建築基本法 対案の試み 1

2003.10.22. 大山宏

神田順先生の私案に触発され、対案の作成を試みた。
ことさら、「建築主・所有主」の責務を強調した表現になっている。
建築社会活動においても、「建築主・所有主」の自己責任に基づき専門家の力量が生かされるべきである、という考え方を基本にしている。
率直なご批判を掲示板にでもいただきたい。

建築基本法・試案 1
第1条:
(1)「建築・土地」の所有主は、その所有する「建築物・付属物・敷地」が「人命・財産・周辺環境」に損害を与えないように、適正に維持する責務を負う。
(2)「建築・土地」の利用者は、その利用する「建築物・付属物・敷地」の現況に異変を見出した場合には、直ちにそれを「建築・土地」の所有主に通告する責務を負う。
(3)「建築・土地」の「供給・仲介」業者は、その「供給・仲介」する「建築物・付属物・敷地」の現況について、適正な評価書を添える責務を負う。

第2条:
(1)「国・地方公共団体」は、「人命・財産・周辺環境」を保護するために、最少限の「建築・土地」規制を行うことができる。
(2)「建築・土地」の規制を行う「法律および条例」は、合理的な根拠に基づいたものでなければならず、かつ、「日本国憲法および建築基本法」の精神を逸脱してはならない。

第3条:
(1)「建築主」は、建築物の建設に先立ち、それが適正に設計されていることを確認し公示する責務を負う。
(2)「自重・積載荷重・風荷重・雪荷重・地震荷重・その他」の自然外力に対する建築物の危険度は、外力評価に基づく「構造計算または実験」によって確かめる。
(3)「失火・類火」火災に対する建築物の危険度は、可燃物量評価に基づく「構造計算または実験」によって確かめる。
(4)「日照阻害・騒音発生・異臭発生・土壌汚染・その他」の周辺環境に及ぼす影響被害は、客観的な環境評価によって確かめる。

第4条:
(1)「国・地方公共団体」は、建築紛争を調停するための委員会を常設し、訴訟によらない公正な解決にも努める。
(2)建築紛争に対する調停は、利害当事者による申し出による他、委員会の発議により、開始できる。
(3)建築紛争の利害当事者は、調停の結果に対する不服請求を、直接、高等裁判所に提起できる。

第5条:
(1)建築の設計を業とする者は、「建築専門職能団体」に所属しなければならない。
(2)「建築専門職能団体」は、その専門職能の資格・称号に関して名称の独占が許される。
ただし、そのことが直ちに業務の独占を意味するものではない。
(3)「建築専門職能団体」は、所属する会員の自発的な「能力・倫理」の向上を「誘導・支援」し、その専門職能の「資格・称号」への社会の信頼を維持する活動を行わなければならない。
(4)「建築専門職能団体」は、専門職能の「資格・称号」への信頼を著しく損なう行為をなした会員に対して、適正な「規約・手続き」にしたがい、「資格停止・除名」処分を行える。

第6条:
(1)設計の「委任契約」は、設計瑕疵に対する設計者賠償責任を排除する。
(2)建築主は、別途、設計瑕疵に対する賠償保険契約を締結することができる。

第7条:
(1)施工の「請負契約」は、施工瑕疵に対する施工者賠償責任を排除しない。
(2)建築主は、施工瑕疵に対する賠償保険契約の締結を、施工者に求めることができる。

(以上)

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