建築産業の仕組みに自らメスを入れよう   

                            2006年8月25日

                                  真柄 榮毅

 

 今回の建築士制度などの改正にあたって、国土交通省へ各職能団体が各々の立場からの提言を盛んに申し入れている実情と背景などは十分認識できます。

 しかし、この危機をチャンスと捉えて“安心・安全な良い建物をつくるための社会制度”を求めて各職能団体の枠を超えて、それぞれの専門家はスクラムを組んでいかねばならないのに、現状は、行政依存体質に染まっているような行政のイニシアチブを当然視しているように映ります。

 現在の日本社会で際立っていえることは、何か事件や事故が起きて人命が失われたりしても、どうも、自分さえよければよいとか、自分の属している組織・グループだけが安泰であればよいとか、何か不具合が見つからなければよいという恐ろしい社会になっております。

 

 地震国日本では地震で建物が倒壊して人命が失われても“国”からの一言を待っていて“想定外の巨大地震であったので建物が倒壊した”として、設計・施工にかかわったところは勿論のこと、金融融資・発注・仲介・審査・販売などにかかわったところにも、一切責任も生じてこないという実態が多いのです。

 我々一人一人がリスク(潜在危険が発現する確率と発現した場合の被害度)という概念を理解して、住民らへ建物の安心度・安全度などをわかりやすく、設計方法や施工方法及び建物倒壊の因果関係など被害状況を情報公開した上で

建物の耐震改修や安心・安全な街づくりを目指していかねばなりません。

 実プロジェクトの仕組みである開発企画・確認申請・設計・施工・維持管理などに至るまでの発注者らと設計者・施工者らとの業務関係の実態、大手から中小の専門業者らとの元請け・下請け・孫請けなどの業務関係の実態、また、官公庁における発注・審査・設計監理・委託などの業務実態などを真摯に見つめて、リスクや責任のあり方などを見直していかねばなりません。

 

 建築士制度と建築産業の仕組みとの間にはたいへん大きな乖離があります。

 我々一人一人が組織やグループに帰属しながらも、安心で安全な社会・環境および良い建物を実現させるべく使命感をもって、各人の意見と努力の分担により自己組織化してスクラムを組むことが必要であります。

 さらに、各職能団体が互いの職能に敬意をはらいつつ、多くの課題を見直すために、スクラムを組んで、協働作業のためのタスクフォースを発足させて、建築産業の仕組みに自らメスを入れていかねばなりません。

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