を認めない方がまだしもまじめで真摯な態度ではないかとも思いますが、両大臣の御見解はいかがでしょうか。

 特区制度に関連して一つ提案がございます。

 私は、昨年来、せっかく特区制度を活用して法改正を行っても、霞が関の省庁の課長クラスの運用通達で事実上参入制限が行われている事例を当院の委員会で指摘してまいりました。法律の施行に当たっては、政省令や告示、通達といった形で、中央省庁が地域の事情を無視して画一的に解釈、運用しているという批判が全国から寄せられています。

 この際、福祉、環境、町づくりといった、より住民に身近な特定分野については、自治体が法律の運用に関し、それぞれの地域の実情に合った条例を制定し、政省令の規定を代替することができる、そのような趣旨の条例による政省令上書き法ともいうべき法律を制定し、法律の運用に柔軟性と地域の民意を反映させる制度を創設してはいかがでしょうか。そのような法律を策定することは、決して、地方自治体には法律の範囲内で条例を制定することができるという憲法九十四条に反するものではないし、法律の運用を霞が関の裁量にゆだねるのではなく、透明な民主的統制に服させるという意味でも有意義なのではないかと考えますが、金子大臣の御見解を伺います。

 以上、明らかにしてまいりましたように、今回の法案の総括的印象はぬるい、その一言に尽きます。最近の特区制度の状況は、当初の政府、特に鴻池担当大臣の意気込みから大幅に後退ないし変質していると言わざるを得ません。例えば、制度創設後一年以内に一件の認定もなされないようなケースについては法律や関係制度を見直すことを義務化するなど、特区制度にもう一段の推進力を与える工夫と特区制度への情熱が必要なのではないでしょうか。今からでも金子大臣、遅くないです。いま一度特区に火を入れて、そして特区を活用して、地域から日本を変えるという運動を全国に燃え広がらせる気迫はないのか。

 一番最後に金子大臣の御決意をお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣金子一義君登壇、拍手〕

○国務大臣(金子一義君) 松井委員にお答えを申し上げます。

 第四次提案、特区についての閣僚折衝の成果、何をやったのかと。

 本院においてはもうお話しいただきましたように、鴻池前大臣先頭に立ちまして強力に進めていただきました。つい先般、特区が一周年を迎えたところであります。この四次提案でも、新たに十七の規制の特例措置が講ぜられましたし、三十三の規制改革事項が全国において実現をすることとなりました。

 閣僚折衝の件でありますけれども、社会人等を教諭として登用するための特別免許状の授与権者、これを市町村教育委員会に追加する提案につきまして千代田区等からも具体的に出てきたんでありますけれども、これについては事務レベルでは合意に達することができませんでした。

 そこで、河村文部科学大臣と大臣室で閣僚折衝をやりまして、これについては是非やろうということで合意に達したところでありますし、また、NPO、先ほど松井議員からも御指摘ございましたけれども、NPOの学校設立につきまして、今は対象が不登校児あるいはLDと言われる学習障害児、これが非常に限定されております。こういうものの範囲を更に拡大したいということで提案も出てまいりました。これについては、河村大臣と相談しまして、NPOのニーズを実際に聞こうと、現場の声も聞いてそしてどういうことを進めようとしているかという事実関係も知ろうということで、私と河村大臣と、三月二十六日のNPO集会に、お集まりいただきまして、出席をして、今年六月の提案と相まって検討を進めることということで今進めさせていただいているところであります。

 このほかにも、関係大臣と相談しながら進めさせていただいたケースは、当然でありますけれどもございます。今後とも、こういう提案について、私自ら関係閣僚とは積極的に交渉し、進めていきたいと思っております。

 それからもう一つは、直ちに全国展開できるものを全国展開させていくべきではないかという御指摘であります。松井議員の御意見、私どもも全く同意見であります。

 この四月から既にスタートいたしましたが、四月から本格的に全国展開の評価を始めさせていただいております。おおむね半年、九月までには評価をして、現地にも出掛けてもらいまして評価をして、特段の問題が生じないものにつきましてはもう速やかに全国展開を図ることとしておりまして、スピードを持って対応をしたいと思っております。

 それから、民間企業から少ないではないかというお尋ねがありました。

 確かに、民間企業の方にとってみると、この仕事は地方自治体がやるべきことと、民間がなかなか直接やることができないという本制度への理解不足があることも事実でありました。タウンミーティング等々でこういうお話をさせていただきますと、そういうことができるのかということで改めてお気付きいただくという状況が全国各地区でございました。私どもとしては、そういう状況を踏まえて、地域再生タウンミーティングというのをこの三月以降全国で十回開かせていただきつつありますし、もう一つは、事務レベルにもなるんですけれども、全国十か所でブロックごとの説明会、あじさいキャラバン、今月末からスタートをさせていただいております。

 それから、松井議員がもう既に御指摘いただきましたように、やはり地方自治体に理解者を得ること、地方自治体にこの制度がどういうものであるかということを理解をし、各地域で広めていただける人、これ、私たち、特区エキスパートと言っておりますけれども、短期あるいは中長期に東京に来ていただきまして、研修をして、そういう今申し上げたようなことができるような取組をさせていただいておるところであります。

 それから、手続について非常に煩雑ではないか、特にどぶろくの特区の例が挙がりました。確かに、どぶろく特区、日本の第一号も、税務署が非常に厚いほどの資料を要求いたしまして、取りあえずこれ、第一年度第一号ということで、現実には農家個人が対応できずに、地元の役場、市の職員が対応したということも事実でございます。

 しかし、私たちも、一回それが実現できれば後は本人ができるようななるべく簡便な方法というものを取る、酒税法との関係でございますので、どこまでということを、なるべく簡略化できるようにしていきたいというふうに進めていきたいと思っております。

 それから、株式会社立学校、NPOの私学助成の件であります。

 河村文部大臣からもまたあるかと思いますけれども、株式会社又はNPO法人が設立する学校につきまして既存の私立学校に対して講じられている助成と同様の支援を行うこと、この点につきましては、学校全般についての支援をどう考えるかという政策判断と憲法の要請する公の支配との関係をどういうふうに考えるかという点がございます。ただ、特区制度で実施した新たな参入者に既存の事業者と同様の支援を行うことについては、いわゆるイコールフッティングであります。従来型の財政措置は講じないという特区制度の趣旨に反するものではないというのが従来からの内閣官房の見解であります。私も同様の認識でございます。

 私学助成に関する文部科学省での検討でございます。

 株式会社、NPO法人に対して学校法人と同じく私学助成を行うことについて、憲法上の公の支配に属する前提となり、学校法人に対する規制と同様に、公の支配として必要な規制を受けることは必要と考えられるなど、法的な検討が必要であることは認識しております。このような検討事項及び学校全般についての支援をどう考えるかということについては、文部科学省において検討していただいているものと考えます。

 いずれにせよ、株式会社やNPO法人の設立する学校が地域の教育ニーズに真にこたえ、特区での事業がどのようにすれば円滑に進むかなど、特区で実現した学校や今後の提案を踏まえ対応をしてまいりたいと思っております。

 高度な医療というものを、鴻池前大臣が言明したにもかかわらず、どうして高度な医療というふうに至ったのか、その経緯を述べろということでお尋ねがございました。

 自由診療の分野という前提で地方公共団体等からの意見を聞き、六月に成案を得まして、十五年度中に必要な措置を講ずることと、昨年二月に決定した政府の対応方針ではされておりました。鴻池前大臣の答弁も、今申し上げました決定を踏まえたものと考えております。そして、その後でありますけれども、厚生労働省が成案を具体的に取りまとめましたけれども、自由診療の分野で高度な医療に限定して株式会社の医療参入を認めることが適当であると判断したものと認識しております。

 これは、株式会社の参入については、株式会社形態による経営の効率化、医療分野における国民の選択肢の拡大など、メリットが考えられる一方、衆議院での民主党の反対討論でも御指摘いただきましたように、保険財政への影響、地域医療の確保への影響、国民皆保険制度への影響など様々な懸念が指摘されているところであり、これを踏まえたものであります。

 具体的に民間のニーズがところであるのかということでございます。

 具体的には、制度的に医療保険の対象とされてない健康診断において利用可能なPET等の画像診断ですとか、高度な技術を用いる美容外科医療も対象となっております。また、現在既に研究開発がなされている分野、例えば脊髄損傷患者に対する神経細胞の再生、移植、肺がんや先天性免疫不全症についての遺伝子治療等々も含まれております。このようなことから、民間のニーズは十分にあるものと考えております。

 医療法の特例に定める条件に対する見解、お尋ねがありました。

 今回の特区において医療分野への株式参入を認めることにより、その実績等を評価することで、自由診療、高度医療ということについても議論ができるようになると考えております。特区において限定的とはいえ株式会社に参入を認めることで、医療の分野における株式会社参入の意義と問題点が検証できることとなり、正に規制改革の突破口としての意義があるものと考えております。

 やったふり改革ではないのかという点でございますが、今まで困難とされてまいりました株式会社の参入によるメリットと、それに伴う様々な懸念も踏まえ特区で実施することとしたものでありまして、規制改革の突破口としての大きな意義があるものと思っております。

 上書き条例ということであります。

 松井議員御指摘の、御提案の条例の上書き法について、その内容は詳しく承知しておりませんが、法律の一般論として申し上げれば、条例が政省令に代替することを可能とするような一般的な仕組みを創設するということであれば、我が国の法制度全体の問題として慎重な検討が必要であると考えております。

 最後でございますけれども、もう一段の推進を図るべきだ、エネルギーが足らなくなっているのではないか。決してそんなことはございません。特区一周年で出てまいりました全国の市町村が、特区一周年で出た案件というのは宝の山である、全国各地でこれが更に使われるものと思っておりますし、更に加速させるように、私も担当大臣として全力を挙げて推進してまいりたいと思っております。

 以上であります。(拍手)

   〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕

○国務大臣(谷垣禎一君) 松井議員にお答えいたします。

 いわゆるどぶろく特区の申請が煩雑ではないかという御指摘でありました。

 特区法における酒税法の特例では、酒類製造免許の要件のうち、最低製造数量基準は適用しないこととしておりますが、他の要件は満たす必要がございます。免許の申請に際してはこうした要件を確認する必要がありますが、金子国務大臣の御指摘もあり、申請者の方々の御意見等も踏まえまして、提出書類を様式化し、あるいは申請者が該当欄に定型的な文言を記入すれば足りることとする等、手続の簡素化に努めているところでございます。(拍手)

   〔国務大臣河村建夫君登壇、拍手〕

○国務大臣(河村建夫君) 松井議員の三点の質問に対してお答えさせていただきます。

 まず第一点は、大学設置・学校法人審議会についてのお尋ねがございました。

 大学設置の審査に当たりましては、様々な構想に対応して幅広い観点から適切な審査を行うことが重要であると考えます。このために、大学設置・学校法人審議会におきましては、産業界など大学関係者以外の委員も積極的に登用するように努めておるところでございます。また、個々の審査内容を踏まえて、必要に応じて専門委員も補充することができるようになっておりまして、柔軟に審査体制を取るというように配慮をいたしております。

 今回の株式会社の設置する大学、これにつきましても、実務家を加えて審査をやって認可の答申を得たと、こういう経緯がございます。

 今後とも、同審議会における適切な審査を通じて、多様な社会のニーズに対応する大学の設置が行われるように努めてまいりたいと、このように考えております。

 第二点は、株式会社やNPOの設置する学校への私学助成に関する法律上の検討状況についてお尋ねがございました。

 学校法人につきましては、学校教育法、私立学校法及び私立学校振興助成法、これによりまして、学校法人の解散命令など各種の監督規定が設けられております。これら三法の規定を総合的に判断すると、憲法第八十九条による公の支配に属しておるので現行の学校法人に対する助成措置は憲法上問題ないと、このように理解をしておるところでございまして、そこで、この今回の株式会社、NPO法人、この学校の設置に対して、この株式会社、NPO法人の特性を生かしたまま学校を設置したいという要請で今回特例措置を認めたわけでありますので、これに私学助成をするに当たっては、公の支配に属するということを考えていかなきゃならぬと、この憲法の精神。そうすると、どうしても学校法人並みの規制を設けていくということになりますと、この三法を当てはめていくことになると、株式会社等の特性を前提として特例を認めた趣旨に反することになる。このことが非常に困難になっておるわけでございまして、この問題を今、この壁を、法律との関係は突破できない状況にあるわけであります。

 第三点は、不登校児を対象としたNPO法人の学校の設置を限定とした理由、それから学校の設立条件の緩和についてのお尋ねでございました。

 NPO法人設立は容易でございまして、学校法人に比べて公共性、継続性、安定性などやっぱり心配な点、懸念すべき点もあるわけであります。不登校児童生徒に対する教育など、一方ではそういう成果を上げてきている、これは認めておるところでございまして、こうした実績に着目をして、教育上特別の指導が必要な子供たちを対象とした、そうした特別の需要に応ずる教育を行うNPO法人で一定の実績を有するものについては、特区において情報公開あるいは評価やセーフティーネットの構築を認めた上で学校設置を認めるということにしたわけでありまして、学校は公共性、継続性、安定性、これはやっぱり大事でありますから、その設置主体はあくまでも学校法人が基本となるわけでありますが、学校の設立条件の緩和につきましては、これまでも小中学校設置の基準の制定、あるいは高等学校の設置基準の改定ということで配慮してまいりました。

 また、文部科学省といたしましても、今、多様なニーズに応じた学校教育の充実を図るという観点がございます。学校の設置を目指しておられますNPO法人に対しても、特区室ともヒアリングを行うなど、先ほど金子大臣、答弁の中でおっしゃっておりましたが、私もそれに参加いたしましたが、学校の設置に対して具体的にどのような点が更に障害になっているか検討を進めておるところでございます。

 以上でございます。(拍手)

   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕

○国務大臣(坂口力君) 松井議員にお答えを申し上げたいと存じます。

 総論的なことは最後にお答え申し上げるとしまして、具体的な問題、四点お示しをいただきましたので、そこを先に御説明申し上げたいと存じます。

 医療分野における株式会社の参入につきましてニーズがないのではないかというお尋ねでございました。

 今回の特区におきます株式会社立の病院の開設につきましては、医療保険財政への影響の懸念を踏まえつつ、また、株式会社のメリットとされております資金調達能力でありますとか研究開発意欲を活用する、こういった観点から、自由診療による高度な医療の提供を条件としたわけでございます。

 株式会社の参入を認める高度な医療の範囲につきましては、一般の保険診療と併せて御指摘の医療保険における高度先進医療を除外いたしております。しかし、株式会社立の病院の開設後に、この高度な医療が特定療養費など医療保険の給付対象となりました場合に、特区で既に開設されております株式会社立の病院におきましては開設許可を取り消すというようなものではございませんで、ここはその取扱いにつきましては都道府県知事の判断にゆだねているところでございます。

 高度な医療には、健康診断でも利用できます、先ほどお話がありましたPET等の画像診断や高度な技術を用いる美容外科医療といったこともその中には含まれております。

 それから、特区の株式会社病院の医療計画の問題、御指摘をいただきました。

 医療計画につきましては、都道府県がそれぞれの地域におきます医療を提供する体制の確保に関しまして定めるものでございます。これは地域ごとに必要なベッド数を定めておりまして、ベッド数が過剰となっている地域では病院の新規の開設等をしないよう勧告をすることにいたしております。病院が不足している地域での病院の開設等を促進をして、医療機関の地域的な偏向をできるだけ防ごうとするものでございまして、保険外自由診療であります医療におきましてもその対象となると、ここはお許しをいただきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、この株式会社の病院等におきまして、高度医療以外の医療の提供を禁止することは医療法に違反するのではないかという御指摘がございました。

 今回の特区法の改正案では、株式会社立の病院等が提供する医療は、原則として高度医療に限定をいたしておりまして、高度医療以外の医療の提供は禁止しているところでございますが、しかし一方、診療上やむを得ない事由があると認められる場合におきましては、例外的に高度医療以外の医療を提供する旨、規定しているところでございます。

 したがって、先ほどのお話ございましたお子さんの場合の問題でありますとか、患者の急に重篤な状態になるといったような場合が生じましたときには、それは高度医療以外の医療を提供することができるということになっておりますので、ここは御理解をいただけるものというふうに思っております。

 それから、最後に、これはやったふりではないかというお話でございましたが、これはやるからには効果のあるものにしなければならないと考えております。

 医療法人で十分効果を上げているところに株式会社を更にする必要はないと思いますが、しかし、株式会社でなければできない分野というのは、これはあるわけでありますから、そこをしっかりやりたいというふうに思っておりますし、鴻池前大臣のお話も、やるからには効果のあるものになれと、こういうお話であったというふうに思っておりますので、肝に銘じてやりたいと思っております。(拍手)

○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) 日程第二 薬剤師法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。

 まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長国井正幸君。

    ─────────────

   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

   〔国井正幸君登壇、拍手〕

○国井正幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、医療の高度化、医薬分業の進展等に対応して、医療の担い手としての役割がより一層求められている薬剤師の資質の向上を図るため、国家試験の受験資格を修業年限六年の薬学の課程を修めて卒業した者に与えることとするものであります。

 委員会におきましては、修業年限の延長が医療の質の向上に及ぼす効果、生涯研修の充実の必要性、病院における薬剤師の位置付け等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。

 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

 なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。

 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。

  投票総数          百七十九  

  賛成             百七十九  

  反対               〇  

 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)

    ─────────────

   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) 日程第三 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案

 日程第四 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案

  (いずれも内閣提出)

 以上両案を一括して議題といたします。

 まず、委員長の報告を求めます。国土交通委員長輿石東君。

    ─────────────

   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

   〔輿石東君登壇、拍手〕

○輿石東君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。

 まず、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案は、建築物に係る報告、検査等の制度の充実及び強化、危険又は有害となるおそれのある既存不適格建築物に対する勧告及び是正命令制度の創設等所要の措置を講じようとするものであります。

 次に、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案は、地価公示の対象区域の拡大、不動産鑑定士等の行う業務の適正な遂行を確保するための規定の整備、不動産鑑定士の資格取得制度の簡素合理化等の措置を講じようとするものであります。

 委員会におきましては、二法律案を一括して議題とし、既存不適格建築物の耐震化等による安全性の向上、違反建築物の是正対策と定期報告制度の充実、特例容積率適用地区の導入による影響、地価公示制度の現状と今後の在り方、不動産鑑定士資格取得制度の見直しと人材の確保方策その他について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。

 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表し大沢委員より建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に反対する旨の意見が述べられました。

 次いで、順次採決の結果、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案は多数をもって、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案は全会一致をもって、いずれも原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

 なお、二法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されております。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。

 まず、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の採決をいたします。

 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。

  投票総数           百八十  

  賛成              百六十一  

  反対               十九  

 よって、本案は可決されました。(拍手)

    ─────────────

   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) 次に、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。

 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。

  投票総数          百七十九  

  賛成             百七十九  

  反対               〇  

 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)

    ─────────────

   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕

     ─────・─────

○議長(倉田寛之君) 日程第五 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。

 まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長北岡秀二君。

    ─────────────

   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

   〔北岡秀二君登壇、拍手〕

○北岡秀二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、学校における栄養指導の充実等を図るため、栄養教諭の制度を創設し、栄養教諭を小中学校等に置くことができることとするとともに、その職務、免許、給与費の負担等について定めるほか、医療技術の高度化等に対応するため、大学の薬学を履修する課程のうち、薬剤師養成を目的とするものの修業年限を六年に延長しようとするものであります。

 委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、栄養教諭に期待される役割、栄養教諭の養成と定数拡充の必要性、薬剤師に求められる能力と養成の在り方、実務実習の長期化に伴う受入れ体制の整備等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。

 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

 なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。

 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。

  投票総数          百七十九  

  賛成             百七十九  

  反対               〇  

 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)

    ─────────────

   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

○議長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。

   午前十時五十九分散会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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