基本制度部会中間報告(案)に対する意見                  加藤光一

 

 「社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会の中間報告(案)に対する意見」を、

国土交通省住宅局建築指導課パブリックコメント担当宛に、二度に分けて送付した。

 以下にそれら内容を示して参考に供したい。

 

■2006年2月14日送付分■

(意見)

1. 先ず、建築確認審査技量の向上を図るべきである。行政官OBの実績に学ぶべし。

2. 構造計算の再計算は申請者が行うべきで、確認審査側が行うことはない。表現不足

  や判読し難い設計図書が審査事務用に提出されたら、判りやすく作り直させよう。

3. 躯体工事(上棟)完了後に、設計及び施工の状況の全般的な検査を義務付ける。

 

(理由)

1. 複雑な構造の建築物でも行政官OBは審査を行ってきた。疑問点を直接構造設計者に

 尋ね、説明が納得できないと修正を求めた。終電まで黙々と審査される姿勢は敬服した。

2. 電算の審査では、構造設計者の工学的判断に基づきデータ入力が行われるから、入力

 データ審査こそが肝要である。

  電算は繰り返し演算とマトリックス解析に威力を発揮して便利だが、出力の膨大さが

 審査事務を困難にする。

 電算出力から下記を転記した図書(図面と同サイズ)を作成させ、審査図書として用い

 たら如何か。

      A. 各階における床版厚、積載荷重及び地震時全重量の表示する伏図

      B. 常時及び地震時の曲げ応力、軸力、せん断力を表示する架構図

             (層せん断力、基礎反力も表示)

      C. 終局時保有水平耐力を表示するメカニズム図(必要保有水平耐力も表示)

 これらがあれば、外力と応力の収支が明示出来て、建築主・居住者にも説明可能である。

 土木の橋梁の設計図には曲げ応力、軸力、せん断力等の断面力が図示されている筈。

3. 最初の構造計算は可でも、途中の設計変更や、建築主や工事監理者の交代が行われた

 りする。

  構造躯体の安全性担保のため、躯体完成時に設計変更後の再構造計算や構造材料の

 材質検査の確認、工期の適切さ、亀裂修正指示等につき、工事監理者からの工事監理報

 告に基づいて、躯体竣工検査を先行させたら如何か。不良物の建替も可能。

  これらに基づいて作成された躯体竣工図、最終の構造計算書完全版(地盤調査報告

 書も含む)が、その建築物が滅失されるまで保存される仕組みが作られることが望ましい。

 

■2006年2月15日送付分■

(意見)

 大臣認定プログラムの内容強化は、電算プログラムの本質と馴染まないと思います。

 計算規準には多様の知見があり、其の内の特定の規準適用強制になったとすれば、構造設計の自由度を損ねる結果になることを危惧します。

(理由)

 認定可能なものはプログラムのフローチャートに示される分岐、回帰、検索、サブルーチンの活用の仕方等であって、マトリックス構造解析の効率化等のソフト技術までは立入れないものでしょう。

 数値計算は正値でなく近似値が得られるだけで桁落ちも発生します。電算利用の主目的は、巨大なマトリックス解析の高速演算です。又、同一入力データによる演算で同一数値を得られることはありません。

 構造計算プログラムには学会計算規準等の多くのメニューが備わっていますが、利用者が責任を持って参照し適用するものです。法的に、細部の規準まで強制することは、創造的な設計者の思想と設計行為を束縛することになります。

 しかし、建築士でない者でも、入力の仕方を覚えれば何とか構造計算書の出力は可能で

あるし、素早く警告なしに終了するというゲーム的操作で、報酬も取得可能な擬似構造計算書の作成を、防止出来る訳ではありません。従って、電算の再出力という後追い検算に過ぎない措置でも、不法構造計算の防止にはなりません。

 確認検査審査員の技量の向上や、識見と経験に富む構造設計技術者の相互検証に拠る

べきです。

 「社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会中間報告(案)に対する意見」を昨日添付送信したものだけでは意を尽くせなかったので、意見を追加致します。

 

(以上)


 

 

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