衆議院国土交通委員会 2006・5・12

 

  委員長   幹雄君

 政府参考人 住宅局長山本繁太郎君

○林委員長 斉藤鉄夫君。

 

○斉藤()委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 建築基準法等の改正案について質問をさせていただきます。

 私も代表質問でさせていただいたところでございますが、もう一度確認のために、なぜ公が建築確認を行うのかという原点について、まずお伺いをいたします。

 本来、建物を設計し、建築するというのは、公の建物もございますが、民間の建物については完全な民間の経済行為でございます。その民間の行為に対して、まず設計そのものが国家資格を持った者が行わなければならない、その設計に対して公の建築確認という制度がある、そして中間、竣工、それぞれ公の検査がある。そのほかの民間の経済行為に比べて、圧倒的に公の関与が強いわけでございます。

 こういう状況について、先ほど来議論にも出てきておりますけれども、公の関与は、いわゆる集団規定、都市計画的なものだけ、こういう地域にはこういう種類の建物をこういう高さで、またこういう色彩でという都市計画的な集団規制だけにして、個々の建物については、これは専門家、設計にしても施工にしても専門家の責任範囲に入るわけでございますので、その責任を民間と公と明確にする、単体については民間の責任ということを明確にする。民間の責任にする場合、当然、保険制度というようないわゆるバックアップ体制も必要になってこようかと思いますが、そのような議論もあるところでございます。

 そういう議論がある中で、公が建築確認を行うということの意味をまず最初に明らかにしておきたいと思います。

 

○山本政府参考人 建築基準法は、本邦に建築され、使用される建築物について、最低の基準を定めているわけでございます。これは、単体規定であれ集団規定であれ、最低基準を定めているわけでございますが、その基準に建築物を適合したものにするということの第一の責任は、建築物を建築する建築主にある。建築主が基準に適合する建築計画を立案して、これをきちんと実行するという直接的な義務を基準法は建築主にかけております。

 それでは、確認制度は何かということでございますけれども、直接的義務を課した上で、特定行政庁が指揮監督を行います建築主事、あるいは国、都道府県が指定する指定確認検査機関に対しまして、当該建築計画を審査する、適法性を審査する後見的な義務を課しているというふうに整理されるわけでございます。この審査が建築確認でございまして、建築基準関係規定に適合することを公権的に判断し、これを表示するという行政行為であるというふうに理解しております。

 なぜこういう確認の制度があるかという点でございますが、建築物を建築し、購入するということになりますと、普通の財に比べて非常に多額の費用といいますか、高価でございます。非常に価格が高い。それから、構造とか防火とか避難といったような安全性能につきましては、でき上がった後になかなか瑕疵が見つからないですし、瑕疵が見つかった場合でもこれを改修しようというときに大変な損失を伴う、社会的な損失でございます。そういうことを考えると、竣工時点で必要な性能がきちんと確保されているということが必要であります。このために、まず建築士法において、専門的知見を有する有資格者が建築主のために設計を行うということを設定した上で、基準法において、確認をするということにしているものでございます。

 したがいまして、国民の生命、健康、財産の保護を図るために、集団規定だけでなく、単体規定につきましても、確認検査によって基準適合性を担保するということは社会的に非常に大きな意義を有していると考えているわけでございます。

 

○斉藤()委員 単体規定においても公が建築確認を行う、チェックをするということの意義についてはわかりました。

 この建築確認制度、平成十年の建築基準法の改正がございまして、大きく変わりました。平成十年の建築基準法の改正、私も質問に立たせていただいて、今でも覚えていますが、二つ大きな改正がある。一つは、仕様規定から性能規定へという改正、それからもう一つが、建築確認の民間開放ということでございました。

 一つ目の性能規定に変わったということについては、今回の問題と関連してまた別の機会にぜひ質問したいと思っておりますが、建築確認の民間開放を行って、いわゆる指定確認検査機関というものが生まれたわけでございますが、この改正のねらいはどこにあって、どのようにそれが実現したか、その御認識をお伺いいたします。

 

○山本政府参考人 平成十年の基準法改正による建築確認検査の民間開放につきましては、その背景としましては阪神キ淡路大震災の教訓があるわけでございますけれども、それに加えまして、建築物が非常に大規模化してきている、それから建築技術も高度化してきているという中で、建築確認とか検査の行政側の実施体制が必ずしも十分に確保できていないという実情を踏まえまして、官民の役割分担を見直すことで、的確で効率的な執行体制をつくるということにあったというふうに考えております。建築主事だけが行ってまいりました建築確認検査事務について、新たに、必要な審査能力を有する公正中立な民間機関も行うことができることとしたものでございます。

 この結果でございますけれども、平成十年度の我が国における建築主事の総数は千九百人でございました。平成十六年度、民間の確認機関が仕事をするようになってしばらくしてからでございますが、主事と確認検査員をトータルで見ますと三千人になっております。ですから、確認検査の仕事を千九百人の主事が行っていた実施体制が、十六年度には三千人が取り組める体制になったということでございます。

 そういう意味で、確認検査業務の執行体制は強化されてまいりましたし、この結果でございますけれども、完了検査率についても、平成十年度の三八%は、十六年度七三%というふうに向上しております。それから、違反建築物の件数も減少しておりまして、平成十年度は一万二千余りだったんですが、平成十六年度は七千七百八十二件というふうになっております。

 こういったことで、建設行政全体としての実効性は着実に向上してきているということでございますので、民間開放の方向性は間違っていなかったというふうに考えているところでございます。

 ただ、今回、改正案におきましては、今般の事案を踏まえまして、基本的には現行の枠組みを維持するわけでございますが、確認検査がより的確に行われますように、指定要件の強化とか、特定行政庁の指定確認検査機関に対する指導監督権限の強化などを図ることとしているところでございます。

 

○斉藤()委員 確かに、それまでの、いわゆる特定行政庁の建築主事さんだけ、人数も限られていた、しかし物件は非常にその数はふえていた、その中で形骸化していったということはよくわかりますし、民間開放の必要性についてもよくわかるわけです。

 しかしながら、今回指摘されておりますけれども、現実問題として、とにかく安く、早く確認をおろせるところに仕事が集中して繁盛していく。民間の、それも営利企業ですから、うちは安く、早くおろしますというようなことで営業活動していく。それで実態として機能していなかったのではないか、このようなことも言われているわけでございます。

 ちょっと質問通告と順番が違いますが、今回、指定確認検査機関に対する監督の強化ということを言っておりますけれども、具体的にどういう中身になるのか、今回の法律案の中でどのような措置を講じていくのか。現場でお話を聞いてみますと、例えば、審査できる件数についても制限をしていくべきではないかというふうな意見もございましたが、この点についてはいかがでしょうか。

 

○山本政府参考人 やはり、再発防止のためには、御指摘いただきましたように、きちんと厳格にこれを実施するということが非常に大事でございますので、今回の法律案では、現行の確認検査制度について抜本的に見直すという観点から整理をしているところでございます。

 まず、審査方法について大臣が指針を示すということでございます。この大臣の定める審査方法に従って厳格に確認検査をしていく。これは建築確認についても、中間検査、完了検査についても同様でございますけれども、そういったことを進めていく。それから、構造計算について専門家の適合性判定をやるということ。それから、特定行政庁が、個別具体の確認事務に関連をいたしまして民間の指定確認検査機関に立入検査ができる、立入検査ができるというような形で指導監督権限を強化する。立入検査した上で問題があればこれを指定権者に通告する、指定権者が監督権限を行使してしかるべき措置をとるといったような措置を盛り込んでおりまして、そういう意味で、確認検査制度の抜本的な見直しを盛り込んでいると言えると思います。

 

○斉藤()委員 今回の事件では、指定確認検査機関のみならず、いわゆる特定行政庁、建築主事さんにおいても偽装を見抜くことができなかったわけでございます。

 私も建築主事さんにいろいろ直接お話を伺いましたけれども、ちょっと論旨がずれますが、その方がおっしゃったのは、この制度ができた戦後すぐのころは、いわゆる建築主事、お役所が持っている技術の方が、民間の建設会社、大工さんたちの技術よりも上であった。したがって、公の建築確認ということにある意味で意味があった、チェック機能があった。しかし現在は、建築主事といっても数は少ないし、物件は多いし、かつ設計をする民間の技術の方がお役所の技術より上ということもたくさんある。そういう意味で、現在の建築確認制度というのは、公のチェックというのは見直さなくてはいけないのではないかというふうな建築主事さんの率直な意見も聞いてきたところでございます。

 現行の、いわゆる特定行政庁の建築主事さんが行うところの建築確認また検査制度について、どのような問題点があったか、その点についてお伺いします。

 

○山本政府参考人 御指摘いただきましたように、今回の事件では、民間の確認検査機関だけではなくて、特定行政庁の主事においても偽装を見抜くことができなかったという事例が幾つもあるわけでございます。

 今回の姉歯元建築士の偽装の態様でございますけれども、非常に多岐にわたっておりまして、単純な差しかえ、これは偽装の発見が非常に容易であると思われるような偽装から、コンピューターの計算途上の数値あるいは出力の結果を巧妙に書きかえたというようなものまでわたっておりますので、偽装の態様によりまして、特定行政庁の主事の方が的確にこれを見抜けたかどうかということは判断する必要があるわけです。

 さっき言いましたように、入り口の地震力を単純に低減して、オーケーの出力が出たものと別の入力の部分を差しかえてやっているというのは可能なんですけれども、事柄によりましては、エラーメッセージとか警告メッセージを消去するというような、あるいは不適切な数字を切り張りで修正するというのがありまして、こういう偽装は通常の特定行政庁の審査ではなかなか発見することができなかったというふうに認識しておりまして、そのことを踏まえて、今回、高度な構造計算を要する建築物について構造計算適合性判定を義務づけたり、そういったような再発防止策を講じることとしたところでございます。

 御指摘いただいた事柄は、さらに、公共団体におけるいろいろな審査体制の強化とか、いろいろな行政の効率化といったようなことにも関連いたしますので、この部分につきましては、審議会でさらに御検討を今いただいておりまして、次の段階の講ずべき措置の中に的確に受けとめて対応してまいりたいと考えております。

 

○斉藤()委員 それでは具体的に、今回の法律案では、審査側における入り口の建築確認、それから、途中の施工の段階における検査等を厳格に行うということでございますが、今回の法律案では建築確認また検査制度をどのように変えていこうとしているのか、端的に、わかりやすくお願いいたします。

 

○山本政府参考人 まず、いろいろな偽装の中で、単純な差しかえを行ったものなどにつきましては、建築確認時に審査を的確にやればこれを見抜くことが可能だったというふうに考えておりまして、今回の改正案の中では、建築審査についての指針を定めまして、これに従ってきちんとやっていくということがまずございます。これは入り口できちんとやる。

 それからもう一つは、先ほども言いましたけれども、非常に巧妙に偽装したものは、結局、構造計算の過程を詳細に見て、あるいは現実に、一貫計算したものであれば、再計算を行うということでなければ偽装を見抜くことが困難だったというふうに考えておりまして、したがって、この部分につきましては、先ほど紹介しましたけれども、一定規模以上の建築物について構造計算の適合性判定を義務づけるという形で対応するという考えでございます。

 この場合、具体的には、大臣認定プログラムを用いて構造計算書を作成した建築物につきましては、入力データを建築申請のときに提出してもらって、第三者機関において入力方法を見た上で、再入力、再計算というのをやりますので、専門家を用いて具体的に審査するということよりは効率的に審査することが可能だというふうに思っております。

 そういう方法もとりながら、的確に審査をできるように進めていきたいという考えでございます。

 

○斉藤()委員 その点はよくわかるんですが、巧妙に仕組まれた偽装、これを見つけるには、先ほどお話がありましたような構造計算適合性判定制度を導入して、もう一度計算する。そうせざるを得ないんだと思うんですが、巧妙に偽装するというのは、全体の中で見れば、もしあったとしてもごくごくごく一部、それをチェックするために、残りの九九キ何%かわかりませんけれども、についても同じようなプロセスを踏むというのは、利益とコストのバランスから考えると本当にそれでいいのかなという思いがなくもないんですけれども、今回、この巧妙な偽装もちゃんとチェックするということがまず大前提ということなので、いたし方ないかと思います。

 もう一つ、そういうことよりも、また同じ計算を繰り返すよりも、鉛筆と紙で、構造技術者が建物全体の内容をよく頭に入れて、主要なポイントをきちっとチェックする。そういう、いわゆるピアチェック、手計算でポイントをチェックするというようなピアチェックの方がはるかにチェック機能は働くんだという多くの専門家の意見も聞いてきたところでございますけれども、この巧妙な偽装を見抜くということと、それから、現実にはそういうピアチェックの方が役立つんだという話と、この辺、住宅局長、どのようにお考えになりますか。

 

○山本政府参考人 実は、今御指摘いただいた点が、現場の実務をきちんとこなして、なおかつ安全な建築物を確保するという観点が一番兼ね合いの難しいポイントだと思います。

 ですから、そういったところを論議した上で、実は今、巡航速度で年間七十五万件ぐらい建築物の確認申請があるんですけれども、その中でも大規模な建築物、年間おおよそ八万五千件ぐらいの、鉄筋コンクリートの建物でいえば二十メートル以上の建物とか、そういう大規模な建築物に限って今の専門家による判定を義務づけようとしているわけでございます。ですから、小規模な建築物になりますともともと構造計算不要なものも数十万件ありますし、そういったものについては、今までの審査をきちんとやるというやり方で進めて、専門家同士のピアチェックが非常に合理的だという御指摘がありますので、それについては引き続き検討課題だと思いますけれども、今回お願いしております枠組みは、以上のような判断に立って制度改正をお願いしているということでございます。

 

○斉藤()委員 ピアチェックも、ある一定規模以上のものについては導入すると。それを上回る、上回るといいましょうか、多くの数万件と言われるものについては、構造計算適合性判定制度を使ってやるということで、理解できました。

 次に、施工中の検査についてでございますが、今回、この強化も図るということでございます。ですから、今回どのような改善措置を講じていくのかというのが私の質問ですが、一つ先ほど来からも出ておりますが、本来は、第一義的には建築主にその責任があるわけです。その建築主が自分の持ち物として建てている場合のいわゆる施工検査というものと、それから建築主と最終的な所有者が異なる、分譲マンションというふうな場合の施工段階の検査と、おのずと変わってこなくてはいけないのかなという思いもございますが、今回、この施工段階における検査の強化についてどのような方策をとられているのか、お伺いいたします。

 

○山本政府参考人 御指摘いただきましたとおり、違反建築物の防止のためには、工事施工段階における検査を強化することが重要でございます。

 今回の改正案では、まず共同住宅につきまして、三階建て以上の共同住宅、いわゆるマンションでございますね、マンションについては、全国一律に中間検査を義務づけるということを行った上で、中間検査の的確な実施を確保するために、検査方法について大臣が指針を策定する、それに従ってきちんと検査を行うということを措置しております。

 また、この部分につきましては、執行体制も非常に重要でございますので、この指針に従って、地方公共団体それから民間確認検査機関が的確に進めていくということを期待しているところでございます。

 

○斉藤()委員 次に、設計段階、いわゆる設計をする国家資格を持っているところの建築士、この建築士が悪意による偽装を行ったということが今回の問題の本質ですが、そういう建築士に対する処分、罰則を強化するということもこれは当然必要になってくるわけですが、今回の法律案ではどのような措置を講じているでしょうか。

 

○山本政府参考人 今回の問題は、本来法令を遵守すべき資格者でございます建築士が構造計算書の偽装を行ったものでございまして、これをきちんと抑止していくという観点から、今回の法律案では、建築士の業務の適正化を図るという観点から、建築士の職責、構造安全性の証明義務、非建築士等に対する名義貸しの禁止、違反行為の指示等の禁止、それから、信用失墜行為の禁止等の規定を新たに追加した上で、これらの規定に違反した場合には免許の取り消し等の懲戒処分の対象としているところでございます。

 罰則の強化につきましては、まず、耐震基準など重大な実体規定違反の建築物を設計した場合には、現行の法定刑を大幅に引き上げまして、最高で懲役三年または罰金三百万円の刑を科すとしておりますし、名義貸し行為の禁止、それから構造安全証明書の交付義務に違反した場合は、最高で懲役一年または罰金百万円の刑を科すといった措置を講ずることとしております。

 

○斉藤()委員 最後の質問ですが、今回の法律案は、早急に対応すべき課題について制度改正を行うということでございますが、当然、残された課題も多いかと思います。特に、保険制度、瑕疵担保責任制度、これをどのように具体化するのか。また、我々もいろいろ調査、専門家の方の御意見を聞いたときに、資格の専門化といいましょうか、専門別の資格制度にすべきではないかというふうな意見も聞きました。

 このような資格制度の問題等々いろいろあろうかと思いますが、残された課題は何なのか、どのように考えていらっしゃるか、また、どのような方向性を持ってこれから検討されているのか、この点についてお伺いします。

 

○山本政府参考人 ことし二月の分科会の中間報告でも御指摘いただいておりますけれども、施策の実現に向けて引き続き検討すべき課題としまして、今御指摘いただきました専門分野別の建築士制度の導入を初めとする建築士制度に係る課題、住宅の売り主等の瑕疵担保責任のさらなる充実、国、公共団体における監督体制、審査体制の強化それから建築物のストックについての情報の充実、それから、構造計算書についての電子認証システムの導入の検討といったような課題が挙げられております。

 これらの課題につきましては、社会的な必要性とか実効性、それから具体的な見直し方法についてさらに検討する必要がありますし、関係団体との意見交換も必要でございます。そういうこともありまして、今回改正案では見送られたわけでございますが、引き続き御検討いただいた上で、夏ごろまでに方針を取りまとめていただきたいと考えております。

 

○斉藤()委員 質問を終わります。ありがとうございました。

 

○林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

 

    午後零時十六分休憩

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