平成19年5月9日

風神雷神ジェットコースターの事故について

弁護士  竹川忠芳 

 

エキスポランドの風神雷神ジェットコースターの死亡事故についての神田先生のご意見に賛成です。若干、補足して、私の意見を述べてみます。

事故が起こると、監督官庁の通達や規則に違反している、これを怠っているとして、マスコミは犯人探しを行うのが常である。そして、監督官庁は、より詳細な規則だの通達を作って、これを守るよう命令する。それで自分は免罪されると考えているようである。そして、ほとんどの場合、技術専門職の管理職が業務上過失致死罪で逮捕され、有罪となって一件落着する。そして、次の事故が起こると、再び同様の大騒ぎを繰り返す。これがわが日本の実情である。

しかし、今回の事故の原因は何処にあったのか、今後二度と同様の事故が起こらないようにするにはどうしたらよいのか、誰もその真実を究明しようとはしない。

私は、今回の事故の原因は無責任体制にあったとみている。科学技術の進歩によって、人間は危険を制御することによりこれをスリル化することが可能となり、逆にこれを楽しむ術を覚えたと思う。つまり、ジェットコースターという乗り物は、人間が英知を結集して作り出した暴れ馬みたいなものである。これを乗りこなすことで、人間がより進歩している証しと考えることが出来、まさに人間が神に段々近づいていると錯覚することが出来るのである。

しかし、そこには、いつでも危険を制御しているという「自覚と責任」とが不可欠なはずである。

ところが、エキスポランドでは、ジェットコースターという乗り物は、安直に、金儲けの道具としか考えていなかったのではなかろうか。そこには残念なことに、人間の崇高さを思う心もなければ、「いつでも危険を制御しているという自覚と責任」を感じる心構えが、全く欠けていたのではなかろうか。

もしこのことに気が付いていれば、定期的に検査をして報告しさえすればよいという考えにはならなかったであろう。むしろこのような危険物を作り出した責任感から、いつでもこのジェットコースターという乗り物が安全に走行出来るように点検を怠らなかったはずだし、そのように経営するところのみがジェットコースターという乗り物をお客に提供できる資格があると言えるのではなかろうか。その意味では、マスコミの批判は的はずれと、私は考えている。

だから、私はこの事故の責任は社長にあると思う。そして、安直な気持ちで社長に就任させてしまう、その社会風潮にあると思う。このことをこの機会に明確にさせることが必要ではなかろうか。おそらく、中間管理職の専門技術者あたりが逮捕され、一件落着となるのではないかと予想しているが、それでは問題の本質は見失われてしまうのではないかと、不安を感じている。

                                                             以 上

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